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2025.06.26

土木学会 論文賞「コッター式継手を有する道路橋PCaPC床版の疲労耐久性評価」が表彰、技術開発賞も4編が床版更新・補修分野
施工現場における実用性の高い技術的知見を示し、橋梁工学の発展に寄与されると評価

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 土木学会は5月19日、令和6年度土木学会賞を発表し、6月13日東京・ホテルメトロポリタンエドモントで授与式が行われたが、高速道路の大規模更新が盛んな現状を反映し、論文賞、技術開発賞などで多くの床版更新や床版補修に関する技術が表彰された。

 論文賞Ⅰ部門には、「コッター式継手を有する道路橋PCaPC床版の疲労耐久性評価」(土木学会論文集 Vol.80,No.3,23-00172,2024.)(渡邊 輝康氏、野口 利雄氏、平野 晃臣氏、服部 翼氏、槇 駿介氏、本荘 淸司氏(株式会社熊谷組)、松井 繁之氏(大阪工業大学)が選ばれた。道路橋床版の老朽化に伴い、RC床版をPCaPC床版に取り替える際の施工効率向上が求められている。本論文も、それに関するものであり、松井繁之氏の指導をもとにして、この課題に対応するため、接合幅の縮小による作業時間短縮と省力化を実現した「道路橋用コッター床版工法」を開発し、その施工性及び耐久性の検証を行ったものである。

 本工法では、C型・H型金物を用いた新たな接合方式を採用することで、従来工法と比較して接合幅を縮小し、施工の効率化を実現した。この結果、作業時間と必要人員を約50%削減することに成功し、施工現場の負担を軽減した。また、本工法の信頼性を確認するため、輪荷重走行試験を実施し、押抜きせん断破壊耐力の向上と疲労耐久性の評価を行った。その結果、100年耐用を満たす性能が実証され、設計法の確立および疲労設計法の提案につながった。さらに本工法は東名高速道路などの実施工に適用され、その有効性と実用性が確認されている。従来の床版取替え工法と比較し、より迅速かつ合理的な施工が可能であり、橋梁の維持管理および更新工事の効率化に大きく貢献する技術として高く評価された。

 同継手工法を用いた床版取替は、開発に携わった熊谷組、オリエンタル白石などが施工する現場だけではなく、他社の現場でも広く採用されている。既にコッター継手の数ベースで18,300個、床版取替面積で21,000㎡におよぶ実績を有している(2024年度末)。


コッター継手を用いた床版の施工例(井手迫瑞樹撮影)


 松井繁之氏は、コッター継手を用いた床版も含めて、他の多くの形式のPCaPC床版の継手工法の研究・開発も指導している。

  (土木学会提供)


 技術開発賞は、9編が表彰されたが、高速道路の大規模更新の施工が増えている状況を反映し、「高速施工を可能にする床版更新システム(スマート床版更新(SDR)システム®)の開発」(山中 宏之氏(鹿島建設(株)、新井 崇裕氏(鹿島建設(株))、三室 恵史氏(鹿島建設(株))、渕先 弘一氏(鹿島建設(株))、一宮 利通氏(鹿島建設(株)))、「高強度繊維補強セメント系複合材料(VFC)を用いた道路橋床版の打替え技術」(渡邊 有寿氏(鹿島建設(株))、柳井 修司氏(鹿島建設(株))、一宮 利通氏(鹿島建設(株))、牧田 通氏(中日本高速道路(株))、若林 大氏(中日本高速道路(株))、村中 誠氏(中日本高速道路(株)))、「高速道路リニューアル工事における新方式の床版取替機と床版更新技術の開発」(森田 秀人氏(大成建設(株))、林 雄志氏(大成建設(株))、古川 耕平氏(大成建設(株))、新宅 建夫氏(大成建設(株))、白井 俊明氏(大成建設(株))、武田 均氏(大成建設(株)))、「超速硬型の超高性能繊維補強セメント系複合材料(スティフクリート®)を用いた床版上面増厚工法の開発」(富井 孝喜氏((株)大林組)、青木 峻二氏((株)大林組)、佐々木 一成氏((株)大林組)、本間 順氏(大林道路(株))、玉滝 浩司氏(UBE三菱セメント(株)))など4編を床版取替、床版補修が占めた。

 SDRシステムは、既にNEXCO東日本の阿能川橋、土樽橋の大規模更新の現場で用いられている。また、大成建設の新方式の床版取替機などの技術はNEXCO中日本の北市場高架橋やNEXCO東日本の鬼怒川橋の大規模更新の現場、鹿島建設と大林組の床版上面補修・増厚技術もNEXCO中日本などの現場で実橋適用されている。

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