内閣府沖縄総合事務局 那覇空港道と沖縄西海岸道路を重点整備
沖縄総合事務局は1972年5月15日の本土復帰から50年、沖縄県内の公共インフラの構築に努めてきた。しかし、人口または自動車台数当たりの道路延長は未だ全国平均に満たない水準であり、現在も那覇空港自動車道や沖縄西海岸道路などの高規格道路の整備を重点的に進めている。一方で、急速に増えたインフラストックの維持管理も重要だ。とりわけ、沖縄は周囲を海に囲まれた塩害環境、さらには反応性骨材の使用によるASRの発錆も報告されるなど厳しい環境といえる。そのような状況下で、沖縄の幹線道路をどのように発展させ、保全していくか、内閣府沖縄総合事務局開発建設部の関 信郎企画調整官に聞いた。(井手迫瑞樹)
那覇空港自動車道と沖縄西海岸道路の整備を重点的に進める
沖縄総合事務局における道路事業は、全体の約6割の349億円
那覇空港自動車道と沖縄西海岸道路の整備を重点的に進める
――2024年度の重点道路事業建設の計画と進捗状況、また新規事業化区間について
関企画調整官 はじめに、沖縄総合事務局についてご紹介します。
沖縄総合事務局は、沖縄の振興開発を一元的、効率的に推進するため、1972年5月の本土復帰と同時に、沖縄開発庁の地方支分部局として設けられました。
沖縄の振興に直接関係のある各省庁の仕事が広く含まれた統合された行政機関となっており、行政の簡素化、効率化が図られていることが特色です。
沖縄の振興・発展のためには、沖縄の優位性を活かした自立型経済を構築していくことが重要であることから、開発建設部では、これらを支える道路、ダム、港湾、空港、公園、営繕整備などの社会資本整備を行っています。
沖縄県の陸上交通は道路への依存度が高く、積極的な道路整備が進められています。しかし、人口または自動車台数当たりの道路延長は未だ全国平均に満たない水準です。
一方で、観光産業の発展から交通需要の増加やニーズの多様化が進み、体系的な道路網の整備と質的向上が一層求められています。
近年ではさらに、那覇都市圏を中心に交通渋滞が深刻化しており、通勤時の道路渋滞は全国の県庁所在地の中で最も深刻な状況です。県民の皆様の生活のみならず、観光や物流、産業活動にも影響を及ぼし、これからの沖縄の発展にとって大きな課題となっています。
このような中、交通課題の解消に向けて2環状7放射道路の整備による交通経路の分散や、国道58号と沖縄自動車道、国道329号の3本の本島縦貫道路を柱に、東西連絡道を整備していくハシゴ道路ネットワークの構築を進めているところです。
沖縄県の新広域道路ネットワーク図
沖縄総合事務局における2024年度予算は約600億円となっており、そのうち道路分野(直轄事業)は約349億円と約6割を占めております。
沖縄総合事務局管内におきましては、2024年度は直轄国道改築事業の新規事業はありませんが、那覇空港自動車道(那覇空港~西原JCT、延長約18km)と沖縄西海岸道路(読谷村~糸満市、延長約50km)の高規格道路の整備を重点的に進めています。
道路事業位置図
小禄道路と豊見城東道路を重点整備
小禄道路は半分、豊見城東道路は3/4が構造物
――まず那覇空港自動車道について
関 那覇空港へのアクセス向上、空港周辺の渋滞緩和を目的として、現在、小禄道路(那覇市鏡水~豊見城市名嘉地、5.7km)と、豊見城東道路(豊見城市名嘉地~南風原町山川、6.2km)の整備を重点的に推進しています。
小禄道路の事業進捗率は事業費ベースで約81%となっています。橋梁区間が約2km(34%)、トンネル区間が約1km(17%)と構造物比率が約50%を占めています。現在は(仮称)瀬長IC~豊見城・名嘉地IC間の橋梁上下部工工事などを推進しております。
豊見城東道路の事業進捗率は事業費ベースで約98%となっています。橋梁区間が約51%(3.2km)、トンネル区間が約23%(1.4km)と構造物比率が4分の3弱を占めるのが特徴です。既に全線が4車線開通済みですが。現在、小禄道路との接続部で橋梁上部工事を実施しています。
この那覇空港自動車道が整備されることにより、沖縄自動車道と一体となり、那覇空港までの高速性・定時性が確保され、沖縄の観光産業や物流効率化の支援などの地域活性化が期待されます。
読谷道路の構造物比率は15%
浦添北道路Ⅱ期線は仮桟橋の工事に着手
――次に沖縄西海岸道路について
関 沖縄本島中部から南部までの湾岸部を通り、那覇空港や那覇港といった拠点を相互に連絡する道路で、現在、読谷道路(読谷村親志~古堅、6.0km)、浦添北道路Ⅱ期線(宜野湾市宇治泊~浦添市港川、2.0km)、那覇北道路・臨港道路若狭港町線(那覇市港町~若狭、2.2km)の整備を推進しています。
読谷道路の事業進捗率は、事業費ベースで約46%となっています。橋梁区間が約0.6km(10%)、トンネル区間が約0.3km(5%)と構造物比率が約15%となります。現在、改良工事、橋梁下部工事を実施しております。
浦添北道路Ⅱ期線は、平成29年度に暫定2車線で開通した浦添北道路の6車線化を行う事業です。既に開通済みのⅠ期線に並行して、海側に隣接するⅡ期線を整備する計画です。 事業進捗率は、事業費ベースで約12%となっております。橋梁区間が約1.1kmと構造物比率が約56%となります。現在、橋梁工事の早期着手に向けて、仮桟橋の工事を実施しています。
那覇北道路・臨港道路若狭港町線 若狭ICの橋脚工事、仮設工事を実施
ほぼ全線が橋梁区間
――那覇北道路・臨港道路若狭港町線は
関 道路事業と港湾事業との合併事業として実施しております。ほぼ全線が橋梁区間(約2.18km)で構造物比率は約99%となります。現在道路事業では、橋梁設計を実施、港湾事業では若狭ICの橋脚工事、仮設工事を実施しております。
若狭ICの橋脚工事、仮設工事を実施
沖縄西海岸道路が整備されることにより、沖縄本島中部から南部間の観光の振興、地域の活性化、地域振興プロジェクトの支援が期待されます。
――嘉手納バイパス(以降、BP)や西原BP、与那原BP、南風原BPなどの事業は
関 嘉手納および西原BPは調査設計中です。与那原BPは、暫定2車線で既に開通していますが、引き続き側道部の改良工事を進めています。南風原BPは北丘高架橋の上部工工事を施工中です。
――南部国道管内にやはり事業が集中していますね
関 市街化の著しい南部国道事務所管内においては、交通量の増加に伴い渋滞や交通安全の課題が比較的多いため、事業が集中している状況です。
――北部国道管内の事業としては、名護東道路などがありますが、どのような進捗状況ですか
関 令和3年に暫定2車線で開通しまして、現在は4車線化に向けて検討を進めています。また、名護東道路の本部方面への延伸について、今年度、計画段階評価手続に着手したところです。
設計中の橋梁、設計済みで施工前の橋梁も長大橋が目白押し
牧港大橋、港川橋 Ⅰ期線の知見を活かす
――2024年度の主要橋梁・トンネル事業の計画と進捗状況を教えてください
関 現在設計中の橋梁は、沖縄西海岸道路の読谷道路において、大木高架橋(本線・OFFランプ)と那覇北道路の上之屋IC(仮称)ランプ橋部(A,B,C,D,A・C一体部、B・D一体部ランプ)において実施しております。
なお、トンネル設計中箇所や今後の設計予定箇所は現在のところございません。
――設計は完了しているが施工に至ってない構造物は
関 浦添北道路Ⅱ期線の牧港大橋(橋長687.9m、PC連続ラーメン箱桁)や港川橋(441m、PC4+4+3径間連結PC少主桁)、那覇北道路の那覇北高架橋(橋長1,118m、鋼8+4径間連続非合成箱桁+鋼3径間連続鋼床版箱桁)、港町ICB,Cランプ橋(B:102m、PC3径間連続中空床版桁、C:96.5m、PC3径間連続中空床版橋)などがあります。
――牧港大橋や港川橋はかなり大きな橋梁ですが、現在はⅠ期線がかかっていますが、Ⅱ期線はどのような位置に架けるのですか
関 Ⅰ期線に隣接する海側に架ける計画です。
設計は牧港大橋がオリエンタルコンサルタンツと大日本ダイヤコンサルタント、港川橋がオリエンタルコンサルタンツです。
――両橋とも基礎施工の際、海からの湧水に苦しんでいた記憶があります。また、長期的には塩害やサンドブラストへの対応も必要です。どのようにⅠ期線の知見を活かした設計にしていますか
関 Ⅰ期線で2車線の下部工を造っていますので、基礎や地質の課題についてはある程度把握することができています。特に湧水への対応はしっかりと行っていきます。
塩害については、沖縄では避けられないものです。添接部のボルトにシリコン性のキャップをつける等により防触するボルトキャップや亜鉛とアルミナの粉末を基材に吹き付けて皮膜を形成することで防触するcoldsprayといった防食技術も検討していきます。
――海に面している長大鋼橋例えば牧港高架橋では、錫添加鋼材を用いて塗装周期を長期化する工夫も行っています。また、中日本高速道路の北陸道手取川橋ではステンレスクラッド鋼材が採用されています。こうした知見を活かすことはありますか
関 存じています。私も実際に手取川橋まで行き、現場を見学しました。設計や施工会社からの提案を幅広く受け入れていきたいと考えています。
――下部工のRC橋脚の防食は
関 かぶり厚を厚くとり、さらに防食鉄筋を採用しています。
――那覇北道路(臨港道路若狭港町線)の上部構造は
関 同事業の本線部は鋼構造とPC構造、ランプ部は主に鋼構造となっています。