Interview

進化2025は最終段階 増大する事業量にいかに対応するか

2024.04.22

NEXCO西日本 前川社長インタビュー

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NEXCO西日本
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>前川 秀和氏

西日本高速道路
代表取締役社長

前川 秀和

概要動画Overview Video

 NEXCO西日本は、中期経営計画『進化2025』に基づき、大規模リニューアルや耐震補強、また新型コロナ禍、働き方改革、2024年問題といった諸条件に弾力的に対応するためのソフト・ハード両面からの組織作りに邁進している。とりわけ、JH民営化前後の新規採用削減等による影響は大きなものがあったが、このほど人員数的にはほぼ民営化当初の規模まで回復、これからは質の向上を図っていく。新名神の建設や4車線化・6車線化の進捗状況なども含めて前川秀和社長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

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「進化」がキーワード

現場に即した報道を期待

事業量はJHからNEXCOに移行した民営化当初の約3倍に達する

 ――今回はオープニングインタビューに応じていただいてありがとうございます

 前川 まず、井手迫さんには前職の時から、そのレポートする内容については楽しみにしております。豊富な知識と現場を歩いて手間をかける能力、それらをわかりやすくリポートする能力には敬意を表しています。私も何回か井手迫さんのレポートを読んで、私もこの現場は見に行かなくてはいけないなと思って出張を企画したこともあります。この度新たに新会社を立ち上げるということですが、これまで同様現場に即した報道を期待しております。

 ――本当に温かい言葉をいただきましてありがとうございます。それでは、就任から4年経ちましたが、成し得たことやこれからの課題について

 前川 令和2年6月に社長に就任しました。それまでも4年間、常務取締役や副社長としてNEXCO西日本の経営に参画してきましたので、会社の状況については十分把握しておりました。ただ、毎年のように豪雨災害があり、工事中の事故もありました。また、デジタル技術の急速な進歩や、さらに新型コロナウイルスによる影響も大きなものがありました。このように経営環境が大きく変わりつつあるという状況の中で、中期経営計画の策定に取り掛かりました。


豪雨による損傷例①(大分自動車道高山トンネル)
(以下、すべてNEXCO西日本提供または同社資料より抜粋)

京都縦貫道(坊口トンネル/内久井トンネル)の損傷状況


 今回の中期経営計画では「進化」をキーワードに据え、「進化2025」と題しました。従前の中期経営計画では漢字は使用していませんでしたが、環境の変化に柔軟に対応して会社としても「進化」していかなければならないという強いメッセージを込めました。


進化2025のイメージ


 その中で、①高速道路の安全・安心をいつまでも守り抜く、②多発する自然災害から地域と暮らしを守り抜く、③新しいモビリティ社会に向けて高速道路を進化させる、④高速道路の顧客体験価値を高める、⑤持続的に進化する企業を目指す、という5つのビジョンを掲げました
 この間、阪和道の4車線化(有田IC~印南IC間約30km)も無事開通させました。中国道(吹田JCT~神戸JCT間)では、大都市部における初めてリニューアル工事を行い、相当進展しました。とりわけ、終日通行止めを行った吹田JCT~中国池田IC間は、多くの課題を乗り越え、無事完了することができました。


中国道(吹田JCT~中国池田IC間)の施工状況(宮の前高架橋)


PC床版の撤去・架設状況(宮の前高架橋)

鋼床版の架設状況(宮の前高架橋)


 また橋梁については、この間に多くの賞をいただきました。土木学会田中賞では、徳島道の別埜谷橋(鋼材を一切使わないPC橋『Dula-Bridge』)、中国道の蓼野第2橋の床版取替、(鋼材を使わないプレキャストPC床版を用いた『Dula-Slab』)、吉野川サンライズ大橋(吉野川最下流に建設された日本最大級のPC箱桁橋。塩害対策と材料の地産地消として、NEXCOで初めて大規模にフライアッシュ混入コンクリートを採用。上部工はエポキシ樹脂塗装鉄筋やマッチキャスト方式のセグメント桁を用いた架設桁架設により施工し、弱点となるシームも最小限にとどめる構造とした。さらに下部工も鋼管矢板井筒基礎を採用し、基礎をできるだけ最小限に収めるともに、施工においても環境変化を最小限にするよう意を砕いた)などです。吉野川サンライズ大橋は田中賞だけでなく、土木学会デザイン賞もいただきました。また、fiB(国際コンクリート連合)の最優秀賞を新名神武庫川橋(エクストラドーズド橋にバタフライウェブの世界初採用)でいただきました。同組織の審査員特別賞を別埜谷橋でいただいています。


別埜谷橋

蓼野第2橋の床版取替

武庫川橋

吉野川サンライズ大橋


 社長に就任してからは、このように橋梁の技術においても成果が上がっておりますし、世の中にも貢献できているのではないかと思っております。
 一方で、事業量はJHからNEXCOに移行した民営化当初の約3倍に達しています。

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実に年間8千億円の事業量

「経営資源の柔軟かつ最適配分」が必要

 ――3倍ですか、民営化前は、もはや構造物の保全が中心になるということで、コストカット、採用凍結がなされましたが、正反対になっていますね

 前川 実に年間8千億円の事業量をこなさなくてはなりません。
 しかし、社員の人数は増えていません。民営化直後から暫く少し減って、最近になってようやく民営化当初の人数に戻ってきたような状況です。
 増大する事業量を確実に実施するため、「経営資源の柔軟かつ最適配分」、「多様な人財の活躍」、「更なる生産性の向上(DX戦略の推進)」の3つの柱からなる「進化に挑む重点方針」に基づき事業、業務を進めています。
 1つは経営資源、人的資源も含めて最適配分を追求することが重要です。それから多様な人財の活躍ということで、事務系、技術系社員の活躍を追求していきます。また定年も令和6年度から現在の60歳を65歳に延長します。
 また、さらなる生産性の向上ということでDXの推進を行っていきます。DXについては、「地に足の着いたDX」を行うことが大事だと考えています。目の前の仕事で無駄なことがたくさんあるとすれば、DXをきっかけにして、まずは業務の棚卸を行い、本当に必要な業務に絞り込んで、無駄な業務を省いた上でDX化していきます。今やっている仕事をそのままシステム化しても、システムとしても無駄が多くなるし、仕事のやり方を変えたことになりません。


地に足の着いたDXを追求


 もう一つ外部の環境ということで、喫緊の課題はやはり「2024年問題」です。当社は建設業のみならず、運輸業にも関係します。さらに2050年のカーボンニュートラル目標に対し、2030年までに半分にするという日本政府全体としての目標がありますが、それを当社にも落とし込んで計画を作成します。またデジタル社会推進の一環として自動運転の推進も行っていきます。

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