ジェコス 緊急仮設橋『モバイルブリッジ』を開発

ジェコス 緊急仮設橋『モバイルブリッジ』を開発
2025.12.23

仮設橋設置までの2カ月から半年間の供用を対象にした「仮仮橋」として17mまでの長さに対応

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 ジェコスは、緊急仮設橋「モバイルブリッジ®」の実機開発に成功した。同橋は災害発生直後の孤立集落からの避難や、救援物資の供給等の初動緊急支援ツールとしての使用を目的としたものである。主構造であるフレームの大部分がアルミ製となっており、軽量で可搬性・施工性に優れる。さらにトラックから降ろす際はアウトリガー(4点支持)を伸ばして支え、ジャッキアップし、トレーラーとのクリアランスをつくって、トレーラーが抜ける手法でクレーンなどを使うことなく積み下ろしができる。展開前寸法は長さ6m×幅2.96m×高さ3mで、重量は13tと軽く、低床トレーラーで運ぶことができる。フレームはマジックハンドのように伸び縮みする形状となっており、今回製作した1号機は6格点で構成され、支間長は17.3mとなる。すなわち17m程度までの川幅に対応が可能である。広島大学の有尾一郎助教の研究に同社が2020年共同研究契約を締結する形で参画し、さらに2023年に信州大学の近広雄希助教(当時)も参加、このたび新しい実機が完成した。(井手迫瑞樹)

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搬入から設置までは1日程度で対応可能

トレーラからの荷の揚げ降ろしにクレーンなどは不必要

最大17m幅の小河川においても単径間で架設可能

 モバイルブリッジは、山間地など孤立集落が生じやすい、小規模河川やがけ崩れなどに対
応した工法といえる。軽量であるため、地盤が脆くなっている橋台部や護岸部、橋台背面部
であっても、地耐力への負担を少なく設置できる。


 設置に当たってはまず、敷き鉄板などを敷設し、地面に対する設置圧が偏らないようにし、
レベルも整えた上で、アウトリガーを伸ばして支持させた後、トレーラーが抜けて行く。さ
らにアウトリガーのジャッキダウンを行い、矩形配置されているモバイルブリッジの底部
を地面に設置し、安定させる。


製作仕様と動作状況(ジェコス提供、以下同)


 その後、フレーム基部を90 度回転させ、フレーム本体がマジックハンドのように張出し展開していく。なおフレーム本体は根元1 格点分が鋼材、先端5 格点分はアルミ材を用いて軽量化されており、油圧装置により伸び縮みし、その動きに連動してフレーム下面に床版が自動配置されるように工夫されている。これらは操作盤で動かすことで高所作業を行うことなく架設できる。

 一方で17m といえど、基点側から終点側まで微妙に下方向への撓みが生じるが、この点については事前に考慮して、必要であれば本体の基点側に予め装備されている油圧ジャッキで高さ調整は可能である。

 搬入から設置までは1 日程度で対応可能であり、また有効断面は幅1.88m×高さ1.92mと、軽トラックや小型の自家用車であれば十分通行できる。従来、こうした個所はコルゲートなどを使って管で水を流し、上部を土砂で埋める形で仮供用していたが、再度の降雨で流されるということが少なくなかった。

 モバイルブリッジは、最大17m 幅の小河川においても単径間で架設でき、中途に橋脚などを必要としないために、流されるリスクを大幅に低減できる。また、同社の製品でもある仮橋の最終アプローチや歩道仮橋と組み合わせて、従来形式の仮橋が設置完了するまで、集落の孤立を解消することができる「仮仮橋」として位置付けることができる。


(左)コルゲート管を土砂で埋める方式では再度水害が起きると流される可能性が高い。
(右)しかし、モバイルブリッジではアバット間の架設となり、クリアランスも取れるためリスクは小さくなる


 同社では、国や自治体向けに広く適用を働きかけていく方針だ。


2025年11月に行われた、建設技術フェア熊本のモバイルブリッジ実機展示

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