阪神高速技術 ケーブル張力測定システム「CTチェッカー」を積極運用
阪神高速技術と内外構造は吊り橋や斜張橋、アーチ橋などを対象としたケーブル張力測定システム『CT(ケーブルテンション)チェッカー』を開発、積極的に運用している。ゴムハンマーで叩いて与えた振動を加速度計で振動波形データとして取得するだけの単純な作業で、当該ケーブルの張力を測定し、ケーブルに異常があるか否かを現場で確認できるもの。阪神高速道路では4年前に特殊橋梁の点検マニュアルが制定されており、ケーブルを有する橋梁については張力測定が義務付けられている。対象となる橋梁は斜張橋4橋、ED橋1橋、ニールセンローゼ橋5橋であり、それら全ての橋梁で第一回目の測定を完了した。(井手迫瑞樹)
軽量かつ作業は単純
同チェッカーはMEMS加速度センサと測定モジュールからなる。センサは両面テープで簡単にケーブルに貼り付けることができ、ケーブルをゴムハンマーでたたくことで生じた振動波形を取得。測定モジュールを通じてBluetoothでタブレットに送信することで、現場でケーブルの健全性を測定できる。機材は軽量で単純な作業であるため、極めて効率よく施工できることが魅力である。
MEMS加速度センサと測定モジュールからなる
管理値は供用当初に取っておくことが理想
張力バランスの確認かつ上下20%弱の範囲内は正常と判断
斜張橋やつり橋のケーブルは、細い6~7mmの素線が沢山集まって、ケーブルを構成している。錆や摩耗、傷で素線が破断することや、橋梁の全体形状に異常が出ると、ケーブルの張力が緩んだり、あるいは過剰に張力がかかるという状態が生じ、放置すればシリアスな損傷を招く。張力管理を適切に行うことで事前に防ぐというのがこの張力測定の発端である。
CTチェッカーの使用方法と張力測定の仕組み
施工状況①(センサーを張付けて、ゴムハンマーでたたく)
現場のタブレットで測定結果を見ることができる / 過去の点検データとの比較も容易
ケーブルの張力は弦楽器と全く同じ理屈で「弦の太さと長さがわかっていれば、音を鳴らした際、高い音がするところは張力が高いし、低い音をするところは張力が低い。ケーブルの張力測定も基本的に固有振動を測定している。すなわち即座にケーブル張力を把握できるCTチェッカーは固有振動の中でも高次振動を測定し、固有振動の波形を周波数分析して、張力の数字だけが表示される」(阪神高速技術)ものである。
正常か異常かを判断する管理値となるケーブル張力は、建設時に取っておくことが理想であるが、古い橋はそうした管理値が取得されておらず、現在の張力を管理値とした。また、前後左右のケーブル張力バランスを確認し、異常なバランスを示した時は、詳細調査を行う。2回目以降の診断は張力バランスかつ上下20%弱の範囲内は正常と判断し、それを超える値を示した時は、詳細調査を行う。1回目の点検ではいずれの橋も異常がなかったため、次回以降は初期値を管理値として使われていくことになる。
複合的に評価
測定は1本1本のケーブルで行うが、橋梁全体の健全性は全体の張力バランスの他、「橋梁の形状測量、伸縮の遊間幅、支承などのアンカーの亀裂の有無などを考慮」(同)して、詳細調査や補修補強の必要性を判断していく。
CTチェッカーの販売価格は1セット約180万円。地方自治体やコンサルタント向けに販売していきたい考えだ。アフターケアも充実しており、機械を購入した会社には、ある程度の初期教育も施していく方針だ。