太平洋コンサルタントがコンクリート診断技術CPDS講習会を開催

太平洋コンサルタントがコンクリート診断技術CPDS講習会を開催
2025.09.16

『コンクリートの診断技術』をキーワードに多様な技術を紹介

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 太平洋コンサルタントは8月5日、アットビジネスセンター 大阪本町で「コンクリート診断技術CPDS 講習会」を開催(太平洋セメント、太平洋マテリアル、国際企業の3社が協賛)。約60名が参加した。当日の様子をレポートする。

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基調講演「塩害劣化を有するコンクリート橋の安全性評価と信頼性向上策」

森川英典・神戸大学名誉教授が登壇

 はじめに、梶尾聡社長(太平洋コンサルタント代表取締役 写真)が挨拶を行い、「弊社の経営理念は『お客様の信頼を受けて相談していただける親しみやすいコンサルタントになる』ことであり、寄り添って相談を受け、皆様の会社の利益に貢献できるよう努めている」と述べた。さらに同社の主要業務として、セメント・コンクリートの分析・試験、既存構造物の診断・調査および健全性評価を挙げ、既存構造物の補修設計、コンクリートのカーボンニュートラル対策における評価やコンサルティング、アスベストやPCB分析といった環境分析業務、放射性廃棄物の処理・処分に関わる研究や関連製品の販売、各種無機材料の製造プロセスに関わる実機レベルでの試験対応、さらに近年では土壌分析にも取り組んでいると事業紹介を行った。


 基調講演として「塩害劣化を有するコンクリート橋の安全性評価と信頼性向上策」と題し、森川英典・神戸大学名誉教授(右写真)が登壇した。講演冒頭では、プレストレストコンクリート橋における重大な損傷事例を紹介。点検が困難である内部のPC鋼材が腐食し、構造物に重大な損傷が生じるケースが多いことを指摘した。その上で、既設PC橋の信頼性向上策としてPC保守工法、予防維持管理、モニタリングの3つの研究開発事例を提示した。さらに今後の課題として、戦略的メンテナンス手法の構築、非破壊検査技術の導入による点検戦略、効果的なグラウト補修とその長期的検証、合理的ヘルスモニタリング技術の確立、硫酸イオンによる鋼材腐食や破断の可能性とその対策検討を挙げた。

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一般講演では太平洋コンサルタントや協賛会社が様々な取り組みを紹介

カーボンニュートラルや省力化につながる技術を発表

 一般講演では、芳賀和子氏(太平洋コンサルタント 常務執行役員・カーボンニュートラルプロジェクト担当 左写真)が「太平洋コンサルタントのカーボンニュートラル支援事業の取り組み」と題して講演。2020年の「2050年カーボンニュートラル」宣言を受けた国内施策を紹介したうえで、セメント比率の低減、リサイクル、コンクリートへの固定化など、コンクリート分野におけるカーボンニュートラルの動向を説明した。さらに同社カーボンニュートラルプロジェクトチームの概要、支援業務を紹介。現在、JIS化が検討されているCO2固定量評価法の話題や脱炭素に取り組み企業価値を高めるなどの意識を持つことの重要性など、環境施策と企業経営の双方を視野に入れた取り組みが、これからの企業に強く求められることを指摘して講演を締めくくった。


 次に梶井章弘氏(太平洋コンサルタント 西日本技術センター 西日本技術部 西日本化学分析GL 右写真)が「コンクリート構造物の調査・診断方法について」と題して講演。顧客からの依頼を受けた際に、どのような方法で劣化現象を具体的かつ詳細に把握するか、その流れを説明した。実例を交えながら試験方法の種類や分析方法の選定を解説し、さらにEPMA(電子線マイクロアナライザー)の活用事例を紹介。SEM(走査型電子顕微鏡)が表面形状観察に適する一方、EPMAは元素分析の精度が高く、広範囲のマッピング分析が可能であるなどの違いを指摘し、コンクリートの硬化不良や塩害調査における実用事例を示した。


 続いて邉木薗隆太氏(太平洋コンサルタント 関西技術センター 設計部 設計GL 左写真)が「コンクリート構造物の補修設計事例について」と題して講演。補修設計における同社の考え方や実際の事例を紹介した。調査・試験を得意とする同社の強みを活かし、材料評価・分析から構造物調査、劣化状況分析、補修設計までを一貫して行うことで、コンクリートインフラの長寿命化を図る取り組みを示した。


 山崎寛氏(太平洋マテリアル 上席執行役員営業本部 機能性材料営業部 部長 右写真)は「カーボンニュートラルに貢献する太平洋マテリアルの無収縮モルタル」と題して講演。1940年代の米国で開発され基礎などに用いられ、1956年に日本で発売されて以来広く利用されてきた経緯を紹介した。一般のコンクリートやモルタルは、ブリーディングなどによる沈下や乾燥収縮、流動性不足による充填不良が生じやすく、上部構造との一体化が難しいと指摘。その欠点を補うのが無収縮モルタルであり、ノンブリーディング、低収縮性、高い充填性によって橋梁支承部、鉄骨柱基礎、機械基礎、耐震補強といった高品質が求められる箇所に採用されると説明した。さらに太平洋マテリアルは脱炭素に注目し、CO2排出量を大幅に削減した低炭素型無収縮モルタル「太平洋プレユーロックスGXシリーズ」を開発。従来品に比べ性能を大幅に向上させ、低発熱性、強度・耐久性の向上、環境対応、省力化などのメリットを実現したと述べた。


 続いて小林信一氏(太平洋コンサルタント取締役執行役員 左写真)が「打診点検ロボットを活用した外壁診断システム(WSS)」と題し講演。ウォールサーベイシステムの開発背景や、ウォールサーベイシステム協会および同技術研究会の沿革を説明。その後、ウォールサーベイシステムの概要を解説した。システムは連続打撃を可能にする打診棒(転打子)を用い、省力化を実現。外壁構造や点検範囲に応じて最適な機器を選定でき、複数タイルを連続打撃可能な「コロリン転検棒」、足場不要で安全性とプライバシーに配慮し、記録をデジタルデータとして保存できる「WSロボ」、地上から高さ約9mまでの打診が可能でバッテリー式の「WSロッド」の3種類がある。特に今回はWSロボを中心に、その特徴と実際の事例を紹介した。


 最後に濵田譲氏(太平洋コンサルタント 執行役員 関西技術センター センター長 右写真)が総括として挨拶。「今回の講演会では『コンクリートの診断技術』をキーワードに多様な技術を紹介した。今後の維持管理に本日の技術をぜひ活用いただきたい。我々も企業努力を重ね、役立てるよう努めていく」と述べ、講演会を締めくくった。

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