エスイーと合同製鐵 新あと施工アンカー「FWアンカー」を積極展開
エスイーは、合同製鐵と共同開発した橋梁補強補修工、落橋防止装置工などに使用される、新しいあと施工アンカー「FWアンカー」(上写真)の積極展開を図っている。
鉄筋の有効断面積より大きい有効断面積を持つねじを、鉄筋端部に摩擦圧接により接合し、あと施工アンカー材としたもので、従来と比べ、削孔径の細径化による省力化や、使用鋼材の低減による環境負荷低減につなげることができるのが特徴で、コストも3~4%程度縮減できる。従来工法と比較し、鋼材使用量の削減、既設構造物への削孔径の細径化を実現することにより、省力化、環境負荷の低減に貢献できるとしている。NETISも登録済み(NETIS 登録No. KK-250035-A)で既に納入実績もできている状況だ。(井手迫瑞樹)
摩擦圧接の技術を活用し、有効断面積を確保しつつ削孔を小型化
摩擦圧接の技術を活用し、有効断面積を確保しつつ削孔を小型化
鉄筋の有効断面積より大きい有効断面積を持つねじを、鉄筋端部に摩擦圧接により接合
橋梁の補強補修、落橋防止工で使用する金物を固定するあと施工アンカーは、既設コンクリート構造物への削孔時に鉄筋の切断を避ける必要があるが、既設鉄筋の配置位置、間隔が狭く、設計上必要な削孔を実施できないなど、アンカーの位置設定、サイズ選定を検討する必要がある。従来の工法では、あと施工アンカーとして使用する鉄筋にねじ加工を直接施した材料を使用しているが、有効断面積を低減する必要があり、よりサイズの大きい鉄筋、削孔径を使用する必要があった。
両社は、直接、ねじ加工を施す方法ではなく、摩擦圧接の技術を活用し、鉄筋本来の有効断面積を確保し、削孔の小径化を検討し、鉄筋の有効断面積より大きい有効断面積を持つねじを、鉄筋端部に摩擦圧接により接合し、あと施工アンカー材とすることに成功したものだ。摩擦圧接は品質管理の行き届いた工場で実施され、引張試験により鉄筋(SD345)の降伏点又は耐力(345N/mm2)、および引張強度(490N/mm2)以上の機械的性質であることを確認している。
品質管理状況
溶融亜鉛めっきで防食
母材に対して強度の低下はほとんど起こらない
見えないコスト縮減にも役立つアンカー工法
鉄筋とねじの摩擦圧接は、アンカー材となる鉄筋にねじを摩擦圧接にて接合している構造であり、摩擦圧接を妨害する突合せ面の薄い酸化物や吸着物、汚れなどは、摩擦発熱中に破壊されて接合部からバリとなって押し出され、さらにアプセットすることによって、強力な金属結合が得られる。また、融点直下(約1300℃)で結合されること等から、溶融接合(溶接)などに見られるような鋳造組織、粗大結晶粒やピンホール、ブローホールなどは生じないので、母材に対して強度の低下はほとんど起こらない。
摩擦接合状況
有効断面積は従来工法と比べ、3~4割も向上しており、その分、アンカー径や有効埋め込み長を短くすること、あるいはアンカー本数を少なくすることができる。耐震補強のブラケットなどを設置する場合、いつも施工者が悩むのは既設鉄筋との干渉であるが、径や埋め込み長、あるいは本数を削減できることは、単純な材工コストの縮減だけでなく、干渉による削孔のやり直しや埋め戻しモルタル量の減少にもつながるため、見えないコスト縮減にも役立つアンカー工法といえそうだ。
従来工法との有効断面積比較例
アンカー寸法および設計施工例
設計比較例