NEXCO大規模更新シリーズ⑨ 金沢高架橋の床版約6千㎡を取替え
中日本高速道路金沢支社は、現在北陸道金沢東IC~金沢西IC間にある金沢高架橋の床版取替工事を進めている。取替工事は既に(その3)まで進んでおり、その1工事では約5千m2、その2工事では約5.5千m2の合計約10.5千m2の床版取替が完了している。今次その3工事では鋼3径間連続非合成鈑桁橋(4主桁)×6連の約6千m2の床版取替を行っている。7月に記者が取材した時には、同工事のうちP66-P60の2連の既設床版の取替(約2千㎡)を行っており、既に床版架設は完了、研掃工を行っている状況であった。同橋ではその他、塗替塗装工、支承取替工も行っている。その現場をレポートする。(井手迫瑞樹)
損傷は塩害が卓越
取材時はP66~P60の2連の床版取替実施中
床版上面の防水工は、供用されてから長らく未設置
金沢高架橋は、1978年8月に、昭和47年道路橋示方書に基づいて架けられた橋梁である。中空床版橋および鋼2~4径間連続4主鈑桁橋が延々と続く橋梁である。1連ごとの橋長は約90m、主桁間隔は3mで、幅員は11.5mである。今次工事はP72~P60およびP45~P39の6連であるので橋長は約540mとなる。既に6連のうち2連が完了している状況で現在は冒頭に示した通りP66~P60の2連の床版取替を行っている。
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金沢高架橋の橋梁概要図と今回の床版取替位置図
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金沢高架橋断面図
同橋の床版損傷は塩害が卓越している。同橋の既設RC床版厚は220mmである。交通量は10,625台/日(うち、大型車2,503台/日)と、大混率は高いが、疲労による損傷はそれほどではない一方、凍結防止剤散布量:23.3t/年と多く、床版下面の浮きやひび割れ、エフロレッセンスの析出が認められている。また、床版上面の防水工は、供用されてから長らく未設置である。 橋梁上面の砂利化(土砂化)は認められないが、舗装のポットホールや、それに伴うパッチワーク的な補修は都度行われており、さらには「床版上面の鉄筋腐食などは生じていないが、満遍なく塩分が浸透している(※床版上面のかぶり厚40mm、鉄筋近傍の塩化物イオン浸透量1.2kg/m3未満)状況であることから、長期的な損傷傾向を 鑑みて、床版取替を選択した。

劣化した床版上面の損傷状況
劣化した床版下面の損傷状況





床版取替未施工部、舗装や排水桝、ジョイントにも劣化が見られる(井手迫瑞樹撮影)
300t及び250tオールテレーンクレーン2台用いて、中央から端部に向けて撤去、架設
1日当たり片方で5枚(新設パネル換算)、合計10枚の施工を繰り返す
さて、今次工事は、北陸道金沢高架橋の上り線P72~P60およびP45~P39が工事範囲であるが、現在行っている工事は5月GW明けから8月お盆前の69日間、下り線を対面通行規制して、床版取替そのほかの工種を施工した。
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プレキャストPC床版割付図

クレーン配置図
施工は300t及び250tオールテレーンクレーン2台用いて、中央から端部に向けて既設床版の撤去、新設床版の架設を進めていく手法を採用した。限られた規制期間内に定められた枚数の床版を撤去、設置し、舗装までを復旧するには1台の片押しでは難しかったためである。同橋は非合成鈑桁であったため、クレーンの載荷には支障がなかった。一方で、片方は北陸の幹線道路である国道8号、もう片方は北陸道の下り線があるため、基本的には上り線の幅員内(約12m)でクレーンを旋回して架設する必要がある。そのため、ブームはほぼ立てた状態で撤去、架設した。
撤去はオーソドックスな手法を執った。まず既設舗装を撤去した後、床版を横断は2.2m(正確な数字をお願いします)ピッチ、縦断は4主桁のセンターで切断し、センターホールジャッキで引き剥がし、壁高欄ごと撤去した。切断は基本的に路面は道路カッター、壁高欄はワイヤーソーを使用して撤去している。ワイヤーソーで壁高欄を橋軸直角方向に切断後、道路カッターにて床版部を橋軸直角方向に切断する。橋軸方向の切断は、床版撤去架設クレーンが載ることから、クレーンが通過後切断する。切断水は足場上に桶の設置、シート養生等を行い専用の掃除機で橋面上のタンクに集積し、サンドポンプで橋面上のタンクから高架下に設置したノッチタンクに集積し、その後バキューム車で処理場施設に運んでいる。基本的に重さは1部材約10t程度になるよう切断して撤去した。

既設床版上の舗装撤去状況 / 床版の切断状況


既設床版の剥離状況 / 床版の吊り撤去状況

既設床版撤去後のフランジ上面の研掃状況 / ジンクリッチペイントの塗布状況
撤去後は鋼桁上フランジ上面を人力でケレンし、残コンの除去、下地の研掃を行い、ジンクリッチペイント塗布後にシールスポンジを設置した。次いで翌朝、床版パネルを架けていった。床版パネルは1部材当たり2.4m×11.5mの壁高欄一体型を用いており、重量は最大で22tに達した。これを1日当たり片方で5枚(新設パネル換算)、合計10枚の施工を繰り返した。

シールスポンジ設置状況


床版の架設状況
新設床版パネル換算で79枚の床版(約2千㎡)を取り替え
PCの縦締め緊張による一体化を採用
今次工事では新設床版パネル換算で79枚の床版(約2千m2)を取り替えている。その3工事全体では全部で約250枚、約6千㎡の床版取替を実施する予定だ(P66-P60が完了すれば約4千m2が完了)。

スタッドの設置 / 縦締めケーブルの挿入

ジョイントシース
さて、本現場の床版同士の接合は鉄筋継ぎ手構造ではなくPCの縦締め緊張による一体化を採用している。床版架設後はだいたい50~70mごとにPC鋼材の縦締めおよび緊張を行っていく。鋼材はφ21.8mmのスープロストランドを1断面11本用いた。緊張後は2連(6径間)ごとにグラウトを充填する。架設時の床版のPCシース部の接続をスムーズに行うため、ジョイントシースは、施工時に変形追従性を有する東拓工業製のジョイントシースを採用している。継目部は28mmと最小限に抑えており、同部分には床版部は目地グラウト材、壁高欄部には埋め殺しのシールスポンジを配置したうえで、無収縮に近い、ポリマー系のモルタルを用いて、打設していた。

グラウト状況 / ジベル孔へのコンクリート打設状況
なお、PCの横締め部には、予め現場仮置き段階で「RTワンガード」工法による保護塗装を行うことで、床版の耐久性を上げる手法を採用していた。


横締め部への保護塗装施工状況
その後は、床版部の研掃を行うが、際部はライナックス、大部分の中間部はショットブラスト(投射密度50kg/m2)を用いて、表面を研掃し、さらに、段差修正工を施した。その上で、床版防水工(グレードⅡ、HQハイブレン工法)を施し、基層はFB13、表層は高機能舗装Ⅱ型)を用いて施工した。床版防水・舗装面積はいずれも床版取替と同じ約5,500m2となっている。

端部はライナックス(井手迫瑞樹撮影)

中央部はショットブラストで研掃した(二次協力会社はフタミ) (井手迫瑞樹撮影)

床版防水の施工(HQハイブレンAU)

舗装基層および表層の施工状況

排水桝の取替状況(井手迫瑞樹撮影)
なお、同工事では(その1)工事以降、床版取替と合わせて、塗装の塗替え工事や支承取替工事も進めている。支承取替工事は(その3)のみで79基、全体で251基施工、塗替え工事は(その3)のみで17千㎡、全体で28千㎡を施工している(今次工事のP66~P60間は支承16基、塗装5000m2の塗替えを対象)。

ブラストおよび塗替え
同現場の既設塗膜には鉛が含まれるため、塗膜撤去には循環式ブラスト工法を用いた上で、重防食塗装で塗り直している。
元請はピーエス・コンストラクション。一次協力会社はKITAGAWA(撤去・架設)、城西運輸(クレーン)、北川ヒューテック(床版防水・舗装)、第一カッター興業(切断)。ヤマダインフラテクノス(塗装塗替)。



