北部国道事務所 恩納バイパス5号橋の上部工が最終盤
内閣府沖縄総合事務局北部国道事務所が進める国道58号恩納バイパスにおいて、恩納バイパス5号橋の上部工が最終盤を迎えている。上部工の製作・施工は宮地エンジニアリングが担っている。既に桁架設は完了し、合成床版の打設もほぼ完了し、記者が取材した7月22日には地覆工の施工を進めていた。同地は、鋼桁ブロックの搬入路が現道国道58号からカーブのきつい農道を通り、小河川に分断されたヤード内に運ばねばならず、暫定2車線供用中の国道58号恩納バイパスが近接しているため、施工の際の風による荷振れを防ぐため、センサーなどを設置し、はみ出しを警告すると共に、介錯方法を工夫し、58号へのはみ出しを防いだ。さらには、地組及びクレーンを配置するヤードは、サトウキビなどを栽培していた畑地であり、地盤があまり良くなく、その改良から始める必要があった。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)
橋長269m、幅員10.955mの鋼7径間連続2主合成鈑桁橋
2024年11月末~2025年1月末の約2カ月で架設を完了
付近住民には輸送について周知を徹底して事故を避ける
同橋は橋長269m、幅員10.955mの鋼7径間連続2主合成鈑桁橋である。桁高は2.5mで、支間長は最大で48m、最小で29.8mとなっている。合成床版はパワースラブを採用した。コンクリート打設厚は260mmで、圧縮強度30Nの膨張剤入りコンクリートを使用して施工した(スランプは12㎝)。

合成床版はパワースラブを採用(宮地エンジニアリング提供、以下注釈なきは同)
桁製作は同社の千葉工場(千葉県市原市)で行い、東京有明港からRORO船を用いたシャーシ輸送で那覇港まで海上輸送し、沖縄県内輸送業者のトレーラーヘッドを接続したトレーラー(全長17m程度)で国道58号から付近の農道を通り、ほぼ直下にあるヤードまで輸送し、地組した。
農道は曲がりくねっており、さらに小河川上の橋梁も通過しなくてはならない。そのため、付近住民には輸送について周知を徹底し、事故を避けると共に、農道部は一回で通過することは困難であり、何度もハンドルを切り回しながら、慎重に輸送することに努めた。

農道は曲がりくねっており、さらに小河川上の橋梁も通過しなくてはならない
さらにヤードは軟弱地盤(N値:2前後)であるため、土の置き換え、砕石の設置、さらには鉄板敷設を行い、鋼桁の地組の際や、架設に使う300tATCの運用時の安全性に配慮している。鋼桁の架設は地組された最大30t、長さ37mの桁ブロックと横桁を順番に施工し、2024年11月末~2025年1月末の約2カ月で架設を完了した。さらに合成床版の底鋼板部(1パネルに付き橋軸方向2.5m×幅員10.955m、2.5t)を2025年3月~4月114パネル設置した。
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架設計画概要図

地組および架設状況①



地組および架設状況②

地組および桁架設状況③

地組および桁架設状況④
ホテル建設ラッシュのためコンクリート供給がひっ迫
供給日を予め需要が比較的少ない火・金曜日に固定して予約
合成床版へのコンクリート打設は5月末~6月中旬に6回に分けて行われた。ここで問題になったのが、暑中コンクリート対策と、コンクリート供給のひっ迫である。恩納村や本部町、名護市地域など本島北部は現在、ホテルの建設ラッシュとなっており、「生コンプラントは現場まで30~35分程度離れた箇所にある宜野座村のものしかない状態であり、それもホテル建設が優先され、その供給の合間にしか製造してもらえず、急遽供給をねじ込むことは難しい状態にあった」(同社)。そのため、供給日を予め需要が比較的少ない火・金曜日に固定して予約することにし、打設時に合わせてプラント、ポンプ、左官の足並みを揃えた。また、梅雨や台風の襲来を見越して、打設を少しでも早く行うために、底鋼板上の配筋の仕上がりを早めた。「それが奏功し、梅雨時期にもかかわらず、打設日に雨が降り、打設を見送った日が1日しかなかった幸運にも恵まれ、極めて速く施工することができた」(同)。車道床版打設後は、歩車分離帯の打設を行った。

床版コンクリート打設要領図

配筋工の仕上がりを早めた


実際の打設状況

打設後の養生状況

地覆工の打設状況

歩車境界部の打設状況

高欄部の設置状況
運搬時はミキサー車に遮熱塗料を塗布
高欄はアルミ合金製の高欄(日軽エンジニアリングcaproa)を9月から設置
暑中コンクリート対策としては、まず製造時において、骨材への散水と骨材ヤードにおける屋根の使用と共に、地下水の使用、低温度でのセメントの搬入を徹底した。また、運搬時はミキサー車に遮熱塗料を塗布すると共に、現場の待機時間ができるだけ短くなるよう調整していた。
現場施工では養生開始、表面養生剤散布のタイミングを適切に管理すると共に、養生シートや湿潤養生方法についても工夫した。

運搬時はミキサー車に遮熱塗料を塗布
車道部に設置する鋼製排水溝は、その据え付け面にレベリング性と接着性、耐久性に優れた鋼製排水溝設置専用の遮水性敷設材『NRS』を採用、その上にTNSという特殊なコーティング処理がなされた防食性の高い鋼製排水溝『ガッター(アクシス)』(新興化学製)を採用している。
高欄はアルミ合金製の高欄(日軽エンジニアリングcaproa)を9月から設置した。
本工事では、伸縮装置の施工が追加される予定。両端ともマウラージョイント(日本鋳造)を採用する予定で、伸縮量は大きく、丁寧な施工が要求される。
下部工ではアルミ製の検査路(KERO)
上部工では宮地エンジニアリングのFRP製検査路を採用
防食
現場は海岸線から離隔はあるものの、沖縄県は厳しい厳しい腐食環境にあるため、防食仕様は通常のc-5系の重防食塗装とし、桁同士の接合も防錆高力ボルトによる添接を採用している(厳しい塩害地域で行う全断面溶接は採用していない)。一方で、検査路は下部工ではアルミ製の検査路(KERO)、上部工では自社のFRP製検査路を採用するなど長期耐久性に優れた材質のものを採用している。
設計は長大。主要一次協力会社は、架設工がエム・ケイ・エンジ、床版工が丸高建設工業、重機が宮城重機、土工が信幸組、塗装工が沖神。支承メーカーはビー・ビー・エム、防食塗料供給は大日本塗料、防錆ボルト供給は日鉄ボルテン。
最盛期には元請側技術者3人、一次下請以下の技能者25人程度が1日に従事した。

ほぼ施工が完了した恩納バイパス5号橋上部工


