NEXCO大規模更新シリーズ⑪ NEXCO東日本 安達太良川橋床版取替工事の現場を公開
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東北自動車道・本宮IC~二本松IC間に位置する安達太良川橋では、供用開始から約50年が経過した床版の老朽化を受け、高速道路リニューアルプロジェクトの一環として床版取替工事が進められている。交通量の多い区間であることから、本工事では通行止めを行わず、車線シフトによって交通を確保しながら床版を半断面ずつ取り替える施工計画を採用。既設RC床版を撤去し、耐久性に優れたプレキャストPC床版へ更新するとともに、高性能床版防水、SLJスラブ工法(エンドバンド継手)、EMC壁高欄などの技術を導入している。施工は五洋建設・安部日鋼工業JVが担当する。
報道陣に公開された当日は、工事概要や交通運用計画についての説明に加え、新しいプレキャストPC床版の架設初日を迎えた現場が公開され、実際に施工が進む様子を間近で確認することができた。本記事では、説明会で示された工事全体の考え方とともに、現地で見えた更新工事の実像をレポートする。
交通供用下で進める床版更新工事の施工計画と技術的工夫
東北道・本宮~二本松間で進む高速道路リニューアル
安達太良川橋床版取替工事を報道陣に公開
東日本高速道路(NEXCO東日本)東北支社は2025年7月9日、東北自動車道・本宮IC~二本松IC間で進めている高速道路リニューアル工事の現場を報道陣に公開し、現地説明会を行った。東北地方では高速道路の供用開始から50年を超える橋梁が増加しており、老朽化対策は喫緊の課題となっている。NEXCO東日本では今年度、東北地方全体で24橋の床版取替の施工が完了する見込みである。
今回公開されたのは、本宮IC~二本松IC間に位置する安達太良川橋の床版取替工事で、当日は報道関係者を対象に、工事の概要や施工計画、交通規制の考え方などについて説明が行われた。安達太良川橋は1975年の供用開始から約49年が経過しており、凍結防止剤の散布が多い東北特有の気候条件や車両の大型化の影響を受け、床版内部の鉄筋腐食やひび割れ、エフロレッセンス(白華)などの劣化が進行している。床版下面や壁高欄を含め、橋梁全体でコンクリートの劣化が確認されている。本橋は、本宮IC~二本松IC間で実施されている4橋の床版取替工事のうち、最後の1橋にあたる。
床版劣化状況
安達太良川橋は橋長約47mの鋼桁橋で、本工事ではこのうち上り線側の床版を対象に更新を行っている。更新対象となる床版の延長は約42.2mで、1枚あたり延長約2.64mのプレキャストPC床版16枚により構成されている。
本工事では、既設の鉄筋コンクリート(RC)床版を撤去し、耐久性に優れたプレストレストコンクリート(PC)床版へ取り替える工法を採用している。新設する床版には工場製作によるプレキャストPC床版を用い、品質の安定化に加え、耐久性の向上、現場作業の省力化、施工期間の短縮を図る。あわせて、床版の長寿命化を目的として高性能床版防水を施工する計画とした。
床版取替工事の施工数量は全体で約2,890㎡に及び、このうち今回公開された上り線の施工分は約970㎡である。床版防水についても、床版取替範囲と同等の面積を対象として施工される。工期は全体で令和6年2月15日から令和8年5月4日までで、上り線の今回施工分は令和7年6月13日から12月17日まで施工された。
施工にあたっては、本宮IC~二本松IC間が管内でも交通量の多い区間であることを踏まえ、通行止めを行わずに工事を進めた。橋梁の幅員に比較的余裕がある点を活用し、上下線2車線を確保したまま施工を行う車線シフト工法を採用し、対面通行による交通運用とすることで、交通への影響を最小限に抑えている。床版の施工は半断面ずつ取り替える方式とし、中央分離帯の改良や渡り線の設置、仮設オフランプの構築を行ったうえで、本体工事(Ⅰ期・Ⅱ期)を段階的に進め、最終的に既存線形へ復旧する施工としている。半断面施工に伴い発生する縦方向の継ぎ目については、現場で一体化を図った。

安達太良川橋(上り線)の床版を、2分割(ステップ1・ステップ2)して施工を行う
施工STEP 01 令和7年 3月下旬~6月中旬 中央分離帯・渡り線施工 ▪️ランプ改良工(上り線オフランプの改良)▪️下り線・上り線・オンランプの併用車線を外側にシフト ▪️中央分離帯改良工(渡り線・既設防護柵の撤去等)
施工STEP 02 令和7年6月中旬~9月中旬 床版取替 上り線Ⅰ期施工 ▪️上り線の追越車線を渡り線へ切替 ▪️上り線アイランド部に仮説オフランプを造成 ▪️オフランプを仮説に切替 ▪️上り線側の本体工(Ⅰ期)の施工
施工STEP 03 令和7年9月中旬~11月中旬 床版取替 上り線Ⅱ期施工 ▪️上り線路肩側の防護柵を設置 ▪️上り線の走行車線・オフランプを路肩側にシフト ▪️施工STEP02で供用したオフランプを撤去 ▪️上り線側の本体工(Ⅱ期)の施工
施工STEP04 令和7年11月中旬~12月中旬 ▪️既存線形への復旧
既設床版の撤去にあたっては、床版下面の鋼桁上フランジ近傍に建設当時の部材が存在することから、桁への影響を避けるため、床版切断にはワイヤーソー工法を用い、フランジ上から一定厚を残す形で切断を行った。その後、残存部についてはブレーカーやチッパーなどを用いた人力施工により撤去している。床版の架設には400t級オールテレーンクレーン2台を用い、現地での吊り込み作業によりプレキャストPC床版を順次据え付けている。2台配置とすることで、交通規制日数の短縮と施工効率の向上を図っている。

技術面では、プレキャストPC床版同士の横方向の接合にSLJスラブ工法(エンドバンド継手)を採用している。同工法により接合部を短縮し、床版厚を薄くすることで、床版重量の軽減と施工性の向上を図っている。また、壁高欄にはプレキャスト製のEMC壁高欄を採用し、省力化と品質の安定化、将来的な維持管理性の向上に配慮している。
SLJスラブ工法(エンドバンド継手)

壁高欄と床版の固定と壁高欄同士の固定
説明会当日は、新しいプレキャストPC床版の架設初日にあたり、報道陣は施工の様子を間近で見学した。NEXCO東日本の担当者は、安達太良川橋を含む本区間のリニューアル工事について、「老朽化が進む構造物を根本から補修し、高速道路ネットワークを長期的に維持していくための重要な工事」と説明した。完成後は、より安全で耐久性の高い橋梁として地域の交通を支えていくとしている。
施工は五洋建設と安部日鋼工業による特定建設工事共同企業体、一次下請けは桑名建設、インテック、日本道路ほか。土工は地元業者であるYCG福島、人輝が担当した。
五洋建設・安部日鋼工業JVインタビュー
安達太良川橋床版取替工事 施工現場の工夫と判断
本工事の施工を担当する現場代理人の合原吉博氏(五洋建設・安部日鋼工業JV)(左写真)に、リニューアル工事の対象となった経緯や床版の劣化状況、4分割施工をはじめとする施工方法の特徴、安全確保に向けた現場での取り組みについて話を聞いた。
――今回のリニューアル工事で、安達太良川橋が対象となった経緯や背景について教えてください。
合原吉博氏 安達太良川橋は、供用開始から約半世紀が経過している橋梁です。NEXCO東日本による事前調査の結果、床版取替が必要と判断され、当社も詳細調査のために桁下などの現場調査に入らせていただきました。その結果、床版下面を中心に損傷が大きく、劣化が進行している状況が確認されました。エフロレッセンス(白華)の発生も見られ、床版内部への水の浸入が疑われる状態でした。
――東北地方特有の環境条件も影響しているのでしょうか。
合原 東北自動車道、とくに福島県内は雪国で、12月から2月、長い場合は3月頃まで除雪作業が続きます。除雪車による塩化ナトリウムの散布が繰り返されることで、床版への負担はどうしても大きくなります。他県と比較しても、損傷の進行は比較的早かった印象があります。
――ポットホールの発生もあったと聞きました。
合原 舗装上にポットホールが頻発していました。一度舗装をめくって調査したところ、既設の床版防水が劣化し、ゴム状になって機能していない状態でした。補修しても、雨が降ると再び水が入り、同じようにポットホールが発生するという状況で、根本的な対策が必要だと感じていました。今回の床版取替と防水更新によって、こうした構造的な問題は解消できると考えています。
――これまでに大規模な修繕履歴はあったのでしょうか。
合原 橋梁全体としての大きな修繕履歴は、私たちが携わる以前にはなかったと思います。ただし、舗装補修などの小規模な対応は随時行われており、ポットホールの補修などについては当社も部分的に対応してきました。
――今回の工事で特徴的な施工方法について教えてください。
合原 最大の特徴は、半断面施工をさらに分割した4分割施工です。上下線ともに4車線を確保しながら床版を取り替える施工方法を採用しています。背景として、安達太良サービスエリアが非常に近接している点があります。当初は大きく迂回路を設ける案や、対面通行に切り替える案も検討しました。しかし、対面通行ではサービスエリアが確保できず、また仮に外側に迂回路を設ける場合でも、農地占用など現実的に難しい条件が多くありました。そのため、下り線・上り線それぞれを走行車線側と追越車線側に分け、4車線を維持したまま床版を順次取り替える施工計画としました。
――現場にはどの程度の人数が関わっているのでしょうか。
合原 作業員と交通誘導員を含め、多い時で約170~180人が現場に入っています。これに加えて、当社の職員や事務スタッフなどが昼夜交代で約50人程度関わっています。
――床版撤去の方法についても教えてください。
合原 床版の撤去には、ワイヤーソー切断工法を採用しています。ワイヤーで床版を切断し、大きなブロック単位で撤去・搬出しています。床版下面には建設当時の部材があるため、切断深さはフランジ上から約10cmを残す形とし、それ以上はブレーカーやチッパーなどの機械を使って手作業で撤去しました。
――PC床版に使用している鉄筋については。
合原 鉄筋にはエポキシ樹脂鉄筋を使用しています。腐食に強く、耐久性向上を目的とした選定です。
――施工上、特に苦労した点はどこでしょうか。
合原 4車線を確保しながら床版を取り替えるため、仮設の線形づくりには非常に苦労しました。下り線での施工を通じてノウハウを蓄積し、現在は上り線の施工に活かしていますが、線形の確保と安全性の両立は常に課題でした。また、この区間は速度が出やすく、事故も起きやすい場所です。NEXCO東日本や警察とも協議を重ね、視認性向上のために赤色ラインの設置、音で注意を促すバイブレーションライン、白色舗装など、さまざまな工夫を施しました。最近の車両はオートクルーズ機能もあり、ドライバーの注意が散漫になりやすい傾向があります。音と視認性の両面から注意喚起を行うことで、安全性の確保を図っています。その結果、現在まで大きな事故もなく工事を進めることができました。
――ありがとうございました。






