横河ブリッジとトヨコー 関越道土樽橋上り線で『CoolLaser』(クーレーザー) を試験施工

横河ブリッジとトヨコー 関越道土樽橋上り線で『CoolLaser』(クーレーザー) を試験施工
2025.12.24

回転式レーザー素地調整工法 鋼材表面の既設塗膜、さび、塩分を除去し、アンカーパターンも形成できる

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 横河ブリッジとトヨコーは、横河ブリッジが鹿島建設とのJVでリニューアル工事を進めている関越自動車道土樽橋の上り線P10橋脚付近の主桁G4・G5ウェブ面およびガセットボルト周りに 回転式レーザー素地調整工法『CoolLaser』(クーレーザー) の試験施工を行った。クーレーザーは、最大出力5.4kWの高出力レーザーを円状に回転させ連続的に照射することで、既設塗膜やさびの除去はもちろん、鋼材表面の塩分も基準値以下に除去できる。ケレン品質も一種ケレン同等の性能を担保できる。同機械は昨年9月に市場に投入され、現在までに 200件以上の鋼構造物の維持管理に用いられている。塩害環境が厳しい箇所や耐候性鋼材を用いた橋梁における、極めて硬い層状悪性錆を有する構造物など、従来の塗膜はく離剤やブラスト工では施工が難しい箇所はもちろん、「塗膜やさび、塩分などは気化、蒸散するなどしてバキュームで吸い取るため、新たな廃棄物の発生を極小化でき、作業員の健康被害の低減にもつなげられる」(トヨコー)工法として、「環境面やコスト面などを考慮して、クーレーザーの特徴が発揮できる現場への適用を拡大していきたい」(同)ということだ。(井手迫瑞樹)

あしたへ架ける。想いを渡す。 キレイに、未来へ トヨコー4月

レーザー光を高速で円回転に照射し、鋼材表面温度を上げることなく塗膜やさびを除去、塩分を蒸散

電源以外の設備をすべて4tトラックに車載

レーザー光を高速で円回転に照射し、鋼材表面温度を上げることなく塗膜やさびを除去、塩分を蒸散

 土樽橋は、新潟県南魚沼郡湯沢町土樽のJR土樽駅にほど近い箇所にある鋼橋である。今回施工した上り線は、橋長が426mの鋼単純合成鈑桁+鋼3径間連続非合成鈑桁+鋼2径間連続非合成鈑桁+鋼3径間連続非合成鈑桁×2連の橋梁で、昭和60年ごろに供用された。塗装記録表を見ると、1984年製作時、次いで1994年に3種ケレンで塗り直されている。当初の塗装系は記録表には記されていないが、塗替え時は変性エポキシ樹脂塗料を2層下塗りし、中塗りと上塗りをポリウレタン樹脂塗料で施工していることが記されている。塗膜成分を調査したところ、塗装系に基準値以上のPCB成分は入っていなかったが、基準値を超える鉛分が検出された。また、凍結防止剤の影響であろうか、塗膜表面の塩分が多い箇所で300mg/m²を超える高濃度の塩分(蛍光X線分析ではClが51.24%と示されていた)が鋼材表面に付着していた。


土樽橋、JR土樽橋がほぼ隣接している箇所にある。塗膜はそれほど傷んでいなかったが、

塗膜表面には非常に高い濃度の塩分(Cl)が付着していた / 一部でさびも生じていた


 塗膜の状態はそれほど悪くなかったが、一部で錆なども生じていたことから、さびや既設塗膜の確実な除去と産廃量の減少、アンカーパターンの形成、一種ケレン同等の素地品質による工程省力化、塩分除去による塗り替え品質向上を企図して、クーレーザーの試験施工を行ったものである。

 クーレーザーは、電源以外の設備をすべて4tトラックに車載できるため可搬性に優れている。電源は100kVAの一般的なものを使用するため、特別な発電機を必要としない。トラックから最大100m離れた箇所まで施工できるため、段取り替えを最小限にできるというメリットを有している。またレーザー光を高速で円回転に照射するため、瞬間的に既存塗膜やさびの除去、塩分の蒸散を行うが、鋼材自体の温度をそれほど上昇させず、酸化被膜の形成や照射した鋼材裏面の塗膜の劣化(いわゆる裏焼け)を防止できる。鋼材の温度上昇は形状や厚みなどの条件によるが70℃前後になる。今回の試験施工では裏面の塗膜が傷むことはなかった(トヨコー)。


電源以外は全て4tトラックに車載出来る

車載されている各機器

最大で100m離れても施工できる


施工状況 ガスやヒュームがほとんど出ておらず、また円形に回転しながら照射されていることが分かる

トヨコー4月 アルミ合金製常設足場「cusa」を設置 天城橋 株式会社横河ブリッジ

鋼材表面にはアンカーパターンが形成、再ブラストの必要はない

施工後の鋼材表面の塩分量は300㎎/m2が6㎎/m2に

 施工後の鋼材表面にはアンカーパターンが形成されるため、再ブラストの施工の必要もない。公開施工では約1m²を30分間かけて処理し、施工後の鋼材表面の塩分量は管理値とされる50mg/m²未満を大きく下回る6.0mg/m²(もっとも大きな値(横構部)、表面塩分計による計測)まで減少していた。蛍光X線分析計では97%以上がFe(鉄)と示され、Cl(塩素)や既設塗膜由来の元素は検出されなかった。除錆度はSa2.5以上を確保し、表面粗さは31μm RzJIS前後を確保できた。また、既に大日本塗料、日本ペイント、関西ペイントなど大手三社の塗料を用いた鋼橋塗り替えの際の施工を行っており、塗替え後の塗膜剥離などの問題は起きていないということだ。今後は溶射などで補修する際の塗り替え品質の確認も行っていく。


鋼材素地表面

施工後の下地を測ってみると、鋼材成分がほとんどを占め、塩分は管理値未満であった

トヨコー4月 アルミ合金製常設足場「cusa」を設置 天城橋 株式会社横河ブリッジ

表面に対して垂直に照射することが重要 ノズル重量は4kgと軽い

施工の際に生じるガスやヒュームは集塵機構で絶えず吸引

 施工にあたっての留意点は、表面に対して垂直に照射すること。斜めからの照射でも錆や不純物の除去は可能だが効率が落ちる。施工に使うノズル重量は4kgと軽く、さらに他のブラスト工法や研掃工法と異なり施工時の反力がないため、施工者の負担が少ないことも特徴である。

 CoolLaser工法は先端に集塵機構(レーザー照射によって生じたガスやヒュームの吸い込み機構)を備えているため、施工の際は既存塗膜やさび、塩分などを伴うガスやヒュームや粉じんを絶えず吸引する。そのため施工者が高濃度の不純物を含む気体を吸い込むことはない。なお、フェールセーフのためタイベックやマスクなどの安全装備を着用した上で施工している。

 さらに屋外対策(保管時-10℃まで)ができているため冬季でも施工可能で、気温に左右されない。施工効率は膜厚250~350μmの場合、ウェブなどの平滑部で1時間当たり約2m²、隅角部や添接部、層状錆などが発生している箇所では同1㎡を処理できる、としている。

トヨコー4月 アルミ合金製常設足場「cusa」を設置 天城橋 株式会社横河ブリッジ

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