阪神高速 大阪湾岸道路西伸部において六甲アイランド東工区の下部工、基礎工が進捗
阪神高速道路神戸建設部が進めている大阪湾岸道路西伸部において六甲アイランド東工区下部工事の基礎工が最盛期を迎えている他、下部工及び上部工の一部が進んでいる。同橋は西行が橋長671.53m、東行きが橋長654.595m、(全幅13.5~14.85鋼重約11,000t)の鋼8径間連続4主合成細幅箱桁橋で、床版は合成床版を採用している。橋脚構造は基礎への影響を最小限にすべく、PPE1~PPE7が鋼製橋脚(門型・T型)で国土交通省近畿地方整備局浪速国道事務所との工区境に位置するPE1のみ、柱がRC、梁が鋼構造の複合構造となっている。また、地盤がぜい弱なことから、基礎の地層は、上位から、盛土・沖積粘土層、その下位には洪積粘性土層が陸域から海域に向かって緩やかに傾斜すると同時に層厚が増す傾向がみられる。また、地質の特徴として盛土は内陸部での掘削土が埋立用土砂として利用されており、この花崗岩類の礫が散見される。 基礎の深さは最大約60mに達しており、現場の地盤状況や、経済性、周囲の交通や建造物などの制約条件を鑑みて、鋼管杭、鋼管矢板井筒基礎、ニューマチックケーソンを使い分けて施工している。受注者は下部(基礎)工が大成建設、上部工および鋼製橋脚工がカナデビア・JFE・日ファブ・川田JV。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)
埋め戻し土 ガラを除去した良質土を用いて施工
ニューマチックケーソン部の基礎は55mに達する
基礎工
まず鋼管矢板井筒基礎である。鋼管矢板井筒基礎はオールケーシング工法を使用して施工した。埋戻し土が多数必要になるが、ガラを除去した良質土を用いて施工した。具体的には、鋼管矢板井筒基礎の施工フローとして、①地中障害物撤去⇒②鋼管矢板継手部先行削孔⇒③鋼管矢板打設の順に施工している。

鋼管矢板井筒基礎の掘削状況と均し状況

同 鋼管杭打設状況
盛土層に存在する転石、礫を事前に除去し、良質土に置換えする事で、鋼管矢板打設に支障が無いようにした。また、鋼管矢板継手部についても、先行削孔を行う事で盛土以深の障害物を除去した。
工法はそれぞれ、①オールケーシング工法、②二軸同軸式アースオーガ工法、③バイブロ併用打撃工法を使用している。
また、最大約60mに達する深さにおける鉛直性を確保するために、継手部分(C型チャンネルを採用)を3点杭打機で先行掘削して確保すると共に、本杭(φ1,000mm)は、H鋼を杭の前後に配置して定規替わりとし、鉛直精度を物理的に担保しながら鋼管を打設していった。杭の一回当たりの打設長は12~16mとし、溶接で継いで最大約60mの深さを施工した。本数は1基当たり46~73本を使用した。
現在は鋼管矢板基礎数5箇所の内3箇所において杭打設が完了している。
次にニューマチックケーソンである。ニューマチックケーソン部の基礎は55mに達する。鉛直性を確保するために、「とにかく余掘りをしないことと、沈設時の綿密な水気圧調整を心掛けた」(同社)。55mの深さは15mを有人機械施工、それより下は遠隔操作による無人機械掘削による施工で掘削していった。また、両側には六甲アイランド北側臨港道路が走っているため、その道路に掘削による影響を与えないようにしなくてはならない。そのため、周辺への影響が出ないように予め遮断鋼矢板を18mの深さまで打ち込み、基礎の施工を行っている。

ニューマチックケーソン部の施工

ニューマチックケーソン部のコンクリート打設状況(井手迫瑞樹撮影)
現在は、掘削を終え、躯体部の鉄筋も組み終え、躯体工の施工に入っている。そこで課題となるのが暑中コンクリート対策である。確実な打設を行えるようにスランプは15cm程度とし、筒先の温度上限は35℃とした。
また、『It-Concrete』を使用する事で、練混ぜ開始から打込完了までをクラウド上で管理し、リアルタイムで打設状況を確認することにより、品質確保に努めていた。

『It-Concrete』を活用した
1回当りの打設高さは50cm以下とし、締固めについては、挿入間隔を45cm、10秒程度の振動時間を設定した。

現在、ニューマチックケーソン部で施工された基礎工部は黒いシートで覆われ、次工程まで養生されている
(11月27日、井手迫瑞樹撮影)

交差点の東側でも基礎工の施工が進んでいた
下部工(基礎工)の元請側技術者は15人/日、一次下請以下の技能者は最盛期で60人/日が従事している。主要一次施工業者はマルタイ土木(鋼管矢板井筒基礎部)、九十工業(ニューマチックケーソン部)。
板厚は最大100mm弱、1溶接線の延長も5m近くなる所も存在
架設は、1径間を除きトラッククレーン
上部工
上部工は「これから」(同JV)の状況である。現在は、PPE7とPPE5Rのみ(基礎と鋼製橋脚をつなぐ)アンカーフレーム、PE1の鋼製梁の施工を完了させた状況である。同橋は六甲ライナーおよび、阪神高速湾岸線入路の一部を超える部分の架設が予定されている難しい現場である。
上下部の取り合いは、端部のみ支承構造で中間支点部は全て桁と橋脚の梁が剛結する構造となっている。PE1橋脚のみ、鋼製梁部とRC橋脚柱が剛結する構造となっているが、同部分については、RC側から鋼製梁部との接合に必要な延長分の鉄筋が、下部工を施工した大成建設により既に精度よく設置されており、スムーズに鋼製梁を設置することができた。梁設置後は、スランプフロー45㎝の中流動コンクリートを充填・打設に用いることで剛結部の品質を確保している(完了済み)。

PE1橋脚のみ、鋼製梁部とRC橋脚柱が剛結する構造 そのコンクリート打設状況
また、鋼製橋脚や鋼製梁、桁と梁の剛結部は全て全断面溶接によって行う。橋脚は場所によって門型もあるが、T型橋脚も存在する。とりわけT型橋脚は1本柱で大きな梁の張り出し長、上部の桁ブロックを支えなくてならないため、自然と角周延長、板厚とも長く、厚くなる。さらに陸送時は、その長さおよび重さによって積載寸法が決まっていくため、溶接個所は増える傾向となる。板厚は最大100mm弱、1溶接線の延長も5m近くなる所も存在する。脚高は六甲ライナーおよび湾岸線入路を超える箇所で約25m(剛結構造のため橋脚高さの考え方が難しいが、桁高2.8mを除き、柱部高さは地表面からは約25m)に達するため、橋脚の鋼製柱部だけでも多数の板厚の厚い溶接継手を施工しなくてはならない。さらに、架設した大ブロック架設後の、ブロック接合部の現場溶接も必要となる。現場の交通状況や、季節によっては非常に過酷(記者が取材した7月30日は36°に達した。灼熱である)、ないし厳しい養生環境(冬季は海に近いため、風が強い)が予想される難工事といえる。
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PE1の鋼製梁の施工
架設は、1径間を除きトラッククレーン(クレーンは550tおよび700tオールテレーンクレーンを使用)+ベント工法で施工する予定であるが、径間長約105mの六甲ライナーや湾岸線を跨ぐ部分のみ、送り出しによって施工する予定である。

交差点、モノレール桁、高速道路の桁や歩道橋など、様々な交差物を跨がなければならない
鋼製橋脚および鋼桁はカナデビア(因島)、JFEエンジニアリング(津)、日本ファブテック(取手)、川田工業(多度津)のそれぞれの工場で製作したものをそれぞれ陸送し、現場で地組した上で順次架設していく。
主要一次下請は架設がトーヨーテクニカ、溶接がNKライズ、塗装が鉄電塗装。




