阪神高速 上松社長就任後、初の定例会見を開催

阪神高速 上松社長就任後、初の定例会見を開催
2025.12.09

主要事業の進捗状況、環境分野の技術開発、20周年の振り返りなどについて言及

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阪神高速道路
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 阪神高速道路は、12月2日、社長交代後初めてとなる上松英司社長(右写真、井手迫瑞樹撮影)による会見を開催した。主要事業進捗については、淀川左岸線2期は大阪市より委託されている海老江地区では本体工事をおおむね完了し、豊崎地区では付属施設設置工及び換気所の掘削などを継続して実施している。万博期間内には大阪・関西万博会場に向かうシャトルバスのアクセスルートとして活用されていたため、バスの交通に影響ない範囲で工事を進めていたが、今後は道路の完成形に向けて工事を進めていく。淀川左岸線延伸部においては、豊崎地区の地中障害物撤去工事が完了した。引き続いてトンネル部における有識者の助言を踏まえた設計検討を実施している。とりわけ堤防・トンネル一体構造区間では、安全性などの検討が完了し、仮堤防設置工事を委託すべく、国と調整を進めている。大阪湾岸道路西伸部では駒栄地区の開削トンネルと六甲アイランドの橋梁下部工の進捗状況について話した。また、カーボンニュートラルに関する技術開発および、会社設立後20年間の成果の振り返りについても語った。(井手迫瑞樹)

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交通量、営業収入共に5%程度上昇

松原線の喜連瓜破の供用再開が区間交通量の変化に影響

 営業状況は上向きに推移している。今年度4~10月の期間の通行台数は、1日平均で75.9万台ということで、前年同期比で105%増加した。これは喜連瓜破付近の通行止め工事が完了し、昨年12月7日に通行を再開したこと、さらに、大阪万博の開催中のアクセス交通の増加が一因ということだ。具体的には、喜連瓜破の通行再開による増が約2%、そして万博のアクセス交通による増加が約1%、残り約2%が人や物の移動の活性化というふうに推定している。


営業状況(阪神高速道路公開資料より抜粋、以下注釈なきは同)


 料金収入も、前年比105.6%に増加した。万博会場および尼崎、舞洲、堺のパークアンドライド駐車場のアクセスとなる出口の交通量が平均で約4000台増加している。万博関係では、開幕当初の4、5月に比べて、会期後半の9、10月に相当増加している。特に舞洲の出口交通量については、9、10月は倍増した。


交通状況


 阪神高速ネットワークの交通量も区間ごとに顕著に変化した。その大きな要因は、松原線の喜連瓜破付近の通行が再開されたことによるものが大きい。通行止め期間中は大和川線や湾岸線周り、あるいは近畿道から東大阪線周りに迂回させた交通が、松原線あるいは環状線に戻ったということだ。


各路線の交通量の変化

橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版 スクラップ&ビルドからストックマネジメントの時代へ

高速道路網のミッシングリング解消のため、4路線を整備

大阪湾岸西伸部 駒栄地区の開削トンネルと六甲アイランド地区の橋梁基礎、下部工が進捗

 続いて事業進捗状況をネットワーク整備について説明した。

 阪神高速は関西の高速ネットワークのミッシングリンクを解消するために4つの路線を現在建設中である。


ミッシングリンクを解消するために4つの路線を建設中


 まず淀川左岸線2期は、海老江地区並びに豊崎地区において、大阪市から受託して工事を進めている。万博開催期間中はシャトルバス等のアクセスルートということで活用していたため、運航の影響ない範囲で工事を継続した。万博完了後は最終の完成形に向けて、大阪市と共同で工事を進めていく。


淀川左岸線2期と延伸部


 淀川左岸線延伸部は、豊崎地区において、淀川の堤防沿いに地下河川や水路ボックス等の地中障害物があったが、これを撤去する工事が完了した。豊崎地区は左岸線2期と同様、淀川の堤防と道路トンネルが一体となった構造となっている。そのため、道路の本体工事に先立って、淀川の仮堤防を設置する必要があり、その工事を河川管理者である国の方に委託すべく、現在調整を進めている。

 大阪湾岸道路西伸部は国と共同で進めており、同社では駒栄地区で開削トンネル、六甲アイランド地区で橋梁の橋脚および基礎工事を進めている。また、六甲アイランドとポートアイランドを結ぶ新港・灘浜航路部については、昨年12月に受注者が決まり、現在、詳細設計を進めている。具体的には橋梁の橋梁を架設する手順や、その施工方法、橋の各部材の設計を行っている。国においては、新港・灘浜航路部の基礎の工事を発注すべく、現在契約手続きを進めているということだ。


大阪湾岸道路西伸部

基礎の施工(左、中)、長大斜張橋は六甲アイランドとポートアイランドを結ぶ予定だ(右写真は六甲アイランド西端から望む)
(井手迫瑞樹撮影)


 駒栄トンネルは4ブロックの開削トンネルのうち1ブロックは完成し、1ブロックは工事中だが、大型下水幹線の調整が必要な箇所や、交通量の多い神戸市道が直上にある部分があり、同箇所をどのように施工していくかが今後の課題となりそうだ。

 なお、12月2日には、大阪湾岸道路西伸部のARアプリをリリースした。神戸のウォーターフロントや、六甲山の山麓部からなど、様々な場所から長大橋の完成後の風景をスマホ等で簡単に手軽に見ていただくことができるようにしたもの。


ARアプリ


 名神湾岸連絡線も国、NEXCO西日本と共同事業で進めている。阪神高速では、西宮港付近の航路を跨ぐ部分の橋梁構造の検討、それから両端の3号神戸線、5号湾岸線のジャンクションに当たる部分の施工方法の検討などを実施している。


名神湾岸連絡線

橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版 スクラップ&ビルドからストックマネジメントの時代へ

リニューアルプロジェクト 15号堺線湊町付近で残る6基の鋼製基礎を構造改良

3号神戸線京橋付近の橋梁や32号新神戸トンネルのリニューアルも進めていく

 リニューアルプロジェクトについては、14号松原線の喜連瓜破付近の橋梁の架替え工事が昨年12月7日に完了し、通行を再開した。現在は桁下や街路復旧の工事も含め全て工事が完了している。

 一方、15号堺線の湊町付近では、難波の千日前通りにおいて、橋梁基礎の大規模な改修を行うプロジェクトを進めている。千日前通りの地下街の上にある当社の鋼製基礎を、大規模に補修し、構造改良するものだ。基礎は全体で9基あるが、そのうちの3基については、万博前までに本体工事は完了しており、残る6件について、今後順次工事着手する予定である。


リニューアルプロジェクト


 大阪万博開催期間中は、本線の通行止めなど交通に影響が出るような大規模な工事は控えていたが、万博が完了した今後は、計画的にリニューアルプロジェクトを進めていく。

 主な今後のリニューアルプロジェクトとしては、喜連瓜破と似た状況にある橋桁にヒンジ構造を有する3号神戸線京橋付近、同社初のトンネルリニューアル事業となる、32号新神戸トンネル等が挙げられる。


3号神戸線京橋付近

橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版 スクラップ&ビルドからストックマネジメントの時代へ

カーボンネガティブの実現を目指すコンクリートを研究、試験施工

ペロブスカイト太陽電池(タンデム型)の導入を検討

 技術開発面では、カーボンニュートラルに関する技術開発プロジェクトを紹介した。建設材料の脱炭素化と再生可能エネルギーの技術開発を中心に進めているもの。

 同社では2050年にカーボンニュートラルを目指しているが、コンクリートの夏脱炭素化に向けた共同研究の一環として、従来のセメントを一切使用せず、その代わりに高炉スラグと工場の排ガスなどから出るCO2を回収して、吸収固定した材料を加えて作成するコンクリートを共同研究の対象とした。同コンクリートは、生産時のCO2の排出量よりもさらに、CO2を減らすことができる、「カーボンネガティブ」の実現を目指す。現在は、高速道路施設への実装に向け、どのような構造部分に適用するのが適しているのか、耐久性や安全性など、高速道路構造物として所要の性能を満たしているかということを実証するために、昨年、工事が完了した松原線の喜連瓜破高架橋の中央分離帯の壁高欄の一部で現場打ちによる試験施工を実施した。なお同コンクリートの構造物としての性能、耐久性試験はこれからということである。なお、今回施工したコンクリート以外にも3つの工法・材料を検討している。


カーボンネガティブを目指す


 再生可能エネルギーの技術開発面では、発電効率が高く、薄くて軽い特徴を有するペロブスカイト太陽電池(タンデム型)の導入を検討している。現在高速道路への実装に向け、高架下など照度の低い場所でも期待する発電効果を実現できるか、また、薄さ軽さという長所を生かして、今ある既存の施設への適用が設置可能か、さらには、発電量は耐久性など、供給電源としての基本性能を備えているかなどについて、淀川左岸線2期の海老江地区の現場で実証実験を行っている。


タンデム型ペロブスカイト太陽電池の導入を検討

橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版 スクラップ&ビルドからストックマネジメントの時代へ

「利用者」を「お客様」に呼称変更し、意識を改革

「総合満足度」が年々上昇

 最後に20周年を振り返った主要な成果についても言及した。

 ネットワーク整備については、公団時代からの継続事業であった京都線、神戸山手線南伸部、淀川左岸線1期、さらには大和川線の合計25.9kmをこの20年で整備し開通させた。また、森口、松原、西船場という3つのJCTについても、整備した。さらに継続事業である淀川左岸線2期に加えて、かねてから関西のミッシングリンクとして懸案であった、淀川左岸線延伸部、大阪湾岸道路西伸部、名神湾岸連絡線を新たに事業化し現在整備を進めている。


ネットワーク整備の進展


 防災減災の取り組みも進んだ。今年1月17日で阪神淡路大震災から30年となったが、道路構造物の耐震対策を継続的に実施しさらには、阪神淡路大震災以降にも起こった、大きな地震で新たに認識した課題についても対応している。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災は、遠隔地で起きた地震のため、阪神高速は揺れも小さく被害は特になかったが、津波被害というものをという課題を新たに認識することになった。当社も南海トラフ地震などを考慮し、受変電設備など重要施設を津波が来ても浸水しない高い場所に上げる、閉鎖された箇所に水が入ってこない浸水対策、本社を耐震性やBCPの優れた建物に移した。さらには災害対策本部室を常設し、震災が起きても的確に活動できる体制を整えた。


防災・減災への取り組み


 2018年6月18日に発生した大阪北部地震においては、管内では最大震度6弱を記録し、阪神高速の全線が通行止めになる事態となったが、それまで進めていた耐震補強が奏功し、被害は生じなかった。但し、地震発生時に全ての入口を通行止めすることに非常に時間がかかった。それから発生後に構造物を点検して、通行の安全を確認し、再開するまで5時間22分もかかってしまった。この教訓をもとに、強い地震発生時の通行止めの範囲や、通行止めを解除時の、措置条件を見直した。

 さらには人が直接行かなくても遠隔操作で素早く入口を設置する装置の整備についても取り組んでいる。

 最後に、「お客様サービスの推進という点では言葉に大きな変化があった」(上松社長)。高速道路を使用していただく方々を、「利用者」と呼称していたが、それを「お客様」と呼ぶように変えて、その意識のもと業務を行ったことが、民営化による最大の成果であるとし、「お客様」の目線やニーズを常に意識したサービスを向上させることができた。また、お客様センターを開設、拡充し、365日24時間、お客様からのお問い合わせや要望を受け付けてお答えする仕組みを作った。多様な意見や要望を踏まえて、サービスの改善向上策を毎年度策定し、継続的に実施した結果、「総合満足度」が年々上昇し、非常に高いレベルで維持されている、ということで、これからも徹底したお客様目線で、サービスの向上に取り組んでいく方針だ。


顧客満足度の強化

橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版 スクラップ&ビルドからストックマネジメントの時代へ

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