呉市 RC桟橋形式の張出歩道部の塩害を乾式吹付材や犠牲陽極などを駆使して補修

呉市 RC桟橋形式の張出歩道部の塩害を乾式吹付材や犠牲陽極などを駆使して補修
2026.02.09

「リフレドライショット」などを使用

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防食 塩害
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 広島県呉市産業部港湾漁港課は、同市築地町のマリンパーク川原石の北の運河に沿って設置している張出歩道(鋼管柱でRC構造の張り出し桟橋を支えている構造)部において、補修工事を行っている。同歩道部は延長358mの桟橋構造で、1978年に供用されたもの。2022年から約20mずつ塩害対策及び裏面の断面修復を行っており、既に80mほどを補修。現在はさらに20mほどの補修を行っている。鉄筋の防錆対策として犠牲陽極(イオン化傾向の差を利用した腐食抑制)を設置し、断面修復には、遠距離圧送でき厚付可能な乾式吹付による断面修復工法「リフレドライショット」、断面修復後の表面被覆は塩害対策として無機系封孔剤「パーミエイト」を施している。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)


今回の補修個所(左上図)と補修位置図(右上及び左下図)、補修工一般図(右下)

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リフレドライショット 短時間で施工でき、厚付けも可能

厳しい乾湿繰り返しを伴う塩害環境

発錆限界値をはるかに超える10kg/m3の塩化物イオンが測定

 損傷状況
 現場はかなりの塩害環境である。歩道部のため、活荷重は無きに等しいが、舗装面には縦横のひび割れが走っている。呉港湾に近く、運河部も汽水域というよりは海水域といっていい。平均でも満潮時の潮位は2,800mmまで上がり、さらに大潮の時期は3,400~3,600mmに達し、床版下半までが海水に漬かる状況となる。干潮時は海水面が大きく下がるわけで、かなり厳しい乾湿繰り返しを伴う塩害環境である。実際、鉄筋近傍の塩分を図った所、発錆限界値をはるかに超える10kg/m3の塩化物イオンが測定された。そのため、鉄筋膨張により影響などから床版部及び梁部において大きなひび割れがかなり出ており、下面かぶりコンクリートのうき、剥離はもちろん、下端鉄筋の腐食、酷い箇所では断面欠損や溶失が生じている状況であった。塩害による劣化は進行しており、劣化度は進展期~加速期にさしかかっており、早急な補修対策が必要と考えられた。


汽水域で厳しい塩害環境といえる。また、満潮時はとても補修ができる状況ではない

そのため、干潮時に時間を絞っての施工とならざるを得ない

はつり後の鉄筋の損傷 / 未施工の部分も大きなひび割れが生じている

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塩害が進行しており、はつり厚は深くなっている

ひび割れ充填材や、犠牲陽極材を使用

補修フロー
 さて、補修工事は①作業吊足場組立、②劣化状況調査を行い断面修復工の実施位置の特定 ③はつり工、④損傷している鉄筋の補修、⑤犠牲陽極の設置、⑥乾式吹付による断面修復、⑦ひび割れ充填工、⑧表面被覆工による仕上げという手順で行った。

 作業はまず、作業吊り足場の組み立てを行い、劣化状況確認し断面修復箇所の詳細位置を決定した。決定した断面修復工部のはつり工を実施した。はつり深さは、鉄筋裏10mmを原則とし、はつり厚は梁部(厚さ700mm)で150mm、床版部(床版厚200mm)で100mmとした。


カッター工およびはつり工の施工状況



はつり完了状況と損傷した鉄筋の切断状況


 鉄筋は腐食程度であれば、ケレン処理した上で、亜硝酸リチウム系防錆剤による防錆処理(リフレα防錆ペースト)を施す。また、断面欠損が著しい箇所や、溶失箇所については、新たな鉄筋をフレア溶接によって継ぎ足した。


ケレン工および継足し鉄筋の溶接工

鉄筋への防錆材(α防錆ペースト)塗布状況


 施工区域は強い塩害地域であることから犠牲陽極材は、塩害状況を鑑みて1㎡当たり4.4箇所設置した。また、亜鉛量は1個当たり200gを包含するものを用いており、長期間の犠牲防食作用を発揮できる材料とした。



犠牲陽極材の配置状況

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リフレドライショット 短時間で施工でき、厚付けも可能

圧送距離は300m 施工プラントの確保や住民への影響を軽減

 次いで断面修復である、乾式吹付剤を設置する既設界面には、吸水防止効果を有するプライマーを塗布し、1時間養生して指触により状況を確認した上で、乾式吹付材による断面修復を行った。乾式吹付材(リフレドライショット、乾式PCM)を用いたのは、施工プラントから施工ヤードまでの距離が長距離であったこと、さらに短時間で施工でき、厚付けも可能であることが理由だ。


リフレドライショットの吹付施工状況①


 当初の計画では、型枠を用いたグラウト充填工による施工を予定していた。しかし、潮位の変化が早く、型枠設置および充填とその後の養生を考慮した場合、大きく施工期間が必要となることなどから再検討を行い、乾式吹付工(リフレドライショット、乾式PCM)が適切という判断となった。


リフレドライショットの吹付施工状況②


 この材料は乾式吹付工実施後3時間程度で冠水しても「材料のしまりが早く、完全に硬化していなくても、海水を通さず、冠水しても削られない特性があり、実際に青森港の桟橋などでも施工実績がある」(住友大阪セメント)ことから乾式PCMが採用された。

 施工はノズルで吹き付ける。リバウンドロスを防ぐため、吹付面との距離は700~1000mm程度離し、さらに基本的に吹付面と直角に吹きつけることが重要である。ノズル重量は4kg程度と軽く、さらに乾式圧送であるため、反動もほとんどない。本現場では、床版裏の150mmの厚付けを施工したが1日5時間の施工で15m2程度を施工した(前施工の吸水防止材塗布~吹付施工までに限る)。


リバウンドロスを防ぐため、吹付面との距離は700~1000mm程度離し、
さらに基本的に吹付面と直角に吹きつけることが重要


 リバウンドロスは2~3割程度。ただし、吹付施工によるロスは1割もないということで、ロスの大部分は「施工後の表面を整える時に生じる」(住友大阪セメント)。現場によっては(本現場もそのように感じるが)、通常人が通らず、見えない箇所については、多少凹凸で不格好な表面であっても、性能的にはかぶりが厚くなる状態になるため、無理して落とす必要はないように感じた。もし、そうした観点に立てば、リバウンドロス率は低い値となり、施工効率も上がるであろう。


かなりの厚付け状況であることが分かる


 リフレドライショットを用いる2つ目の利点は圧送距離の長さである。一般に湿式吹付工は、施工プラントから施工ヤードまでの距離が50m程度しか稼げない。しかし、本現場は市民憩いの場であるマリンパーク川原石に接しており、施工プラントから施工ヤードへの300m程度までの長距離圧送ができるため、施工プラントの確保ができ、周辺住民への影響が最も少なくなると言った周辺環境への配慮も含め、効率的な施工を行うことができた。


施工プラントから施工ヤードへの300m程度までの長距離圧送ができる


 吹付施工は基点のプラント側に1~2人、ノズル工1人、左官工1人、ホースなどの盛替えに2人と全部で6人程度の人工を必要としていた。

 次いで、ひび割れが発生しているものの面的に劣化していない箇所は、Uカット処理を行い、無機系材料であるデーロスジャパンの靭性モルタルTYPE-2にてひび割れ充填工を実施した。
断面修復工、ひび割れ充填工完了後は、塩分や水の浸透を防ぐため、表面処理を行うため機械式のスピンハンドルタイプのWJで表面処理を行い、無機系封孔材「パーミエイト」を表面に塗布し含浸・被覆させることにより、補修工事全体の塩害対策を行った。


パーミエイトの塗布状況


 設計は荒谷建設コンサルタント、施工は元請がくれ海陸、一次協力会社が芳信建設、二次協力会社(吹付施工)が丸栄コンクリート工業。呉市では今後も同桟橋について、塩害対策を伴う補修を進めていく方針だ。

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