橋梁等に関する新技術デモンストレーション体験会 2.0
概要動画Overview Video
大阪府道路メンテナンス会議は2025年10月16日、大阪市の豊里大橋高架橋下において、橋梁等の点検に関する「新技術デモンストレーション体験会2.0」を開催。府内すべての道路管理者をはじめ、大学生・専門学校生・高校生など土木工学を学ぶ学生、建設コンサルタントを対象に、新技術を活用した橋梁・舗装・路面下空洞などの点検手法を実演形式で紹介した。会場には、点検支援技術性能カタログ等に掲載されている企業26社が出展し、最新のドローン点検や水中ドローン、舗装・空洞調査、コンクリート診断、鋼材点検、デジタル支援技術など、多彩な点検技術が披露された。

点検技術の現場適合性をどう見るか
屋外での開催の理由とは
大阪府道路メンテナンス会議は、大阪市内の橋梁高架下を会場に、「橋梁等に関する新技術デモンストレーション体験会 2.0」を開催した。橋梁、舗装、路面下空洞、水中構造物などを対象とした点検・診断技術を、実際の構造物と環境条件のもとで体験できる屋外型の技術体験会である。

出展企業は26社。事前登録者は228名にのぼり、ドローン、水中ロボット、非破壊検査、AI解析、帳票のデジタル化など、点検業務の現場に直結する技術が一堂に会した。室内展示ではなく、あえて実橋梁・実河川を会場とした点に、本体験会の思想が端的に表れている。
本体験会の企画・運営を担ったのは、辻脇 崇氏(国土交通省 近畿地方整備局 大阪国道事務所 総括保全対策官、左写真)である。辻脇氏は、道路メンテナンスを取り巻く現状について、「人手不足、予算不足、点検費用の高騰、技術力の継承といった課題が同時に進行している」と語る。橋梁点検は5年に1回の定期点検がすでに三巡目に入っており、点検データそのものは一定程度蓄積されてきた。一方で、構造物の老朽化は確実に進行している。近年は、道路陥没や水道管破裂による道路冠水、大規模な内水氾濫など、道路下空間を含むインフラトラブルも各地で顕在化している。気候変動に伴う災害の激甚化も重なり、従来と同じやり方を続けるだけでは、維持管理が立ち行かなくなりつつある。「三巡目に入ったということは、単に点検を繰り返す段階から、蓄積したデータを前提に次のやり方を考える段階に来ている」と辻脇氏は話す。
本体験会は昨年度に続き、今年で2回目の開催となる。大阪府道路メンテナンス会議では、これまでも会議体の中で点検や維持管理の課題について議論を重ねてきたが、「議論するだけでは現場は変わらない」という問題意識があったという。そのため、あえて屋内展示ではなく、橋梁高架下や河川といった実際のフィールドを会場に選んだ。点検技術は、実際に構造物に当ててみて初めて分かることが多い。室内で説明を聞くだけでは、その技術が現場で使えるかどうかまでは見えてこない。本体験会は、そうした現場感覚を共有することを目的に、あえて屋外・実構造物を会場としている。辻脇氏は、「使えるかどうかを、その場で確かめてもらいたかった」と語る。また、本体験会では、競合する技術や異なるアプローチを同一テーマの中で並べる構成が採られている。「技術の優劣を決める場ではなく、組み合わせや使いどころを考える場にしたい」という考えからで、出展者同士のマッチングや、新たな連携が生まれることも意図している。
辻脇氏が繰り返し強調したのが、「点検・診断・設計・工事」を一連のサイクルとして捉える視点である。従来の点検では、人が目視し、文章で状態を記述する定性的な情報が中心だった。そのため、点検者の経験や判断によるばらつきが生じやすく、点検結果が設計や工事段階で十分に活用されないケースも少なくない。
結果として、工事段階で改めて詳細調査が必要となり、橋梁工事では吊り足場の再設置など仮設費が増大するケースもある。「工事に入ってから『思ったより劣化している』となると、もう一度仮設をやり直さなければならない。その無駄は、できるだけ最初の点検段階で減らしたい」と辻脇氏は語る。点検段階で定量的なデータを取得し、それを設計・工事までシームレスにつなげることができれば、メンテナンスサイクル全体の効率は大きく変わる。そのための技術を見極める場として、この体験会が位置付けられている。
点検から設計・工事までを見据えた技術が7つのテーマブースに
技術概要一覧
本体験会では、点検から設計・工事までを見据えた技術を、7つのテーマブースに分けて紹介した。
飛べ!橋梁ドローン最前線

出展企業:デルタ電子、旭テクノロジー、KDDIスマートドローン、Accuver
AI・LiDAR・自律飛行技術を搭載したドローンにより、橋梁桁下や狭隘部、暗所を効率的に点検。撮影から解析、報告書作成までを一元化し、省力化と安全性向上を図る。
見えない内部を暴く! 非破壊診断

出展企業:西日本高速道路エンジニアリング関西、リック、計測技術サービス、オンガエンジニアリング、テクニカル・シンク
電磁波レーダ、弾性波、赤外線により、コンクリート内部の浮き・剥離・空洞を非破壊で検出。打音点検を補完・代替する定量的診断技術。
AIと簡易ツールで変わる点検

出展企業:キャノン・東設土木、富士フイルム、TTES、ルミカ、テクノハイウェイ
AI画像解析やスマートフォン計測、昇降ポールを活用し、ひび割れ等を自動検出。誰でも扱える点検DXとして、標準化と省力化に寄与。
未来につなぐ舗装メンテナンス

出展企業:ジオ・サーチ、アルファ・プロダクト、ニチレキ
地中レーダや超音波で路面下空洞や床版損傷を検出。AI解析と組み合わせ、陥没予防と補修計画の高度化を図る。
水中インフラを可視化

出展企業:FullDepth、福山コンサルタント
水中ドローンや橋脚の洗掘遠隔監視により、橋梁基礎部を可視化。潜水作業を代替し、常時監視も可能とする。
都市を守る鋼材モニタリング

出展企業:中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京、川金コアテック、セイコーウェーブ
自走式ロボット、3D計測、光学振動解析を組み合わせ、ケーブルや支承など鋼材の腐食や変位を数値化。交通規制を抑えた効率的な点検を実現。
点検後の業務を効率化

出展企業:イクシス、エージェンシーソフト、共和電業、ベイシスコンサルティング
AI解析や3Dスキャン、光ファイバー等により、支承などの微細変位の計測や帳票の自動作成、3Dモデル化など内業を含めた業務全体のDXを支援する。
点検を起点に、設計・工事までを見据えた次のメンテナンスサイクルを考える
産官学が同じフィールドで課題と技術を共有できた貴重な機会
大阪府道路メンテナンス会議では、今後も本体験会を継続し、点検技術の進化だけでなく、点検後の設計・工事までを見据えたデータ活用のあり方を探っていく考えだ。閉会にあたり、大阪市建設局道路河川部の石井調整課長は、「産官学が同じフィールドで課題と技術を共有できた貴重な機会だった」と総括した。点検技術を単体で評価するのではなく、実構造物を前に議論し、相互に知見を持ち寄る場としての意義が改めて示された形だ。 「点検をやること自体が目的ではない。その先につなげて、全体をどう効率化するかが重要だ」と辻脇氏は語る。本体験会は、点検を起点に、設計・工事までを見据えた次のメンテナンスサイクルを考える場として、確実に次の段階へと進みつつある。

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