J-ティフコム施工協会 昨年11月に東京で高強度繊維補強材料ワークショップ 2025in 東京を開催 

J-ティフコム施工協会 昨年11月に東京で高強度繊維補強材料ワークショップ 2025in 東京を開催 
2026.01.29

J-ティフコムの命名者であるオイゲン・ブリュービラー氏が来日

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 J-ティフコム施工協会(代表理事:合田裕一氏)は、昨年11月11日に東京で高強度繊維補強材料ワークショップ 2025in 東京を開催した。共催は一般財団法人災害科学研究所およびJ-ティフコム技術研究会。本ワークショップは、同協会が発足10 年目を迎えること、土木学会から「高強度繊維補強セメント系複合材料の設計・施工指針(案)」が発刊され、高強度繊維補強材料への関心が高まっていること、さらに、J-ティフコムの命名者であるオイゲン・ブリュービラー氏(スイス,ローザンヌ工科大学名誉教授)が来日する機会を捉え、開催したものである。(井手迫瑞樹)

超緻密高強度繊維補強コンクリート『J-THIFCOM』 超緻密高強度繊維補強コンクリート『J-THIFCOM』 never-ending challenge

合田代表理事 優れた技術で財政難と老朽化に苦しむインフラの維持管理に少しでも貢献したい

 開催に当たり、合田代表理事は次のように挨拶した。

 「2011年にブリュービラー先生のご指導のもと、この技術を導入いたしまして早14年が経過しました。昨日北海道の現場で2014年に施工した現場を調査して参りました。雨により路面に水溜りができている状態でしたが、床版下面に潜り込んで見ますと、ドライな状態が続いており、良好な状態を維持できていることを確認し、改めて非常に優秀な技術に出会えたことに感謝した次第です。この優れた技術を財政難と老朽化に苦しむインフラの維持管理に少しでも貢献できればと考えております」

 「皆様の関心の高いテーマについて当技術の生みの親であるブリュービラー先生、前川宏一先生(東京大学名誉教授)、松本高志先生(北海道大学教授)、土木研究所の石田雅博・構造物メンテナンス研究センター 橋梁構造研究グループ長、東日本高速道路の平野勝彦・技術本部 技術・環境部 構造技術課 課長代理の皆様から最近の話題をご提供いただき、知識や経験を共有していただく貴重な機会となればと考えております」

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平野氏 遮水性に優れたUFCを用いたプレキャストPC床版について語る

UFCを床版表面に重ね打ち 工程短縮のネックとなる床版防水工を省略

 ワークショップはまず、平野氏が「防水性能を有するプレキャストPC床版の製造及び施工」に関する技術公募について話した。


平野氏の講演の様子


 具体的には、NEXCO東日本が導入を進める遮水性に優れたUFCを用いたプレキャストPC床版について話した。その前提として、いかに床版の耐久性を向上させつつ、さらには通行規制期間を最小化するか? が考慮すべき点とし、プレキャストPC床版パネルの表面には予めUFCを打ち重ねした状態(通常20mm~中間支点部などひび割れ発生強度以下に抑える必要がある箇所は最大50mm程度必要な箇所もある)で現場搬入し、さらに継ぎ手部分も常温硬化型のUFCで現場打ちすることで、工程短縮のネックとなる床版防水工を省略し、なおかつ高い耐久性を担保できる、さらには舗装修繕の際も床版防水工をそもそも行わないので、ライフサイクルコストを低減できるとした。


UFC活用により床版防水を不要に(NEXCO東日本資料より抜粋)

常温硬化型のUFCを採用、コンクリートがフレッシュな状態で打ち重ねる(同)


 プレキャストPC床版のUFC層は高温熱養生が不要な常温硬化型のUFCを用いることで、その下のコンクリートがフレッシュな状態で打ち重ね、その打ち重ねた状態で上層のUFC層も含めた状態で、プレストレスを導入することで、プレキャストPC床版継手相互の一体性を確保した。

 同社では既に東北自動車道 宮城白石川橋(上り)(橋長276.9m、有効幅員9.81m、鋼3径間連続非合成鈑桁橋2連)で適用している。床版製作に関しては、さらに品質を向上させるため、上面湛水養生して微細ひび割れ発生の抑制を図り、さらに蒸気養生を施した。


宮城白石川橋での活用事例


 対面通行規制は34日で完了し、規制日数を従来比約3日(約10%)短縮することができた。天候影響込みで更なる短縮の余地があると見込んでいる。

 技術公募・標準化の進捗についても、「防水性能を有するプレキャストPC床版の製造および施工」という公募名称で、基本的に現場防水不要・床版厚220mmを前提として、現場UFCによる一体防水、打継ぎ部の部分防水など広く提案を受け付けている、とした。令和4年10月に開始し、第三者評価を含む審査進行中であり、今後、性能合格技術はHPで公開し、設計施工基準・仕様書整備、現場設計に活用、施工者の技術提案を採用していく方針だ。

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石田氏 「短繊維補強コンクリートを用いた橋梁床版の補修技術の導入促進」

「短繊維補強コンクリートを用いた橋梁床版の耐久性向上に関する共同研究(R2-4)」について説明

 石田氏は「短繊維補強コンクリートを用いた橋梁床版の補修技術の導入促進」というテーマで講演した。

 具体的には、土木研究所と民間5者(大成建設、カナフレックス、J-ティフコム施工協会、エスイー、鹿島建設)で2020~22年度にかけて行った「短繊維補強コンクリートを用いた橋梁床版の耐久性向上に関する共同研究(R2-4)」について説明した。同研究は、①路面からの侵入水に対する配慮、共通試験、輪荷重走行試験、また、上面補修に対する試験をまとめたもの。


「短繊維補強コンクリートを用いた橋梁床版の耐久性向上に関する共同研究(R2-4)」を行った


 同研究と同時期には国土交通省道路局においても、新技術導入促進計画のもと、道路橋示方書の要求事項を踏まえ、繊維補強コンクリート床版で確認する事項をまとめた「道路橋の繊維補強コンクリート床版の性能確認マニュアル(案)」が作成された。


「報告書」と「マニュアル」


 内容は、補修後に同じ損傷を生じさせない、補修の際に既存の構造に影響を与えない、通行規制の時間を短くできるというニーズに応えると共に、要求性能の視点としては、交通荷重や水の影響を受けにくく高耐久性を有する床版、従来の床版より軽量な床版、従来の床版よりも安価に施工、維持管理が可能か、ということに対し、道路橋示方書に紐づけ、どういうようなことを確認すればよいかということを導入促進機関として一般財団法人土木研究センターが、担当してまとめたものである、と説明した。

 次いで、共同研究の各項目についても詳しく説明し、さらに成果として、既往事例で部分的上面補修の打継ぎ目や歩道境界で早期再劣化(収縮・防水不備・下地処理不足)がおきていることを指摘した上で、FRC上面補修前のはつりや表面処理については、微細ひび割れ抑制・健全な下地形成の観点から、ウォータージェットによるはつりが有効であること、歩車道境界や縁石周りの浸水経路を遮断する設計・施工が必須である点、FRCによる床版上面補修に際しては、部分的な断面修復ではなく、橋面全体を補修することが、結局再劣化リスクを減らすであろうこと、などが説明された。

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松本氏 「UHPFRC補修RC床版の輪荷重走行疲労解析」

2014年に実施工した(北海道・江別市)の床版上面補修も視察

 松本氏は、「UHPFRC補修RC床版の輪荷重走行疲労解析」について講演した。

 同会で扱っているJ-ティフコムを用いて解析を行ったもので、圧縮強度150MPa以上を有し、高い耐久性能を有しており、昭和39年示方書に基づいて供用されている、床版厚の薄い既設床版の上面に20mm厚のUHPFRC(J-ティフコム)を打設した結果、平成29年示方書と同等以上の耐力を確認した。


J-ティフコム技術研究会の成果


 さらに、2014年に実施工した(北海道・江別市)の床版上面補修も視察し、10年以上乾燥状態を維持し、降雨後に床版下面の漏水が無いことも確認できた。


(北海道・江別市)の床版上面補修も視察し、10年以上乾燥状態を維持し、降雨後に床版下面の漏水が無いことも確認


 今後の計画として、「走行荷重試験と解析手法の整備、UHPFRC上面補修床版の疲労設計に資する設計曲線の構築」などを図っていく方針を示した。

 

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前川氏 「コンクリート、岩盤、高強度繊維補強材料のせん断伝達特性」

高強度繊維補強材料 『バンド』を形成して、大きなエネルギーを吸収

 前川氏は、「コンクリート、岩盤、高強度繊維補強材料のせん断伝達特性」について講演した。

 コンクリートのせん断伝達というのは、構造の調整役のような役割を果たす。鉄筋量が異なる部分があっても、せん断伝達により荷重を適切に分散させることができるとし、さらに高強度繊維補強材料については、「ひび割れが開いてずれるという状況でも、ほぼ同じ応力を担い続けることができる特徴がある」と述べた。さらに「非常に大きな変形を受けたときには、コンクリートも骨材の集合体に戻っていく。しかし、高強度繊維補強材料では、繊維が入っているため、ある程度の損傷があっても『バンド』(一定の堆積を有する帯)を形成して、大きなエネルギーを吸収し、荷重を伝達し続けることができる」と特徴を述べた。伝達力は普通コンクリート同様にせん断帯の流れる方向で決まり、攪乱や異なる配筋に対しても内部調整力を有することを説明した。


各種せん断伝達測定


 また、JR新幹線高架橋橋台や地震時における断層破砕帯の変形とRC地下構造などを例に挙げ、礫化、砂利化したコンクリートのせん断伝達力は、拘束下で地盤材に漸近する(コンクリートを上回る)。RC構造の崩壊過程の追跡は、砂利化への移行を考慮して可能になり、断層破砕帯(礫化)と交差するRCダクトの損傷砂利化と以後の靭性評価を行える。 高温火災を受けたコンクリートは、結晶水の開放と内圧上昇で砂利化に向かい、強度と剛性の低下であっても、拘束効果を引き出す設計が可能であること――などを紹介した。


実橋での検証:東名高速:橋梁床版/桁の寿命予測

UHPCも、せん断帯の流れ方向で伝達せん断力が決まる

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ブリュービラー氏 スイスにおけるUHPFRCのRC床版への適用

4つのテーマに分けて講演

 ブリュービラー氏は、スイスにおけるUHPFRCのRC床版への適用について、以下の4つのテーマに分けて講演された。先ず、UHPFRCによるRC床版の補修・補強の概念、次にUHPFRC部材の引張疲労特性、さらに、最近のUHPFRC床版補修・補強の例、まとめと新UHPFRC床版への展望である。

 UHPFRCによるRC床版の補修・補強に関しては、基本的なUHPFRC層の役割として、a. 補修・補強材として、b. 構造耐力の向上(曲げ、せん断、疲労)、c. 防水層として、d. 表層の摩耗保護材として用いられている。さらに鉄筋入りUHPFRC層の場合には、より大きな構造耐力(曲げ・せん断・疲労)の向上が期待できる。特に、鉄筋入りUHPFRC補強床版では、終局せん断耐力の算定において、補強部のせん断耐力増加部分の寄与分が顕著であり、引張領域における負曲げ抵抗力が50%ほど増加するケースもある。

 桁長90m以下のRC床版では、伸縮目地にUHPFRC材を投入することで、目地部の防水性を高めるとともに、支間中央部の曲げモーメントを低減させる効果も期待できる(下図)。



伸縮目地へのUHPFRC材の投入


 さらに、UHPFRC層は、縁石部のRC部材を凍結防止剤・雨水から保護する役割も併せ持つ(下図)。


縁石部のUHPFRC保護層


 UHPFRC部材の引張疲労特性に関しては、最新の一軸引張試験の概要が示された。ここでは、「AE(アクスチックエミッション)測定とともに、DIC(デジタル画像修正)も採用された結果が示された(下図左)。こうしたUHPFRC部材の試験から、一般コンクリートに対して、高い引張特性が読み取れる(下図右)」ことを示した。


AEとDIC による引張試験の画像 / 
スイスUHPFRCの引張特性


 なお、スイスでは、現場でのUHPFRC層の引張試験が義務付けされている(下図)ことも語った。


スイス施工現場での引張試験による鋼ファイバーの分布例


 最近のUHPFRC補強工事としては、2024-2025年に40mm厚さのUHPFRCで全面増厚補強された、コンクリートアーチ橋、キラーホフ橋(橋長130m、1958年架設)の紹介があった。特徴として、橋端の両側伸縮目地は、UHPFRCで埋められ、半一体型ジョイントに変わっている(下図)。


キラーホフ橋(橋長130m)床版補修・補強


 また、ほぼ同じ時期、スイス国鉄石積みアーチ橋のトラフ上面・側面は、30mm厚のUHPFRC層で補強された(下図)。



スイス国鉄石積みアーチ橋のトラフ補修・補強(写真はブリュービラー先生撮影)


 最後に、まとめとして、これまでにUHPFRC層は、スイスのすべての橋梁タイプのRC床版をはじめ、一部の構成部材の補修・補強に適用されていることが報告された。さらに、今後の展望として、RC床版の自重軽減の観点から、軽量UHPFRC床版への取替えが検討されているとの報告がなされた。

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