SBLNジェル+ターマラストで塩害損傷したRC橋脚を延命化

SBLNジェル+ターマラストで塩害損傷したRC橋脚を延命化
2024.07.29

最大5kg/m3のNaCl含有コンクリート構造物でも5年間の防錆効果を期待

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NEXCO中日本
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 ショーボンド建設の亜硝酸リチウムゲル『SBLN ジェル』が、東名小牧西高架橋下り線で本採用されている。いずれも塩害によって劣化した橋脚の壁面を補修するためのもので、まず脆弱部コンクリートをはつり取り、1液1層塗り錆止め材『ターマラスト』で鉄筋を防錆処理したのち、SBLNジェルを塗布して亜硝酸リチウム成分により鉄筋周辺を防錆雰囲気化して延命するものである。(井手迫瑞樹)

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NEXCO中日本名古屋支社管内 橋梁の約35%は供用開始から40年以上が経過

変状の多くが掛け違い部に発生

  NEXCO中日本名古屋支社管内にある橋梁の約35%は供用開始から40年以上が経過している事も影響し、変状の多くが掛け違い部に発生していた。主な原因として凍結防止剤を含む雨水が伸縮装置から漏水したことで桁端部や橋台・橋脚が塩害を受けているものであった。


着手前の損傷状況(NEXCO中日本提供)


 そこで、塩害を受けた掛違い部の橋脚・橋台に対して維持修繕計画に基づいた抜本的な対策を講ずるまでの間、構造物の安全性を確保したうえで変状の進行を抑制する簡易的な対策として今回、開発されたものがSBLNジェルである。

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昨年は東名の高架橋下部工で20箇所程度施工

 SBLNジェルは、亜硝酸リチウム水溶液と、自然由来の増粘剤を適量混合し、ダレなどが生じないように粘性を付与したゲルタイプの防錆剤である。躯体表面にコテ、ヘラおよび刷毛などを用いて、塗布するだけで施工できる。塗布したSBLNジェルの防錆成分(亜硝酸リチウム)はコンクリート内部に浸透していき、1年でかぶり下50mmの位置にある鉄筋近傍を防錆雰囲気に変えることができる。同工法初の適用事例は、中央道において、4年前に試験施工を行った。本採用は明くる年から行われ、安八高架橋で1橋2脚施工、さらに今年冬にメンテ工事で東名の下部工において20か所程度で施工された。


SBLNジェル

当初は単径間のPCT桁をPC鋼棒で5径間単位に連結

床版防水は2011年に初めて設置

  今回施工した東名小牧西高架橋は1968年4月25日に供用した橋長794m、11連のPC5~6径間連続T桁橋である。建設時はプレテン単純T桁橋であるが、それを1995年にPC鋼棒で連結した。同橋は供用時に床版防水を施工しておらず、2011年度に初めてグレードⅠの施工を行った。そのため旧ジョイントの目地部などから伝う形で凍結防止剤の塩分を含んだ漏水が生じており、張り出し床版や地覆、橋脚部が広く塩害に冒されている。その対策のため、橋脚部においてはターマラスト+SBLNジェルを使用して補修するものだ。


 同補修によって、鉄筋近傍において最大5kg/m3程度の塩化物イオン量が存在する想定においても5年間の防錆効果が期待できる、としている。

4人1班体制で施工 2週間で5箇所程度を実施

コンクリート表面1m2あたり1kgの塗布量も1回で施工可能

 今回取材した下り線P15橋脚と下り線P32橋脚はいずれもジョイント部直下に位置する。今次の工事では、この2か所を含めて25か所で同様の補修を行う。場所によって補修面積に差はあるが、最大5m2に達する箇所もある。

 施工手順は、まずRCレーダーなどを用いて変状部位の鉄筋深さを確認し、コアドリルなどで試料を採取し、塩化物イオン量を測定、50mmの防錆可能領域に鉄筋があるかを確認し、適用可能と認められればSBLNジェルを塗布する。

 次にベビーチッパーで脆弱部をはつり、軽くケレンしたうえで、鉄筋露出部にターマラストを塗布する。塗布後48時間養生し、SBLNジェルを塗布する。目標塗布厚は1mm弱とした。その後すぐにジェルの表面に樹脂による被膜処理を行って完了となる。抜本的対策を行うまでの補修であるため、断面修復などは行わない。


たたき落とし状況



鉄筋ケレン状況

ターマラストの塗布状況


 施工は「はつりからターマラスト塗布、養生、SBLNジェル以降の工程合わせて、4人1班体制で実施しており、大体2週間で5か所程度施工している」(元請のセイトー)。


SBLN施工前のマスキング状況



SBLN塗布状況① ヘラや刷毛などを使って塗布している


 現場の施工状況を見ていると、SBLNジェルは粘度が高く、コンクリート表面1m2あたり1kgの塗布量でも1回の施工で塗り付けが可能であり、ダレも生じていなかった。一方で、塗布するのに結構力が必要な材料のようであったが、慣れれば概ねスムーズに施工ができていた。はつりおよびターマラスト+SBLNジェルの塗布は、損傷部+150mmほどの余裕をもって施工している。これは施工の確実性やマクロセル腐食の発生を抑制するためだ。SBLNジェルの施工確認は空缶検査に拠っている。


SBLNジェル塗布完了状況


 SBLNジェル塗布後の樹脂による被膜処理は現状では暫定的な対応のため、正式な製品は今後順次ラインアップしていくとのこと。


樹脂による被膜処理の施工状況

全工程の施工完了状況


 SBLNの1kg当たりの設計単価は23,000円。1缶当たりの量は15kg。1m2当たり使用量は1kgであることから、1缶あたり15m2施工可能である。

ISパネルで下面から補強

 同現場では、さらに桁間の間詰め部をWJではつり、損傷個所を断面修復したうえでISパネル(アンダーデッキパネル工法)を用いて補強する工事も進めている。塩害の影響と建設当初の施工不良により、グラウト充填が不足している横締めPC鋼材の変状が少なからず見つかっており、ISパネルを用いて床版を下面から補強することで対応していくものだ。


端部の損傷状況 / WJ施工状況


 元請はセイトー。一次下請はボンドエンジニアリング、二次下請は横浜システック。

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