静岡県 新塩新田橋上部工でMRや4D架設シミュレーションを活用

静岡県 新塩新田橋上部工でMRや4D架設シミュレーションを活用
2024.08.28

髙田機工 上部に高圧電線、線形はダブルRという厳しい現場

Tag
DX 自治体 鋼橋
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概要動画Overview Video

 静岡県が国道150号線の磐田市内仿僧川渡河部に建設を進めている新塩新田橋は上部工の送り出し架設を行っている。同橋は国道150号バイパスの延伸の一般として建設されている約100mの鋼橋で、上部に77,000Vの高圧電線が通っており、斜角も45°と非常に建設条件が厳しい現場である。また、河川内には出水期にはヤードを設けることが許されておらず、架設設備の設置は、渇水期内に施工しなくてはいけない。小規模な橋梁ながらそうした様々な課題に対応すべく、MRや4D架設シミュレーションを用いて施工の効率化や安全性の向上を図っている現場を取材した。(井手迫瑞樹)

 

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線形はダブルR ヤードもそれに応じた形状

桁上から16mの箇所に高圧電線 クレーンによる架設は断念して送出しに

 同橋は磐田駅から太平洋に向かって、南に約5㎞走った場所にある橋長約97mの2径間連続非合成箱桁(鋼重約325t)である。斜角は45°と厳しく、P1橋脚も河川の形状と同じく斜め配置となっている。P1橋脚のほぼ上には77,000Vに達する高圧電線が架かっている。高圧電線は計画している桁上から16mの箇所にあり、電線との離隔は最低4m取らなくてはいけないため、12mしかクリアランスがなく、クレーンによる架設は断念せざるを得なかった。


P1ほぼ直上を高圧電線が通過している

実際の現場状況


 線形も特殊で、両岸のアプローチ形状に束縛される関係から平面線形が2,600R、縦断線形が4,000RというダブルRとなっており、ヤードもその形状となっていたことから、従来方法ではヤードを工事のために拡幅しなければならず、また、施工時もそのダブルRを確保するため、従来手法では送り出し後の調整で大きな手間を要する可能性があった。


ダブルR

斜角も非常に厳しい

ヤードの整備状況(A2側)

実際の施工ヤード(A1側)

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デジタルツインによる同期的な調整

情報を視覚的に共有することで、創意工夫が生まれた

 それらの課題を合理化、省力化すべく取り組んだのがMR(複合現実)と4D架設シミュレーションの導入による事前、あるいはデジタルツインによる同期的な調整である。MRを導入することにより、「作業前に作業員に対して作業手順を周知徹底することができ、特に若く経験が少ない作業員に対しては非常に有効だった。さらに情報を視覚的に共有することで、創意工夫が生まれた」(髙田機工)。



A1側のMR(上は投影状況、下左がMR、右が実際の施工状況)

A2側のMR(上は投影状況、下左がMR、右が実際の施工状況)


 創意工夫の一例は桁上の、P1上に載荷している送り出し設備や降下設備の撤去用クレーンの配置時期である。同設備は、桁上に架設したクレーン(16tラフター)によって吊り上げ、後方台車で搬出するが、そのクレーンは当初送り出しを行う桁上に予め載せた形で配置する予定であった。それをMRを用いた検討により、桁架設後に桁上の覆工板上を自走させて配置することで、送り出し時の安全上のリスクを軽減することができた。


 4D架設シミュレーションは、「いわゆるデジタルツイン(現実の施工状況と、施工計画をデジタル上で時系列的に同期させる、同社は国道4号箱堤拡幅鋼上部工で使用)を用いることで、視覚的な情報を現場全体が共有するため無線機による連携を大きく減らすことができ、伝言ゲーム的な意思疎通の齟齬リスクを減らすことができている」(同社)。


デジタルツインにより視覚的な情報を現場全体が共有

 加えて、ダブルRというリスクについても、「MRやデジタルツインを用いることで、道路線形に沿った軌条設備や送り出し装置の配置を行うことができ、結果的に施工ヤードの拡幅を回避、施工後の調整の手間も大きく減らすことができた。さらに施工時は10mm単位で桁の位置を把握、設計値と施工状況の違いをリアルタイムでデジタルツインとして一元管理しながら施工することで、施工時のリスクを最小限化することができた」としている。

ジャッキダウン量は4.75m

フェールセーフを意識して、桁上に吊りピースを設ける

 さて、実際の施工である。P1橋脚上には送り出し設備と降下設備を設置しなくてならない。橋台パラペット上からの軌条設備による送り出しであり、降下量は大きく4.75mに達する。そのため、設備の規模は写真(下2枚参照)のように大きくなる。



 そうした仮設設備の設置は全て渇水期において河川内に盛土によるヤードを設置し、クレーンによって施工した。

 次いで送り出しを行う。推進装置は20tのクレビスジャッキをG1桁とG2桁後方に1台ずつ配置し、P1条にはエンドレスローラー、A1、A2乗には送り装置を配置し、スムーズな施工ができるようにした。逸走を防止するためにエンドレスローラー自体にはガイド装置、送り出し装置には両外側にガイドを付けている。盛替えを考慮すると1m/8~10分ほどの速度で架設した。1日当たり20m弱ずつ送り出し、手延べ桁と合わせて130m弱の送り出しを7日間で完了させた。


送出し状況のタイムラプス(600倍速、髙田機工提供)

架設計画図(抜粋)

桁下での送出し作業状況


 今後は4.75mの高さのジャッキダウンを行っていく。ジャッキダウン時の荷重はほとんどP1に集中する架設構造であるため、まずはP1、次いで両端部を降下させていく手順をとる。1回あたりの降下量は150mmであり、約1か月かけて慎重に施工していく予定だ。降下に際しては、「フェールセーフを意識して、桁上に吊りピースを設け、桁を下から支えるだけではなく、上からも(斜張橋のように)吊り支持できるようにし、万が一の際にも桁が落下しないよう万全の対策を施している」(髙田機工)。

 ジャッキダウンは9月上旬から開始予定で、10月上旬には完了する見込み。次いで現場打ち床版やアルミ製壁高欄の設置を行い、舗装工に受け渡していく予定だ。

 上部工製作・架設は髙田機工。MR/デジタルツインの技術協力は千代田測器。一次下請は木村建設、オーテック、清水工業、オックスジャッキ、内山建材など。支承は川金コアテック。

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