2024年春のNEXCO中日本金沢支社大規模更新シリーズ① 北陸自動車道今庄IC~武生IC間 阿久和川橋(上り線)の床版打替

2024年春のNEXCO中日本金沢支社大規模更新シリーズ① 北陸自動車道今庄IC~武生IC間 阿久和川橋(上り線)の床版打替
2024.10.08

斜角57°の厳しい条件 桁フランジ上面はWJではつる

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NEXCO中日本 PC 大規模更新 床版
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 NEXCO中日本金沢支社では、今春、北陸自動車道の今庄IC~武生IC間にかかる阿久和川橋(上り線)の床版打替工事を行った。同橋は1977 年に昭和44年道示に基づいて建設、供用された橋長25m(有効幅員10.5m)の単純PC合成I桁橋である。同橋は4主桁であり、桁間の他、桁フランジ上面も190mmほどはつる必要があり、その後も現場打ち施工で、床版を再構築している。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)


舗装撤去前の阿久和川橋上り線(NEXCO中日本提供、以下注釈なきは同)

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施工時に被り厚が薄かった状態も考えられる

施工時に被り厚が薄かった状態も考えられる

舗装にはポットホールが生じ、床版下面には浮き・剥離が発生

 同橋は1977年に供用され、47年が経過している。1日交通台数は26,886台で、大型車混入率は22.6%、凍結防止剤の累計散布量は約970t/kmに達する。既設床版の厚さは標準で210mm、舗装にはポットホールが生じ、床版下面には浮き・剥離が発生していた。さらに舗装を剥いでみると、床版上面の一部に被りが薄い箇所があり、鉄筋露出が生じていた。これは数次の舗装切削によるコンクリート上面の過剰切削も考えられるが、そもそも施工時に被り厚が薄かった状態も考えられる、としている。露出した鉄筋は一部腐食、甚だしきは切削によって削り取られている個所もあった。床版防水は2004年度にGⅠ相当の防水工を施工していたようだ。


床版上面の鉄筋露出状況


 4主桁で桁間隔は2.8m。斜角は57.42°ときつい。縦横断勾配は縦断が0.9~1.1%、横断勾配が2%(既設、更新後は2.5%)とそれほどではない状況である。PC合成桁であるが活荷重合成桁のため施工中の補強は必要ない。


斜角がきつい線形である

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桁直上コンクリートはつりは全てWJで施工

設床版上面をWJの機械の足場に

 さて施工である。床版は全面撤去する。床版との剛結に必要な主桁と横桁上にあるずれ止め筋までははつり出す必要がある。ずれ止め筋を切断することはできないため、桁直上コンクリートはつりは全てWJで施工した。当初は全断面を撤去する予定であったが、今次の約70日間の規制期間では難しいため、床版上面のみの撤去、再打設とした。


床版撤去図


 施工手順としては、まず、舗装を撤去したのち、既設床版を撤去する。既設床版の撤去は、220tATCをA2側に配置し、最大7.5tのブロック(主桁×横桁に囲まれた部分)を吊りながらロードカッターで切断して撤去した。高欄部はガードレールのため、先行撤去したうえで、張り出し部もロードカッターで切断し、吊り撤去している。


中床版部の切断 / 張出部の切断


 撤去手順は両張出し床版⇒縦横桁上面⇒主桁間の床版とした。縦桁と横桁の上フランジ上面は床版部全厚(190mm)と上フランジ上面(60mm)を機械式WJで全厚はつり取った。上フランジ上面を主桁間の床版撤去の前にはつるのは、「既設床版上面をWJの機械の足場にするため」(元請の前田建設工業)である。



WJ施工状況


 WJを施工するに当たっては、濁水を外に出さないための養生として、吊り足場の中にまず溶着式の遮水シートを貼り、その上に防水シートを設置する二重防水によって濁水やガラの漏れを防いだ。濁水やガラはバキュームホースで桁下にある浄化処理槽に回収し、処理している。


WJ施工時の遮水シート(左)および防水シート(右)


 WJは基本的には機械式だが、ジョイント部近傍のみはハンドガンを用いている。WJの施工にあたってはキャリブレーション時から鉄板を貼って打ち抜きやはつり過ぎを防止していた。

横締めPC鋼材 両端部については、埋め込み式のデッドアンカーを配置

床版全面285㎡を一括打設

 中央部の床版を撤去後は既存床版のハンチ鉄筋と桁横断方向の配筋を溶断・撤去し、新たに設置するハンチ筋の穴明けを行い、ハンチ筋を挿し込んでいく。また、底面に型枠を設置し、鉄筋を組み、横締PC鋼材を配置していく。


中央部の床版撤去状況(途中)



ハンチ筋の溶断 / 溶断後の状況(井手迫瑞樹撮影)

新たなハンチ筋挿入のための削孔 / 削孔後の状況 / ハンチ筋の挿入状況(左2枚は井手迫瑞樹撮影)



床版撤去状況

床版撤去完了状況(井手迫瑞樹撮影)

床版配筋図および横締めPC鋼材配置図

床版型枠配置状況および鉄筋配置状況

PC鋼材配置状況


 なお斜角がきついため、両端部については、埋め込み式のデッドアンカーを配置した。すなわち斜角ではあるが、橋軸直角方向は直橋のような形で、PC鋼材を配置し、無理のない施工になるよう配慮している。PC鋼材は600mmピッチで配置しており、全部で49本使用した。なお、床版の長期耐久性向上を図るため、鉄筋は(高覧部も含め)全てエポキシ樹脂塗装鉄筋(安治川鉄工製)を採用、PC鋼材はプレグラウトタイプ(住友電気工業製)とした。


両端部については、埋め込み式のデッドアンカーを配置


 その後、スランプ12cm、W/C43%の早強コンクリートを使用して桁上フランジ及び床版全面285m2を一括打設した。打設厚は桁直上が床版部+上フランジ直上のはつり部250mm、ハンチ部は最大350mm厚で、桁間の床版部は210mm厚としている。


床版打設状況①

ベストフロアーCN工法を採用

打設後養生期間は9日、給水養生用水搬送シートも設置

 6月下旬から7月上旬にかけて施工するため、暑中コンクリートなる。そのため事前に試験練りを実施したうえで混和材の量を調節したうえで実施工に臨んだ。施工中も適切な時間、距離、頻度でバイブレーションをかけ、しっかりと締め固めるなどコンクリート品質には非常に気を使っている。


床版打設状況②


 さらに、打設コンクリート表層の耐久性を高めるため、ベストフロアーCN工法を採用し、真空脱水を実施している。打設時に真空マットを敷き、負圧を発生させて脱水をかけ、表面の余剰水を回収する技術である。その後の養生期間は、後施工の防水工もあるが、9日の養生期間を取った。その際もスリーエムの給水養生用水搬送シートを用いて、表層品質の向上を図っている。床版下面にも別途養生材を塗布している。


ベストフロアーCN工法 / 給水養生用水搬送シート / 下面には養生材を塗布



左から壁高欄の型枠、配筋、打設工


 その後、壁高欄の現場打ち、高性能床版防水(グレードⅡ、レジテクトGS―T工法)工、ジョイント部の施工を行った。ジョイント部は土工部と橋梁の舗装を連続化し、走行性・止水性・耐久性をアップさせられるよう、RC連結ジョイントを採用している。


RC連結ジョイントの施工

床版上面の研掃(ショットブラスト)および床版防水工



舗装の基層および表層の施工


 さらに舗装基層、舗装表層(高機能舗装)を施工し、5月17日~7月26日の71日間で無事、同橋の大規模更新を完成させた。施工スケジュールとしては舗装撤去(1 日)⇒床版撤去(張出部コア・カッター7日、WJ14 日、中床版コア・カッター8 日、桁端部はつり11 日)⇒鉄筋溶断処理、アンカー孔明け、ハンチ筋再設置(9 日)⇒床版底面型枠設置(15 日)⇒鉄筋およびPC 鋼材配置(7 日)⇒床版打設(1 日)⇒養生(散水9 日+養生材塗布)⇒PC 緊張(1 日)⇒壁高欄型枠、鉄筋設置(5 日)⇒同打設(1日)⇒同養生(散水2 日+養生剤塗布)⇒床版防水工(3 日)⇒舗装基層(1 日)⇒舗装表層(1 日)⇒そのほかライン引きなどアクセサリー工(1 日)となっている。

 同現場では元請の前田建設工業が10~11人、施工にあたる技能者を最大で25人配置し、施工にあたっていた。

 元請は前田建設工業。一次下請は東海カッター興業(床版撤去工・WJ)、前田道路(防水および舗装工)、光栄(既設床版撤去工)、奥武建設工業(足場工)、北梅組(躯体工)。


完成状況

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