首都高など5社 防錆処理を施した新たな高力ボルトを開発

首都高など5社 防錆処理を施した新たな高力ボルトを開発
2024.10.28

安価でフレキシブルに生産 高力ボルトで工期が左右される状況を解消

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塗替え 鋼橋 首都高速道路
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 首都高速道路と、日本エンジニアリング、日亜鋼業、日本ラスパート、光海陸産業は共同で防錆処理を施した新たな高力ボルト(「防錆処理サントルクボルト」)の開発に成功し、実適用を開始した。既存高力ボルト上に薄膜の焼付塗装により防錆処理を施す「DISGO高耐食クロムフリーコーティング」(DISGO 処理)という独自の防食技術を施したことが特徴である。同ボルトは防錆処理高力ボルト用の加工がほとんどなく、通常の高力ボルトを日本ラスパートが認定する各地の防錆処理工場で焼付塗装するだけでよいため、安価でフレキシブルに生産できる。首都高速道路ではメンテナンス工事(首都高メンテナンス東東京、同西東京、同神奈川)の3社だけでも近年で2万本(約10t)/年のボルトを使用しており、まずは同分野にタイムリーに用いるための生産対応を行っていく。また、大規模更新や新設案件にも紹介していく方針だ。一方、首都高以外の各社は、他発注機関にも積極的に採用を働きかけていく。(井手迫瑞樹)

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ケレンなどの手間のかかる処理を必要とせずそのまま水性塗装が可能に

工期計画がボルトの納期で左右されてしまう事態が生じていた

ケレンなどの手間のかかる処理を必要とせずそのまま水性塗装が可能に

 従来の高力ボルトは、無塗装のまま現場に運びこみ、添接後に塗装を施していたが、その際に油膜処理をしておくことで、現場塗装までの発錆を防止していた。

 首都高速道路では過去の火災事故を受けて、平成28年度に塗装系をオール水性へ変更したが、油膜処理した高力ボルトは、そのままでは水性塗料が重ね塗りできず、ケレンなどの処理を施すひと手間が必要であったことから、平成31年度の改訂で漸く防錆高力ボルトを使うことを義務づけ、オール水性へ転換した。既存の防錆高力ボルトは下地塗装と、リン酸塩+プライマー処理をする2タイプがあるが、防錆高力ボルトの需要が低いことや防錆処理ラインを必要とすることから、受注生産でコストが高く、納期も半年から1年程度を要してしまう場合もあり、「工程計画がボルトの納期で左右されてしまう」(首都高速道路)事態が生じていた。

 そこで、開発したのが防錆処理サントルクボルトである。同製品のDISGO処理は下塗りに犠牲防食作用のあるベースコートを焼付け、さらに亜鉛アルミエポキシ複合焼付皮膜を施すもの。鉛やクロムなどの有害な物質は入っておらず、それでいて防食性を確認する塩水噴霧試験においても首都高で既定する100時間どころか2,000時間経過しても発錆等の不具合は確認されなかった。焼付処理時の高温によるボルト強度や軸力低下などの変状もなかった。


耐塩水噴霧性試験結果

アドヒージョン試験結果

軸力の温度依存性 / 機械式性質確認結果

リラクセーション試験結果


 次工程の現場での水性塗料の塗布もケレンなどの手間のかかる処理を必要とせず、そのまま塗装できる。生産にあたってもボルト工場内に別ラインを設ける必要はなく、製作した高力ボルトをDISGO処理の認定工場で焼付処理するため、新たな設備投資の必要もなく、フレキシブルに生産できる。

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平滑部と同様の膜厚も検討

 同社では、添接部の水性塗料は基本的に平滑部に1層増塗りし膜厚を厚くしているが、DISGO処理を施した防食は性能が高いため、通常の平滑部と同じ膜厚にすることも検討しており、この10月末から沖縄県宮古島市の試験場で膜厚などを変えた複数パターンの供試体を用いて実物暴露試験を開始している(下写真)


 首都高だけでメンテ工事で年平均約10tの需要があり、荒川横断橋などのリニューアル工事や日本橋地下化、新大宮上尾道路事業などの橋梁新設工事でも需要が見込まれる。そうした箇所でも積極的な適用を図るほか、他発注機関の鋼橋案件でも積極的に営業していく。

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