NEXCO西日本、NEXCO西日本コンとオリ白 dVIP桁を共同開発

NEXCO西日本、NEXCO西日本コンとオリ白 dVIP桁を共同開発
2024.10.16

点検、補修がしやすく、桁高もRCホロー並みのプレテンションスラブ

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NEXCO西日本 大規模更新 架替
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 NEXCO西日本、NEXCO西日本コンサルタンツとオリエンタル白石は、RC中空床版橋(RCホロー)の大規模更新事業や、4車線化事業分野向けに新たな断面形状のプレテンション桁であるdVIP(Visible Internal,Visual Inspectionable Precast concrete slab girder)桁を開発した。dVIP桁は中空床版橋の長所である軽量化と桁高の抑制を活かしつつ、中空内部の点検しやすさを追求するため、下フランジ部に120mmのスリットを設けて開断面にしていることが特徴である(図①、写真①)。支点部はNEXCO西日本とオリエンタル白石が共同開発したSCBR工法の構造を援用して横桁を配置し、支承数を削減している。スリットはただ開けているだけでなく下フランジ角45°の面取りを行うことで目視点検や打音点検を可能にしていることも特徴である(写真②、写真③)。既にオリエンタル白石の福岡工場内で桁の試験製作を行い、中空部分の脱枠方法も確認済みで(写真④)、今後の四車線化や桁更新においてdVIP桁を選択肢としていく考えだ。(井手迫瑞樹)


図① JIS 推奨仕様桁とdVIP 桁の比較 / 写真① dVIP 桁の試作桁(支間15m)

写真② 目視点性の確認 / 写真③ 打音点検性の確認

写真④ 脱枠後の中空内部

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型枠の新規製作は内面型枠のみに限定

圧縮強度を上げ、かつPC鋼材をJIS桁仕様より2本程度増やすことで、JIS桁同様の性能を満足

 dVIP桁の外形はJIS桁に準拠しており、外型枠はJIS桁のものを活用できるため、型枠の新規製作は内面型枠のみに限定される。

 桁高や重量は従来の桁とほぼ同程度に抑制できる。コンクリート圧縮強度は従来の50N/mm2ではなく、60~70N/mm2に上げているが、これは下部を開断面にしたことなどによる断面係数の低下により、ねじり剛性がJIS桁の10分の1程度まで低下することに対応するもので、圧縮強度を上げ、かつPC鋼材をJIS桁仕様より2本程度増やすことで、JIS桁同様の性能を満足させされることを確認した。これによって、プレテンションホロー桁のスパン長12~24mに対して,JIS桁と同等の桁高に抑制することを可能にした(図②)。


図② JIS 推奨仕様桁とdVIP 桁の下縁側断面,PC 鋼材配置の比較


 損傷にもフレキシブルに対応可能だ。コンクリート橋の補修で用いるWJハンドガンの幅は約30mm、断面修復用の狭隘部用PCM吹付ガンの幅は65mmであり、いずれもスリット幅120mmのdVIP桁は対応可能である(図③)。


図③ 中空内部の補修方法(断面修復) / 図④ 中空内部への鳩の侵入性


一方で桁内に野鳥が巣をつくる懸念もあるが、例えば鳩の翼開帳幅は500~600mmであることから飛行姿勢では入り込むことはできず(図④)、リンなどによる腐食損傷も避けることができる。また、桁中央部にスリットを設けたことで、プレテンホロー桁で課題となる場合がある排水桝やスラブドレーンの配置の選択肢も増える(図⑤)。


図⑤ 橋面排水管の配置方法

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課題を解決できる新形式の桁として提案していく

 従来のRC中空床版橋は、中空部の変状確認や補修が困難であり、上面に断面修復や防水工をかけて補修しても寒暖差による結露により中空内部に水が溜まるケースが少なからず散見され、それが嵩じ、なおかつ該当する中空床版橋が海砂骨材や凍結防止剤による塩化物イオンが発錆限界値以上になっている場合やアルカリシリカ反応性骨材が使用されてしまった場合、「補修しているのに劣化する」というケースが出てしまうことが否めなかった。

 NEXCO西日本とオリエンタル白石は、そのような劣化したRC中空床版橋の架替え工法として、主桁にプレテンションホロー桁を使用し、支点部はプレキャスト横桁を用いることによる支承点数の削減と点検性の向上が図られるSCBR工法を開発し(写真⑤,写真⑥,写真⑦)、沖縄道の億首川橋などで採用している。


写真⑤ 従来のプレテンホロー桁の支承部の例(左) / 写真⑥ SCBR 工法での橋台支承部の例(中) /
写真⑦ SCBR 工法での中間支点支承部の例(右)


 さらに、プレテンションホロー桁はRC中空床版橋と同様に中空内部が点検できないという課題があることから、桁間の間詰め部に透視性のある埋設型枠を用い,かつ、中間横桁を省略したプレテンションT桁を開発し、中国道の福崎新高架橋(写真⑧,写真⑨)や阪和道の松島高架橋(半断面施工)などで施工している。しかしながら、プレテンションT桁はホロー桁に比べて桁高が高くなることや、横組工までの桁の転倒リスクが高いなどの短所があり、プレテンションホロー桁の桁高と施工時の安定性を維持し、かつ、中空内部の点検が可能な構造が求められた。


写真⑧ 床版下面が点検可能なプレT 桁の採用 / 写真⑨ 桁間詰め部の透過性埋設型枠と中間横桁の省略


 dVIP桁はそうした課題を解決できる新形式の桁であり、SCBR工法と同様にクレーン架設または架設桁架設による施工が可能であることから(写真⑩,写真⑪)、現場条件への適用性も高い。今後、RC中空床版橋の架替えおよびⅠ期線がRC中空床版橋である区間の4車線化に提案していく方針だ。


写真⑩ SCBR 工法のクレーン架設の事例(沖縄道 億首川橋) / 写真⑪ SCBR 工法の架設桁架設の事例(高知道 立川橋)

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