IIS、日建リース、信和 共同でフロア型システム足場『ラピッドフロア』を開発
概要動画Overview Video
IHIインフラシステム、日建リース工業および信和は、共同で、橋梁の大規模更新工事や大規模補修工事に適したフロア型システム足場『ラピッドフロア®』を開発した。①吊りチェーン間隔が縦横1.8mのため、足場内の作業スペースが広くとれ、作業効率、生産性向上につながる、②トラス構造のメインフレームと高強度チェーンを使用することにより、従来足場の約4倍の強度を実現、③メインフレームの接続構造を工夫することで、少人数で簡易かつ、安全に張り出し組立ができる、④床材に市販鋼製布枠(長さ1.829m×幅0.5m、重さ約15kg)を組み合わせることができ、鋼製布枠などの追加製作は必要なく経済性で優位――などの特徴を有している。
ラピッドフロアの設置イメージと概要図
㎡当たりの搭載可能重量は270kg、メインフレームの耐荷重は1.5t、高強度チェーンの吊り荷重は1t強
人力で可搬可能な軽量部材を用い、施工性を向上
㎡当たりの搭載可能重量は270kg、メインフレームの耐荷重は1.5t、高強度チェーンの吊り荷重は1t強
ラピッドフロアは、メインフレーム・継手金具・トラス間フレーム・鋼製布枠・高強度チェーンから構成されている(概要図参照)。メインフレームは橋梁補修工事の際の桁補強部材などの重量物の搭載に耐荷するトラスフレーム構造でありながら1部材18kgと人力で可搬可能な軽量部材を用いている。継手金具はこのメインフレーム端部ジョイントに差し込んで固定し、足場組立時には、組立て方向にメインフレームを回転張出しできる構造としている(写真及び動画参照)。トラス間フレームはメインフレームの上・下弦材に強固に固定できる横支材で、足場フレーム全体の剛性を高める機能を有する。これらで構成された梁に鋼製布枠を隙間なくフラットに敷設し、一般の吊りチェーンの4倍の強度を有する高強度チェーンを使って吊り固定していく。
鋼製布板は現在、一般的な足場業者が保有している市販布枠を用いることができるため追加コストが必要ない。メインフレームの長さもそれを意識して1.8mとしている。
メインフレームの耐荷重は1.5t(1.8m支間両端支点として中央載荷)、高強度チェーンの吊り荷重は1t強(コンドーテック製)としている。これはトラス橋やアーチ橋などの塗り替えや補強においては桁高が8~9mに達することもあり、くさび式足場を数層組み上げなければならない。それらが複数層乗っても耐えられるようにフレームとチェーンを高強度にしたものだ。また、㎡当たりの搭載可能重量は270kgであり、比較的な大きな撤去・架設用機材や補強部材も置くことができる。ラピッドフロア設置の際もフロアにレールなどを敷設することで、機材や資材を運ぶことが十分可能な搭載可能重量といえる。
吊りチェーン / メインフレーム
吊りチェーン上部 / 同下部
メインフレーム、トラス間フレーム、鋼製布枠など様々な部材が結合している / 足場上にはくさび式足場を数層組み上げることも
足場を組んだ後は、外側にサイドブラケットを設置し、手すりや幅木を設置し、養生シートを設置して完成となる。場所によっては養生シートの代わりに仮設防音パネルなどを配置して朝顔を構築でき、施工上の安全性や周辺環境に配慮していく。
1フレームラインに対し、2名程度で作業可能
鋼製布板であることから強度や耐久性もある
施工方法はまず、メインフレームとトラス間フレームで構成されたスタートフレーム上に鋼製布枠を敷設し組立て出発エリアを構築する。次いで出発エリア上の作業員(墜落制止用器具使用)がメインフレーム端部のジョイント部に次メインフレーム端部に継手金具を装着固定し、組立方向に次メインフレームを回転張り出しする。
継手金具の装着固定 / メインフレームの回転張出し
そして、次メインフレーム繰り出し後は、横支材を足場上から差し込み固定し、組立方向に前進するように手前から床材を敷設する。次フレームの床材を敷設し終えたら、先端に高強度チェーンを設置していく。この作業を繰り返していく。
鋼製布枠の設置 / トラス間フレームの設置
トラス間フレームの固定状況
1フレームラインに対し、2名程度で作業可能だ。接続用の継手金具も装着しやすく、トラス間フレーム固定用のネジの機械締めなども上から斜めに締付機械を入れることができるため、非常に早く施工できる。先行する吊り間隔2.5mのフロア式足場に比べると吊り間隔は密であるが、部材一つ一つが軽量で施工しやすく、足場も木板ではなく鋼製布板であることから強度や耐久性もあり、施工コストや設置後のライフサイクルコストを考慮すると、手早く施工でき、長期間設置していても板を張り替える必要のないラピッドフロアはコストパフォーマンスに優れている、としている。
実際、11月26日に実施した足場のみの組み立て実演では僅か4分弱で2フロアの構築を完了した(冒頭動画)。
4分弱で足場の設置を完了した
従来の床版取替えや橋梁補修工事の吊り足場は、単管パイプと足場板で構成されるパイプ吊り足場が一般的であったが、安全性、生産性向上のため床面をフラットに施工できるシステム足場の採用が増加している。大規模更新工事や橋梁耐震補強、橋梁補修工事などで使用する場合、足場上で床版取替え、補強部材等の重量物を取り扱うため、より高強度で作業スペースを広く確保できるシステム足場が求められていた。また、設置・撤去の工期を短縮するため、施工性も追求する必要があった。そのため、そうした現場での改良点をIHIインフラシステムが掬い上げて開発を主導し、高強度かつ安全性、施工性を向上させたフロア型システム足場「ラピッドフロア®」を日建リース工業、信和と共同で開発した。今後は現有7,000m2の保有足場面積を1年程度で20,000m2、3年程度で50,000m2まで増やし、橋梁の大規模更新や耐震補強などを行っている現場へ、リース展開していく方針だ。