土木研究所 RC床版用長寿命化支援AIシステムを公開

土木研究所 RC床版用長寿命化支援AIシステムを公開
2024.12.27

エキスパートシステムを用いて熟練技術者の暗黙知を反映

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 国立行政法人土木研究所は、RC床版の長寿命化を支援する AI システムを公開した。https://www.pwri.go.jp/caesar/activity/research/40-diagnosis-support-technology/ai-system.html。2018 年より、道路橋の診断を支援する AI システムの開発を官民共同研究で進めてきた成果物で、AIはディープラーニングではなく、診断の根拠を出力可能なエキスパートシステムにしたことが特徴である。そのエキスパートシステムAIには、形式知だけでなく、熟練技術者からのヒヤリングに基づいた暗黙知をふんだんに入力しており、診断の精度向上と論理的な説得力を有する診断結果が出ることで、維持管理の効率性と確実性を向上させることができる。RC床版を最初に公開するシステムにしたのは、「床版については補修、補強、取替などが各地で進められており、桁と舗装を結ぶ構造として重要性が高いことからいち早くシステムを公開することを決めた」(土木研究所)、ということだ。今後はRC、PC桁のAIシステムを公開する予定で、その後に鋼桁など鋼部材のAIシステムなども順次公開していく。(井手迫瑞樹)

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2025年2月5日14~15時には、橋梁診断支援 AI システム(RC 床版) オンライン説明会を開催

システム仕様手順は4ステップ

熟練技術者の暗黙知の思考パターンを辿ったエキスパートシステムAI

 橋の長寿命化を進めるためには、インフラに不具合が生じる前に適切な対策を行う「予防保全」が重要であるが。土木研究所では、橋梁の予防保全を支援するため、橋梁診断に関する専門家が持つ知識や思考方法をもとに、システムを開発した。対象橋梁の諸元情報や点検情報等を入力することで、RC 床版部材を対象に、診断結果とその理由、措置方針等を提示することができる。


RC床版の損傷メカニズム

実際の損傷例や補修例(井手迫瑞樹撮影)


 システムを使用する手順は、まず①橋梁情報、径間情報を登録し、②部材毎に点検・詳細調査で得られた情報を登録する。さらに③部材毎・損傷毎に損傷の進行状態を特定し、④部材毎に「損傷原因」、「進行度」、「措置方針(案)」を出力していく。


橋梁診断支援AIシステム(RC床版)のイメージ


 もちろん、AIであるので、熟練者のデータを多数入力していても、新たな知見には対応できない。そのため全てをAIに任せるのではなく、専門家=人の介在が必要になる。ただし、今後は人口減による基本的な人手不足に加え、熟練技術者も加速度的に減っていくことから、暗黙知が喪失していく可能性は高い。それを補い、さらに若手技術者を教育するためにも熟練技術者の暗黙知の思考パターンを辿ったエキスパートシステムAIを使用することで、技術力向上につなげていく―――という意図もありそうだ。


橋梁支援診断システム運用イメージ


 2025年2月5日14~15時には、橋梁診断支援 AI システム(RC 床版) オンライン説明会を開催する。参加申し込みは(https://forms.office.com/Pages/ResponsePage.aspx?id=4eB9HJl3eUCBvaJsdtKtNWLRICxUhQNNpnC931Kq5-JUNVRESUpHS0c4WE5FTEhWV0tYQU9VVU4zUC4u)まで。

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