オリエンタル白石 コンクリート製造にかかるCO2排出量を約65~85%削減
オリエンタル白石、山木工業と新菱カイハツ生コンは、コンクリート製造にかかるCO2排出量を約65~85%削減できる土木構造物向け低炭素型コンクリートの開発を進めている。コンクリートを構成する要素は、主に水、セメント、砂、砂利になるが、CO2排出量の大半を占めるセメントの7~9割を高炉スラグ微粉末に置換することで、CO2排出量を最大で約85%の劇的な削減を可能にしている。先月28日には小名浜港において、実際に同コンクリートを用いて2t消波ブロックの打設実験を行った。(井手迫瑞樹)
小名浜港において、低炭素型コンクリートを用いて2t消波ブロックの打設実験を行った
4種類の配合で打設 銅スラグを活用
RC構造物やPC桁などについても適用目指す
同港においては護岸・防災機能の強化を図るべく、消波ブロックの設置が進められている。同ブロックは大型のもので40t以上、小型のものでも2t以上に達する。本施工試験では、高炉スラグ微粉末とセメントの比率をそれぞれ7:3、8:2、9:1の3種類と標準配合のコンクリートを含めた計4種類を選定し、2t型消波ブロックの製造試験を行った。コンクリートの製造では,公称容量2.75m3の強制二軸練りミキサーを使用する。1バッチの練混ぜ量は1.0m3で、少量の特殊混和材料は手投入で対応した。スランプは8cm(±2.5cm)、空気量は4.5%(±1.5%)を製造時の品質基準とした。新菱カイハツ生コンでコンクリートを製造し,アジテーター車でコンクリートを受けた後,いわき市中之作勝見ヶ浦地内までコンクリートを輸送(25分程度)した。
コンクリートには銅スラグを用いている
4種類の配合を試した(井手迫瑞樹撮影)
粗骨材径の最大は40mm径 / 精錬工場の敷地内に積まれている銅スラグを活用した
同コンクリートは、特殊な製造設備やミキサー車を用いることなく、通常の機械設備で製造できるのが利点である。今回は消波ブロック製作(無筋構造)のため、粗骨材径の最大は40mm径の骨材を使用した。さらに小名浜港付近には銅の精錬工場があり、銅スラグを砕砂や天然砂に30%程度置換することで、有効活用している。銅スラグは通常用いる砂に比べて1.5倍程度重く、これを活用することで消波ブロックの重量は1割ほど増し、護岸性能が向上する。
現場ではアジテーター車から0.3m3のホッパーにコンクリートを預け、クレーンでホッパーを吊り、消波ブロックの型枠にコンクリートを打込み、φ40mmフレキシブル高周波バイブレーターを用いてコンクリートを締固めていた。最終的には各配合2体、計8体の2t消波ブロック供試体を製作した。
打設状況
コンクリート供試体と製作された消波ブロック
供試体の養生は、打設後から7日まで養生シートを用いて養生し、材齢7日で脱枠し、材齢28日程度まで陸上で保管し、各試験体1体ずつ陸上と海中でそれぞれ3年間の暴露試験を実施する。評価項目は、①スランプ試験、②空気量試験、③コンクリート温度、④圧縮強度試験、⑤ 割裂引張強度試験、⑥乾燥収縮(質量変化率)、⑦中性化促進試験、⑧塩水浸漬試験、⑨海洋植生の評価、⑩ひび割れ性状、⑪表面電気抵抗(四電極法)、⑫透気係数(トレント法)。
今後はRC構造物やPC桁などについても、同様の低炭素型コンクリートの適用を目指し、研究を進めていく方針だ。
関連リンク:https://www.orsc.co.jp/toppickup/tec2308_01.html