たのしい土木
NEXCO西日本 橋桁転倒事故の原因と再発防止策を公開
NEXCO西日本は、長崎県道 11 号(主要地方道佐世保日野松浦線)において発生した橋桁の転倒事故の原因と再発防止策を公開した。(井手迫瑞樹)
路面の勾配が山形に2.0%から4.8%に変化している箇所を通過
自走多軸台車上の架台の水平調整操作が間に合わず、架台が傾斜
同事故は、2月15日午前1時18 分頃、 長崎県佐世保市三浦町の県道 11 号(主要地方道佐世保日野松浦線)において、令和2年度佐世保道路佐世保高架橋(拡幅)工事(その2)の工事の一環として、西九州自動車道(佐世保道路)の4車線化工事で使用する橋桁を組立てた場所から、架設現場近くの仮置き場所へ自走多軸台車で運搬中(上図がその平面図)に、橋桁が台車上から県道 11 号上に転倒したもの。
事故の発生原因としては、県道 11 号から県道中央分離帯の仮置き場所へ進入する際、路面の勾配が山形に2.0%から4.8%に変化している箇所を通過することとなるため、通過時は多軸台車の架台が水平になるように調整する必要があったが、自走多軸台車上の架台の水平調整操作が間に合わず、架台が傾斜したことにより架台上の橋桁が転倒したものとした。傾斜に加えて、「速度が出過ぎた」(NEXCO西日本)ことが、桁横転の大きな原因になったと推察される。
当日の桁運搬状況と横転原因図
桁横転状況写真
同社では再発防止策として、橋桁の仮置き場所を県道の中央分離帯から佐世保駅付近にある平坦な仮置き場所へと変更し、急な勾配変化点を通過しない運搬計画に見直しするとともに、本工事における今後の運搬ルートについては、平坦なルートを通行する計画へと変更することとした。
さらに、路面の勾配が変化する箇所を通行する際には、確実に水平調整が実施できるように、勾配変化点手前での一時停止を義務付け、速度制限を設けるとともに、水平を確認するための水準器及び速度計の監視員を専任で追加配置し、橋桁の運搬を実施する。
今後の工事再開にあたっては、再発防止対策を含めた現場の安全確認、安全教育を徹底した上で、再開を予定しているということだ。
(記者の目)再発防止策は概ね妥当である。現場ならではの条件があったのだろうが、巨大な桁を自走多軸台車で運ぶ場合は、勾配変化ができるだけ少ない箇所を運ぶというのはセオリーであるはずだ。自走多軸台車の性能向上もあり、厳しい箇所でも施工可能ではあるとは思うが、今一度、基本に立ち返る意味で、この再発防止策を徹底することが必要であると思う。