壁面用循環式壁面ブラストロボットで省力化しつつ環境負荷も低減

壁面用循環式壁面ブラストロボットで省力化しつつ環境負荷も低減
2024.06.06

ヤマダインフラテクノス ブラスト研掃幅は200mmで1日30㎡程度施工

Tag
塗替え 生産性向上 鋼橋
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概要動画Overview Video

 鋼橋塗り替えにおける循環式ブラストのパイオニア的企業であるヤマダインフラテクノスは、従来、コンクリート構造物の壁面用に用いていた循環式壁面ブラストロボット(NETIS番号 KT-230024-A)を鋼構造物用途に小型化した鋼橋用循環式壁面ブラストロボットを開発した。同ロボットはブラスト施工時に、エアーを使用しない遠心式ブラストを採用することで、施工時に加圧が生じず、負圧環境になるため集塵装置も極小化できる。現在の施工対象はウエブの平面部であるため、隅角部や添接部、フランジなどの施工は別途行う必要があるが、そうした作業についても平面部のブラストを打ちながら別エリアで並行して作業ができる。また、ブラスト設備の極小化により、電力使用量も大幅に削減できる。装置は小型であるため、施工範囲内を容易に移動ができ、長大橋における設備の盛替え作業が大幅に軽減できる。平面部のブラストそのものに要する人員は、従来のオープンブラストの場合は「10人程度必要であったが、これを3~5人(オペレータと補助員、盛替え工)まで減らすことができ、削減した人数をブラスト以外の養生などに割くことができるため、全体的に大幅な省人化や工期短縮が期待できる」(同社)。すでに国土交通省中部地方整備局内の橋梁や高速道路の高架橋の塗替え塗装工事において実施工を行っている状況だ。(井手迫瑞樹)


概要図

機械概要

鋼構造物の再生と環境の調和 循環式ブラスト工法、循環式ショットピーニング工法 ゴミを減らして世界を変える 鋼構造物の再生と環境の調和 循環式ブラスト工法、循環式ショットピーニング工法

ICTを用いて遠隔操作

粉塵がほとんど発生せず、非常にクリーンな環境

 同工法は下フランジに上下用の駆動装置、上フランジには延長方向に動かすことのできる設備を設ける。それに吊り治具を設置し、小型循環式壁面ブラストロボットを吊り、ICTを用いて遠隔操作することにより施工速度を制御でき、仕上面を均一にできる。また自動運転による施工であり、熟練工も不要だ。さらにバキュームしながらかつ遠心式ブラストによって施工するため、粉塵がほとんど発生せず、非常にクリーンな環境となるため従来のオープンブラストの際に装着する送気式マスクが不要となり、電動ファン式マスクだけで施工が可能となる(上動画参照)。

施工状況と施工後の下地状況


 ブラスト研掃幅は200mmで1日30m2程度施工でき、「通常の循環式ブラストと同程度の面積が施工可能」(同社)。さらに足場設置作業や養生設置作業、ブラスト施工後の塗装作業なども並行して行える。平面部の研掃後は戻り錆対策として、簡易なジンクリッチペイントを塗布しておくことで、オープンブラスト時の施工量を大幅に軽減でき、ブラスト全体の施工時間を短縮することが可能だ。

 実は同工法の試作機は平成18年ごろに開発され、実橋梁でも使われていたが、当時は現在のような担い手不足もなく、環境に対する問題意識も少なかったことから、使われずにいた。「今回、根本的に改良し、再稼働したのは、早すぎる担い手不足対策や、環境対策に時代が追い付いてきたため再投入した」(同社)もので、今後は延長方向についても自動化することで、さらなる施工効率化を図っていく。


実は平成18年度に旧タイプを導入、時代が追い付いてきた


 また、耐震補強部材や支承取替を行う時の新たなブラケット設置の際やNEXCOなどの大規模更新において既設合成桁の床版取替の際に補強部材などを取り付ける必要が出てくる。そうした状況においては、既設塗膜の除去及び摩擦接合を取るため、通常は塗膜剥離剤+ブラスト面形成工具または、オープンブラストを行う必要があり、手間と複数工程、大規模な養生が必要であった。本工法を使うことにより、養生・手間を縮減でき、さらに塗膜除去とケレンを1工程化することにより施工時間を大幅に短縮できる。

 なお、同社は、本機械を月産約2台のペースで生産予定である。

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