国土交通省名古屋国道 1日交通量約5万台の国道19号道路上、大須歩道橋を塗替え
国土交通省中部地方整備局名古屋国道事務所は、名古屋市中区大須1丁目と大須2丁目の国道19号を跨ぐ部分に架けられている大須歩道橋の塗替えを進めている。同橋は昭和42年2月に建設された橋齢58年に達する橋長41mの2径間鋼I桁橋で、地覆に孔食を伴う腐食が見られていることや、以前にFRPによる補修を行った箇所でも補修材の浮きや、補修箇所の再劣化が見られていることから、橋梁全体660㎡の塗替えを行っているものだ。その現場をレポートする。(井手迫瑞樹)
平面図および塗装工詳細図
着工前の大須歩道橋
騒音、振動、そして臭気に気を使わなくてはいけない現場 循環式ブラスト工法を採用
騒音、振動、そして臭気に気を使わなくてはいけない現場
桁下クリアランスは最小で250mmしかない
大須歩道橋は、地下鉄大須観音駅と大須観音や門前町的な大須商店街を結ぶ箇所にある歩道橋である。人通りはひっきりなしであり、加えて桁下には国道19号が走っている。国道19号は2015年の交通センサスで昼間12時間の断面交通量は約38,000台、夜間も含めた24hの交通量は約50,000台である。昼間12時間での大型車混入率は約10%であり、通常の移動だけでなく物流の道路という意味でも枢要な道路であり、その交通に影響を与えないように塗替え施工を行わなくてはならない。さらに両側にはマンションや飲食店が立ち並んでおり、「騒音、振動、そして臭気に気を使わなくてはいけない現場」状況を踏まえ、受注業者(ヤマダインフラテクノス)の提案により、循環式ブラスト工法を採用することとなった。
桁下を走る国道19号の昼間12時間の断面交通量は大型車混入率は約10%
塗膜成分は、冒頭に示したように鉛およびアスベストが含まれていた。この中で特殊要因はアスベストである。鉛以上に毒性や強いため、事前に塗膜成分を確認したうえでアスベストを含んでいる個所を特定(張り紙防止塗料や剥落防止塗装を施工していた箇所が該当、主に桁外側のウエブに集中)し、隔離養生したうえで、水をかけながらグラインダーで塗装を落とし、除去したうえで所定の手続きに沿って特別産業廃棄物として廃棄した。その上で、既設塗膜(400μm弱、1998年2月に1度3種ケレンで塗り重ねている)を循環式ブラストを用いて除去し、表面粗さを80μm以下に抑えた品質を確保した。
アスベスト施工前の養生完了状況 / アスベスト施工除去施工状況
アスベスト除去完了状況
ブラスト施工前状況 / 施工状況
施工完了状況
ブラスト施工にあたって、厳しかったのは足場クリアランスである。桁下は特車の車両高を鑑みて、最低でも4.1mの高さまでは空間を確保しなければならない。その結果同橋の塗り替えにあたっては、足場設置時の板上面から桁下フランジのクリアランスを250mm程度しか確保できず、匍匐して移動しつつ寝転がる姿勢で斜めにブラストを打つことを強いられた。それでも「循環式ブラストは200mmのクリアランスさえあれば、良好な品質を確保することが可能」(同社)であり、本現場でも十分に表面粗さ80μm以下を確保することができた。
また、場外に研掃材や塗膜などを含んだ空気を漏らさないよう、完全板張り防護+塗装養生シート+ブラスト養生シートの多重防護を行っており、ブラスト材の回収や、ブラスト施工用のホースを挿入している孔も「チャック式の蓋をすることで空気を漏らさないように万全の養生を行っている」(同社)ということだ。
場内換気は業務用機械を用いて1時間に5回場内の空気が置き換わるようにしている他、各種防護具を装着し、作業員の健康被害が生じないように対策を行っている。
飾り柱部は色を変えてメリハリをつける
FRP補修は『光硬化型FRPシート ショウゼット VE-1000S』を用いる
現在は、塗替えを行っている。塗替えは日本ペイント製のデュフロン100ニューファインを使用しており、有機ジンクリッチ+下塗り2層+中塗り+上塗りの重防食塗装(250μm)を用いている。色彩は基本的に赤色を用いるが、写真のような飾り柱があり、その上部については黒色の塗装を施し、メリハリをつける。
また、FRP劣化部については、同様にFRP補修『光硬化型FRPシート ショウゼット VE-1000S』で補修すると共に、孔食部については、外側から新たに鋼板による当て板補修を施したうえで塗装を行っている。
地覆部の鋼材腐食やFRP補修個所の再劣化部
素地調整したうえで当て板やFRPによる再補修を行った
その後、鋼板当板やFRPによる補修を施した上に、さらに塗装を施工していた(井手迫瑞樹撮影)
飾り柱は上部は黒、株は赤と元通りの色にする / 飾り柱を寄贈した方のお名前はきちんと後世に残す(井手迫瑞樹撮影)
元請はヤマダインフラテクノス㈱、一次下請は岡野技建㈱(アスベスト除去も含めた既設塗膜除去、素地調整)、㈱博正塗装(塗装)、㈱NSK(当て板補修)、㈱前山(薄層舗装)、セイフラインズ㈱(交通整理)。最盛期の今年2月末には元請4人、作業員11人の体制でブラスト施工を行っていた。