新しい時代のインフラ・マネジメント考

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2024.05.16

②「道路橋点検要領」の改訂について

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4.現在の構造物は、はたして健全か?

 この問題が実は、私は一番必要ではないか ?と考えている。しかし、このことがなかなか言われない。不確定要素がある中で維持管理をすること、マネジメントしていくことは非常に困難である。高次の方程式を解かねばならないからである。点検し診断して、異常があるときに不思議なひび割れがある。多くの場合は、ひび割れ損傷図を描いて見過ごされてしまう。これが前述した擦り傷切り傷の点検だからである。

 自治体では橋梁台帳がしっかり保存しているとは限らない。設計データ、施工時のデータ。完成時のデータが無い。そこで点検を実施しているわけである。設計は正しかったのか?施工は正常だったのか? と私はすぐに疑ってしまう。本来管理者はここにも気を使うべきである。結局は、今の点検は、「構造物は健全である」という状態で点検し診断している。なかなか過去の問題を検証するのは困難ではあるが、できるだけ検証すべきである。そして新設に関しては、厳しいチェックが必要である。中々経験の少ない、インハウスエンジニアがそれを行うのは、困難である。だから他の先進国のようにチェックコンサルのようなものも必要である。維持管理をする側としては、健全なものを受け取ることを前提とすべきである。

縮小する社会においては、全数守ることは困難

 膨大な管理橋をいまさらすべて検証しろいうのも現実的ではない。であるからせめて、ひび割れなどの状況から疑問を持ち、何らかの不備が疑われるものは、非破壊検査技術を使い確認していくことは必要である。鉄筋量が不足しているのがわかるだけでも対処の仕方は変わる。本来は非破壊検査+解析であるだろう。日々が有るからひび割れ注入して安心していたのではまたすぐ再劣化を起こす。

 長寿命化、予防保全と言われて久しい。しかしこの言葉を聞くたびに私は切なさを感じる。「本当に可能なのか?」予防保全や長寿命化を実現するにはそれなりの費用が掛かる。場合によればライフサイクルコストは増加する結果になる。財政的に厳しい自治体は、果たして長寿命化予防保全ができるのか? 少なくとも富山市は無理である。数が多すぎる。高度成長期に利便性を求めて作りすぎたのだ。縮小する社会においては、全数守ることは困難であるのだ。やっと最近になって、人口減少による消滅可能性自治体の話が出てきた。これが我が国の現実である。しかも、イニシャルコストを抑えることのみに、注目して設計された橋を高度成長期には大量に作り出している。本当のライフサイクルコストが考えられていない場合が多い。

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5.まとめ

コンストラクションからアセットマネジメントへ舵を切れ

 先月も、結構忙しかった、女房に「現役時代と変わらないじゃない。」と皮肉を言われた。動けるうちは動こうと思うが、最近体がついて行かない。群管理の第3回委員会があり、モデル地区に選定されたうちの1か所、秋田県大館市に、委員会で視察に行ってきた。大館市は、「あきた犬」の街であり、比内地鶏もある。感じたのは市長はじめ職員の方々が素晴らしいと感じた。市長の「コンストラクションからアセットマネジメントへ舵を切れ」と建設部に言っている。と言う言葉が印象的であった。

 こういう考え方ができると言うことは先進的な考えができているということである。群管理に関しては、未だ正解値は示されていない。おそらくないだろう。自分たちで考えなければならない。しかし、世の中では、様々な動きがあり、わかったようなことを言っている連中が居るが、そういう者に限って委員会の委員でも何でもない。もう、ミスリードはやめてほしい限りである。無駄のことをいつまでやるのか? 物を作ったことも管理した経験もない者たちがわかったようなことを言っても重みはない。

群管理を自分たちで考え、実行に移している大館市
包括管理のJVの幹事会社がマネジメント


 大館市は、群管理を、それなりに自分たちで考え、実行に移している。既に実行している。コンサルは絡んでいない。マネジメントはどこでやっているのか疑問であったが、包括管理のJVの幹事会社がやっている。維持管理の今後の本当の姿を見たような気がする。管理する側と実行する側が協議を密に行いマネジメントしていけば、机上のマネジメントは不要である。これは私の考えに合う。対応して下すった、市長はじめ市の職員(建設部)の方々が素晴らしかった。どうしても富山市と比べてしまうが、同等かなと思えた。しかし、先進的案件を、積極的に取り入れると言う気概は、大館の方が有るような気がした。どうしても北陸は、守りになってしまうのか地域性で仕方がない。

 これに関連して最近「インフラマネジャー」が必要だと言うことが言われだした。そのような相談も来るが、具体的にこれを言うのは難しい。マネジメントとは「何とかすることである」何とかするためには「考えること」である。ただ考えるのではなく知見が必要である。マネジメントは、教えて教えられるものでは荷と考えている。資格もあるが資格で表現はできないのではないか?天性のものもある。それにしても本当の意味でマネジメントの実績のある人間も少ない。言葉はかっこよいが泥臭いものである。俯瞰的に太極を読み、繊細に詳細を診る、そして考えることが重要である。

 物事が少し進むと「合理化」とか「生産性」と言われるしかし、ほとんどの場合、かえって生産性が落ちることをやってしまう。これは根本がずれているから。何のために点検し診断して、監理するのか?目的がずれている。私は、「使って大丈夫なのか?安全なのか?そうではないのか?」である。

 これを、どう検証できるか現在、(一社)国際建造物保全技術協会を通して、富山市で実施している。もともとは旧国鉄時代からの技術である。考え方はいろいろあるが、自治体と国は目的が違って仕方がないと考えている。これを割り切らないと、膨大な予算が必要になっていく。衝撃弾性波を使い、構造物の固有値を求め、健全の評価をする者であるが、まだ中途である。ある程度まとまった段階でまた報告する。現在は、港湾の桟橋とパイルベント橋梁などで実施している(下写真はその実施例)



 状況が進むと様々なことをやってみたくなる。地中の下部工・基礎工の様子などもそうである。本来の維持管理の新技術とはそういうものであるはずである。(次回は6月16日に掲載予定です)

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