新しい時代のインフラ・マネジメント考
4.最近気になっていること「集約撤去」
最近、様々な方々から、「集約撤去」の事例が欲しいと言われる。「集約撤去は必要だ。」とも言われる。なぜ、単純撤去ではないのか?それは、単純撤去では交付金がつかないからである。集約撤去とは言うが、その集約する代替え路がない場合もある。これが自治体の難しいところである。これも管理者が違えば集約にはならない。そして多くの方が勘違いしているのは通行止めにすれば点検は行わなくてもよいと思っている。実はこれも間違いである。管理物として残れば、使っていなくても、5年に1度点検する義務がある。怠って事故が起きれば大変なことになる。責任が発生する。本来はいらない物塚はなくなった物は速やかに撤去する必要がある。
「更新のマネジメント」と言うのも重要で、自治体によっては今後、集中的に、寿命を迎える構造物が増加していく。そうなると、一気に、架け替えが、必要になってくるが、数が少なければなんとかなるが、多いととんでもないことになることはわかるだろう。財政が追いつかない。だから「トリアージ」が必要だと言ってきた。これができないとみんなだめになる。これは、更新のマネジメントでもあり、縮小社会への新たな考え方なんです。「誰も取り残さない社会」と言うことは素晴らしいこと。しかしそれをやるためにはかなり大変です。ヒトも社会資本も誰もを取り残さないというのは、言葉で言うのは簡単だが、今の日本にそれだけの財力のある自治体は、どれだけあるだろうか? 人口は減少し、少子高齢化で税収の減少が見込まれ。日本の企業は何のかんの言っても、あまり調子よくない。主食の米でこらえだけ騒いでいるようでは、情けなくなる。
結局は長年の政策ミスだと感じている。
建設政策も、どうもおかしい。「長寿命化」「予防保全」言葉は、美しい。考えた方はたいした物だと思う。しかし、現実を見たときに、それは可能なのであろうか? 少なくとも自治体はかなり厳しい。予防保全をするには、管理な、予算が必要になる。なぜか、元々のできが良くない物が結構存在しているからである。初期不良のある物すら多い。
これは自治体ほどひどいと思う。
インフラの老朽化の問題は、なかなか、コンサルさんや先生方には理解が難しいと思う。実際の物の話だし、財政も絡むので机上論ではうまくいかず、困難だろう。また、管理者によって考え方も違う。
集約撤去や、撤去という単純な話ではなく「縮小社会への処方箋」を考えなければならないのだが。富山でやっている「トリアージ」とは言葉は強烈だがそういうことなのである。縮小社会へ向かう中で、数のリスクとどう立ち向かうか。
5.まとめ!
5月の末に、広島県建設技術協会の総会で講演を依頼されて行った。かなり、熱心に聞いていただき感謝申し上げる。会長が、このR2SJを読んでくださっているようであり、懇親会などで、この話もした。私の文章は、技術論ではなくエッセイに近い、その時点で感じていることを書いている。馬鹿な内容だと感じている方も多いだろう。たぶん技術論一辺倒の方々はそうだろうと書いているほうも思っているのでご容赦願いたい。
かつて富山で「植野塾」というものを職員向けに実施していた、月1回のペースで60回ほど実施した。最初のうちは橋梁の基礎知識などをやっていたが、どうも、つまらなそうであるので、テーマをその都度変えていった。技術論はほとんど語らず、どちらかというと、モノづくりの哲学や精神論を話していた。すると、「事務屋なんですけど参加してよいですか?」とかいう人が出てきた。私としては「考える職員」を作りたかったので、結果はOK。この「植野塾」は、赴任前の市長との打ち合わせで職員教育を依頼されたことによる。
これも、技術論一辺倒の方々からすれば、「なんだ」となると思うが、世の中は論理的なものばかりではない。ましては技術論一辺倒では成り立たない。技術論で語れば論理的だと思っている方々大きな間違いである。世の中はそんなことでは動かない。自分が、技術論を語り相手は納得していると思う方も多いと思うが、その後はどうなるかである。それで決まりではない。「判断」というものが入る。これは仕組みとして仕方がないことである。あなた方に決定権はないのである。最近これを、良く感じる。「わかってないやつが多いな!」正当なことを言っても通らないことは多々ある。しかしこれは仕方ないこと。むきになっても仕方がない。私自身も、昔はそうであった。まだ、青かったのだ。判断が違っていればそれはそれで仕方がないのである。それによって後がどうなろうと責任は向こうにある。しかし、この責任というものがおろそかになっていて、言われるがままというものもある。やはりプロとしては責任をとれないとプロではない。
まあ、理不尽な世の中だが、なんとかしなければならない。
(次回は2025年7月16日に掲載予定です)