新しい時代のインフラ・マネジメント考

新しい時代のインフラ・マネジメント考
2024.06.16

③インフラマネジメントの全体像を考えよう

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確かな技術で社会基盤の発展に貢献する CORE技術研究所

4.まとめ

 今回は改めて、インフラマネジメントに関して書いた。マネジメントとは、いろいろ言われているが、仕組みを考えるところから始まる。全体の仕組みをどのように形作り、課題に対処していくかである。いろいろ能書きを言われる方も居るが、様々な手法を駆使しながら課題を解決する必要がある。マネジャーは幅広い経験と知識が必要であり、常に考えることが重要である。1つにこだわると失敗する。しかし、多くはこだわってしまう。仕組みを考えるとき、皆さんの多くは「マニュアル化したほうが良い」と言う。しかし、こういう人たちこそ「標準化には反対する」。それは、そういう方々が、マニュアル化も標準化も理解できていないからである。

 我が国の設計思想は「仕様設計」である。最近だいぶ性能規定化が言われるようになってきたが、それでもマニュアルは作りたがる。性能設計が進むと責任は個人に来る。これがわかっていない。とにかく考えることが重要なのだ。日本の教育システムでは決めごとの正解値を求められる。だから、様々な資格試験でも5枝択一が主流である。しかし、本当に重要なのはそうではない。自然科学において重要なのは、どう回答を求め検証するかである。つまりは、考えるプロセスが大事なのだがこれを教えるには手間がかかる。

 構造物を設計するには、様々な配慮が必要でありそれを考え反映して初めて設計であるのだが最近の傾向を見ているとそうではない。マネジメントに関しても物知り顔で様々なことを言うが、実際にやってみたのか?ということである。多くの方は考えていないが、これまでの社会は、1件1件を計画し設計し、施工してきた。これが「作る時代」特殊な場合以外は、時系列を見れば1件ごとである。しかし、今や、昔作った大量のものを一気に運営管理しなければならない時代になってきた。今使っているものが果たして安全に使えるのかそうではないのか?何か補修しなければならないのであれば、どうするのか?補修材は?補修方法は?その後何年程度供用させる?もしもの災害時は大丈夫か?そして最終的に何年程度供用し廃棄するのか?架け替えるのか?それを管理数だけやらねばならないのである。予算規模の少ない自治体ではこれが至難の業である。

 ここに、財政の問題が絡んでくる。予算が無尽蔵にあれば、長寿命化とか予防保全も可能であるが、現実的にはそれが可能な自治体がどれだけあるのか? いま、評価Ⅲの数が多いとか少ないとか・修繕率がどうのこうのと言う議論をしているが、技術的課題は別として、予算さえ付けられ適正な管理ができれば問題は無くなるのだがそういうわけにはいかないから皆さん苦労しているわけである。そこで、マネジメント論がいろいろ言われるわけであるが、果たしてどれが正しいのか?やってみればよい。やってみることが一番重要である。
無責任のようだが、ちょうど2000年に韓国で高速道路のPFI事業マネジャーを経験してきたが、ここでは橋梁は105橋、トンネルが13本あった。これを一気に作り管理していくことの経験を通して、いずれ必ず来るであろう、「マネジメントの時代」を肌で感じた。これが私の現在の「マネジメント思考の原点」である。



 もう一つ是非言っておきたいのは今ある既存の構造物は、必ずしも良好な状態で作られてはいない。と言うこと。設計の不都合の問題も施工の不都合の問題もある。これを平準化するための仕組みが、各種マニュアル類であり、標準設計であるのであるが、それを軽視した結果が今後どうなっていくのか?どうも、「仕組み」と「技術」「手法」の区別がついていない方が多いと感じられる。

 「エンジニア」は多くの責任を負っている。いくら、資格を取り、計算ができたからと言って一人前ではなく、失敗も経験しながら、育っていくもの、いくら優秀だと言っても、経験が乏しくては一人前ではない。
 今回は今現在のインフラメンテナンスへの懸念材料を書いた。耳が痛くても考え方が違っても、これが私の考えである。皆さんそれぞれ信じる道をやってみればよい。いずれ結果は出る。

 橋梁トリアージとマネジメント戦略に関しては何度か書いているがどうも皆さん理解できないらしいのであえて書く。多くの方は、言葉でとらえてしまうらしい。だからあえて「橋梁トリアージ」と最初にインパクトのあることを使ったのである。あえて批判を受け、事態の緊急性と深刻さを伝えたかったのである。こういう言葉の使い方も戦略である。策略なのであったが、なかなか理解はされない。

 結局、言葉だけ、机上論ではマネジメントは実行はできない。そして、一つ一つ時間をかけて、考えて失敗しながら、構築していく必要がある。そこを誤解すると何年かかっても出来っこない。また、ヒトが変わった時に失墜する可能性がある。

橋台背面の段差を抑制 可撓性踏掛版 never-ending challenge 私たちがもとめるもの それは豊かな未来を支える確かな技術です。

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