まちづくり効果を高める橋梁デザイン

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2026.01.01

Vol.9 新春エッセイ:若者が心惹かれる橋を日本中に

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織りなす綾の美しさ

 最後に取り上げるのは西海橋です。橋梁関係者で知らない人はいない戦後日本の名橋です。戦後間もない1950年に着工し1955年に竣工しました。当時世界第三位のアーチスパン216メートルを誇った鋼ブレースドリブアーチ橋です。2020年には、戦後土木施設初の国指定重要文化財に指定されました。

 設計を担当したのは、当時大学を出たばかりで、後に若戸大橋や本四連絡橋を担当する吉田巌さんです。卒業論文「針尾瀬戸に架けるアーチ橋の応力計算」が、西海橋の建設を進めていた旧建設省の目に留まり、入省後すぐに西海橋を担当することになったという逸話が残されています。すごいですよね。


写真11:西海橋、部材が織りなす綾が美しい


 トラスは煩雑というレッテルを貼られがちですが、美しい西海橋を見ると、トラス自体が問題ではないことがよくわかります。ブレースの三角、鉛直材のトラス、上部工の横桁、高欄の柱のピッチ、それらはすべてブレースの倍数で構成されています。つまり橋にあらわれている模様は、ランダムなのではなく、規則的な反復が重なり合ってできたものです。これが、煩雑さではなく、綾を織りなするように見え、美しさを感じるのだと思います。

 さらに材料を減らすために部材は、板を組み合わせることで、穴が空いているように見えます。つまり近づくほどに、新たなディテールがあらわれ、目を楽しませる。シンプルな形の橋では、近づくほどに情報が少なくなります。

 遠くで眺める、近くで眺める、正面から、あるいはたもとから眺める。眺める距離や角度によって、異なる表情が生まれる橋は見飽きない。西海橋の美しさには、規則的な反復が生む美しさが関わっているのではと思っています。


写真12:西海橋、複数の規則的な反復が見て取れる



写真13:西海橋越しに見た新西海橋。桁下の歩道を歩いた体験が、太田川大橋での歩道分離のアイディアにつながっている

橋との出会いが提案の幅を広げる

 さて、人が、人と出会い成長していくのと同じように、橋梁エンジニアは、橋と出会うことでも成長していくのだと思います。僕がそうだったように、若者もまた橋と出会うことによって、橋の世界に飛び込んでくるはずです。

 幸せな橋との出会いをひとつでも多く演出できるよう、今年も実践と原稿に取り組んでいきたいと思います。

 どうぞ今年もよろしくお願いいたします。

脚注・参考文献
1)牧田 通:スイスにおけるUHPFRCを用いた構造物の補修・補強工法の研究・開発、コンクリート工学,55 巻, 5 号, p. 361-3673,2017.
2)高木千太郎:これでよいのか専門技術者 第53回 偉人・吉田巖から学ぶ,道路構造物ジャーナルNET,2020.

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