高専発、インフラメンテナンス人材育成・KOSEN-REIM(高専レイム)の挑戦

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2026.02.01

第17回 「実務家教員を活用した社内技術者講習の実証」

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>松村 寿男氏

瀧上工業株式会社
橋梁インフラ本部
技術統括副部長
(KOSEN-REIM 実務家教員育成研修プログラム修了生)

松村 寿男

はじめに

 筆者は、実務家教員育成研修プログラム(開発講座)の2021年度にKOSEN-REIMに参加(写真-1)し、いわゆるI期生として、「専門教士」を取得した。プログラム受講時は、玉田先生、嶋田先生らスタッフの先生方、貴重な同期の皆さんによって、大変刺激を受けたことを覚えている。多くの皆さんの出会いで本稿を執筆できること、大変感謝しております。


写真-1 教育実習状況(2021年度実証講座)©elina yamasaki


 さて、筆者らは、鋼橋メーカーの技術者として、実務で役立つ構造力学と社内の技術伝承をめざした技術者向けの社内講習を2022年度から本格的に試みてきている。実際は、それより以前の2017年度ごろから社内の管理職らを講師に「若手技術者講習」を実施してきてはいたが、実務優先の雰囲気の中、若手の受講者が減ってしまっていた。そこで、トップ指示の下、話題性のある社外講師をさがしていたところ、2021~2022年度の社外の講師として、熊本大学 山尾敏孝名誉教授に趣旨を同意いただき、構造力学をメイン授業、筆者の実務経験などをオマケの授業としたスタイルで社内技術者講習に取り組んできた。

 ちょうど2021年度、玉田先生より、技術士などを保有し、舞鶴高専・社会基盤メンテナンス教育センター(iMec)にて、インフラメンテナンス分野のリカレント教育を担う「実務家教員育成研修プログラム」の受講のお誘いがあり、I期生として受講している中、社内の事情を振り返り、教える意欲や伝える努力のできる社内講師を集めて、自前で社内教育を見直す企画を思いついた。I期生の社内展開をしたところ、同プログラムを受講する管理職がⅡ期生、Ⅲ期生とつづいた。このため、2024年度からは、同プログラムの受講修了者で「専門教士(建設部門)」の資格を有する社内の3名の「実務家教員」をメインにカリキュラムを組み立てる企画を試みた。講義の運営方法は、メインの前半の講義を社内講師の実務家教員が担う企画とし、社外の学識経験者を招いた特別講義を後半に隔回で企画している。自身の経験を含めた過去の失敗事例を取り扱いやすくすることが目的であるが、若手だけでなく、ベテラン技術者も受講対象とすることで、アンケートもこれまで以上に厳しい指摘がされやすいために、講師の力量が問われることになることは想定している。

 以下では、2024年度社内技術者講習のアンケート結果をもとに考察を深めたものを報告する。

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2024年度の講義の実施内容について

 2024年度の講義は、表-1に示すカリキュラムで実施した。これまで社外講師が実施してきた社内講義の理論的な背景は継承しつつ、設計、施工、維持管理を得意とする3名の社内講師の実務経験をベースに構造力学的な視点から講義を展開する発想で企画し直した。社内の年間スケジュールをおさえるために、2024年2月におおまかなスケジュールを組んで他の社内行事に重ならないように周知、3名の社内講師による講師会議を講義前に計7回実施し、前講義のアンケート結果の周知と当日の講義設計とアンケート内容の確認を行った。

表-1 社内技術者講習のカリキュラム実施(2024年度)


 さらに、社外の特別講師は、当社と付き合いがあり、技術者教育に関して熱意のある現役の3 名の大学の先生の協力を得た(玉田先生、山田先生、清水先生に感謝)。また、表-1 に示すように、講義前半は社内講師の実務経験の内容、後半は社外の特別講師のそれぞれの得意分野にて指導いただくよう交渉、講義(写真-2)を運営した。過年度は1 年目から10 年目の若手技術者を対象に企画してきたが、受講人数が限られた経験から、技術伝承と技術力向上を目指すため、受講対象をCAD オペレータなど構造力学の専門外を含めた全社員の受講を引き続き許容している。
講習の日程は、受講者が確保できるよう、技術部門(設計などの「技術統括部」と現場施工現場管理の「工事・保全統括部」)の月例ミーティングの一部の時間を活用した開催に加え、社内CPDS 講習に登録することで、一定数の人数確保を試みた。その結果、過年度に比べ、6 回の講義で延べ約250 名(1 回あたり40 名程度)の受講者を確保できた。


写真-2 社内技術者講習状況1(2024/7/8)

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技術者講習の実証アンケート結果

 2024年度の技術者講義実証の(1)アンケート内容の検討と(2)アンケート結果の一部について示す。

(1) アンケート内容の検討

 講義後の分析や評価が把握しやすいように、継続的な定量データを取ることやQRコードでの回答とするため、選択肢制として、おおむね質問を統一した。具体的なアンケート内容は、「勤務年数」、「参加形態」、「講義内容」、「配布資料」、「講習の役立つ側面」、「印象に残った内容」、「資格に役立つか」、「実務家教員の有効性」、「学習目標到達度」、「受講の目的」、「構造力学以外で知りたいこと」などと自由記述である。2024年度から「学習到達度テスト点数」を集計結果に反映することとした。

 2024年度から新たに問いに加えたのは、「実務家教員の有効性」、「技術者講習の役立つ側面」、「学習目標到達度」、「受講の目的」である。「実務家教員の有効性」は、社内の実務家教員がメインになったことで、講師である「専門教士」が直接評価されることで、受講者への「教える技術の自己研鑽を怠らない」ことをねらっている。「講習の役立つ側面」は、講師が実務で役立つ側面を意識することで、受講者との距離感を近くするねらいがある。「学習目標到達度」は、講義のはじめに講師が示す目標について、受講者自身が自己評価できるように加えた。「受講の目的」は、貴重な業務時間を使うことから、社内技術者講習の今後の持続性を見据えたデータ取得が目的である。いずれの問いの追加も、講師・受講者が成長できるようなデータ取得を目的としている。実務家教員と受講者側の成長が常にできるように配慮しているところである。

(2) 講義の実証アンケート結果分析と考察(一部)

 1)講義内容・専門用語について

 講義内容・専門用語の分析結果について述べる。図-1に「講義内容」による理解度を示す。データ数は247である。図から、「まあまあ理解できた」27%、「理解できた」30%、「少し理解できた」35%で計93%を締めているため、内容については理解を得ている。一方で、「物足りない」2%、「理解できなかった」6%であり、全ての受講生に講義の難易度をあわせるのがあらためて難しいことがわかった。

 図-2に「専門用語」を示す。データ数は247である。図から、「まあ理解している」33%、「少し理解している」32%、「理解している」23%、「熟知している」7%を合わせて、95%を締めている。一方で、「知らなかった」5%のデータがあるが、2023年度までのデータは16%であり、専門用語の知識は受講者に浸透してきたと思われる。


図-1 講義内容(データ数247) / 図-2 専門用語(データ数247)


 

 2) どの側面に役立つか・印象に残った内容

 図-3に技術者講習は業務の「どの側面に役立つか」を示す。データ数は527である。図から分かるように、「実務と構造力学の関係性がよく分かる」28%、「力学的な視点が業務に役立つ」25%、「実務の設計・計画・診断に役立つ」24%、「過去の事例が技術伝承の意味で役立つ」22%とほぼ均等に意見が分かれた結果となった。構造力学と実務をつなげる講習の意図は伝わっていたと思われる。また、すべての質問内容が、講義で受講者に有効性をねらっている問いであるため、おおむね良好な結果といえよう。


図-3 どの側面に役立つか(データ数527) / 図-4 印象に残った内容(データ数372)


 図-4に「講義の印象に残った内容」を示す。データ数は372である。図から分かるように、「過去の事故」41%、「例題演習」21%、「理論」20%、「確認テスト・質疑応答」10%であった。社内外の過去の事故のインパクトが強いことがわかった一方で、演習・テスト・クイズを通じて理論を理解させようとした講習の企画は有効であると感じる。特に、「過去の事故」の内容は、別途、講師会議の中で意図的に社内外の事例を必ず扱うように周知しているため、ターゲットとなる技術伝承の内容を印象づけた成果であると思われる。「例題演習」と「理論」の計で約40%である点についても例年どおりであった。「確認テスト」、「クイズ」をあわせて約20%を締めるため、講義で設計した内容については、受講者の意見がおおむね分散されたデータとなっており、それぞれの講義で印象に残る内容を展開できたと推察できる。

 3)実務家教員の有効性

 図-5に「実務家教員の有効性」について示す。データ数は247である。図から分かるように、「有効である」54%、「有効性が高い」28%、「どちらかと有効」15%であり、計97%がなんらかの有効性を感じていることがわかった。一方で、「他の講師と変わらない」が3%であった。実務家教員育成プロジェクトにて、「教える技術」について学んだ資格を得た社内講師は有効であると思われる。


図-5 実務家教員の有効性(データ数247)


4) 学習目標到達度・テスト結果
 講義の学習目標到達度とテスト結果データについて述べる。図-6に「学習目標到達度」を示す。データ数は246である。図から分かるように、「ある程度到達(75%)」37%、「半分は到達(50%)」30%、「完全に到達(100%)」15%に対して、「到達にはほど遠い(25%)」18%であった。
講師会議で想定していた到達度50%以上は計82%となっており、良好なデータである一方で、18%の「到達にはほど遠い」受講者に向けての改善の必要性は残る結果となった。


図-6 学習目標到達度(データ数246) / 図-7 テスト結果(単位:人数)(データ数247)


 図-7に「テスト結果」(単位:人数)を示す。データ数は247である。このテストは、講義の最後に実施する、講義の「目標到達度確認テスト」であり、2024年度から5問から成り、1問20点で計100点となる点数分布である。よって、3問正解で60点、4問正解で80点である。
図から分かるように、「80点」が60名以上と最も多く、「60点」が50名以上、「100点」が50名と高い層の得点分布になっている。色で示す、得点の低い層の多い講義と得点の高い講義それぞれの担当講義の分布にも特徴がみられることがわかった。講義のレベルや確認テストの難易度は、改善は継続しなければならないが、講師の裁量を確保するためには相関させる必要はない一方で、10名以下とはいえ「0点」(4名)が存在するため、受講生側の要因もあることが懸念される。

 本稿では、社内講師に「専門教士」資格を有する実務家教員を主軸とした、2024年度の技術者講義実証後のアンケート内容の検討とアンケート結果について述べた。アンケート結果の例として、「実務家教員の有効性」については、97%の聴講者がなんらかの有効性を感じていることが分かった。

 現在、2025年度の技術者講習が進行中である。なお、本稿は社内の技報たきがみvol.42に掲載予定である。今後も社内の実務家教員の増員とともに、プレゼンスを高めていきたい。

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