高専発、インフラメンテナンス人材育成・KOSEN-REIM(高専レイム)の挑戦

高専発、インフラメンテナンス人材育成・KOSEN-REIM(高専レイム)の挑戦
2026.03.01

第18回 KOSEN-REIMの教育はなぜステップアップ型なのか ―橋梁点検(基礎編)講習会の制度設計―

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5. 対面講習会

 図2の対面講習会スケジュールは舞鶴高専の例ですが、各高専で用意している教材や対象橋梁が異なるため、スケジュールの一部を各高専の実情に応じてカスタマイズしています。スケジュールを見ると、座学の講義を寒色で、体験型学習を暖色で示していますが、体験型学習の時間が多く確保されていることがわかります。インフラメンテナンスは経験工学であり、講習会も教室での座学だけでは完結しないと考えています。

 座学では、eラーニングで学んだ内容の確認と統合を重視しています。教室内の講義であっても、模型や実際の部材、劣化部材を提示しながら議論を行います。さらに、各高専には橋梁点検に関する実習フィールドが整備されており、供用後に劣化して撤去された橋梁部材を展示しています。受講者は実際にそれらを観察し、劣化の様相を確認します。

 半日は高専外に出て実橋梁を対象とした現地実習を行い、部材構成や不具合の事例を確認しながら議論します。なお、本講習では点検調書の作成そのものを目的とはしていません。
 学内では電磁波レーダーによる鉄筋探査、テストハンマーによる強度推定、打音検査、中性化深さ測定など、鉄筋コンクリート構造物について一連の非破壊検査も体験します。
 維持管理計画の演習として、ある橋梁を題材に諸元や損傷の推定、詳細調査や維持管理の方針を検討する時間も設けています。演習の内容を完璧にこなすのは基礎編では難しいですが、一度体験し、橋梁診断というゴールの視点をもつことの重要性を意識してカリキュラムに組み込んでいます。

 点検とは、図面や写真だけで完結するものではありません。そこには、目の前の構造物を自分の目で見て、触れて、違和感を感じ取る力が求められます。実物を前にして判断する経験の積み重ねが不可欠です。本講習では、その「初めての一歩」を意識して設計しています。


写真3 実橋梁での講習(長岡高専)



写真4 非破壊試験の体験(香川高専)



写真5 維持管理計画演習のグループワーク(福島高専)

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6. 学習到達度確認試験と受講者の声

 講習の最後には、学習到達度確認試験(准橋梁点検技術者認定試験)を実施します。前述のとおり、これは選抜を目的とするものではなく、到達度を客観的に確認するための仕組みです。試験は択一式30問で、eラーニングと対面講習会で扱った9分野すべてから出題されます。合格には総合点に加え、各分野で設定した最低基準を満たすことが必要です。試験レベルは5高専で統一しており、その技術的な担保の仕組みについては第4回で詳しく述べます。

 試験に不合格となった場合でも、一定の基準を満たした受講者には、eラーニングを再受講したうえで再試験を1回受ける機会を設けています。難しい、厳しいという声もありますが、資格として社会に示す以上、一定の水準を保つことは避けて通れません。

 受講者アンケートや企業へのヒアリングからは、本講習は「少人数で密度が高く、気を抜く暇がなかった」「実務とのつながりが見えた」「業務への理解が深まった」「モチベーションが上がった」といった評価を多くいただいています。負荷は決して軽くありませんが、それが充実感につながっていることも事実です。
 基礎編の受講者は、合否にかかわらず、メンテナンス分野の登竜門としてボトムアップを目的に受講し、基礎編で一区切りとする方もいれば、応用編や橋梁診断へ進み国土交通省の資格認定を目指す方もいます。
 基礎編は、応用編や橋梁診断へ進むための通過点ではありません。育成の出発点です。
 「地元のインフラは地元で守る」
 そう考えたとき、誰もが最初の一歩を踏み出せる仕組みが必要でした。その答えがステップアップ型です。

参考文献・リンク
1) 嶋田知子:高専連携によるインフラメンテナンス分野の社会人技術者育成の取組み,コンクリート工学,pp.151-157,Vol.64,No.2,2026.2
https://www.jci-net.or.jp/j/publish/bulletin/index.html(会員限定,2027年2月以降一般公開)
2) R2SJバックナンバー:https://r2sj.net/search?sw=KOSEN-REIM
3) 各高専へのリンク(講習会の予約もこちらからできます)
舞鶴高専 社会基盤メンテナンス教育センター:https://www.maizuru-ct.ac.jp/imec/
福島高専 福島-REIM:https://reim.fukushima-nct.ac.jp/
長岡高専 REIM長岡:https://www.nagaoka-ct.ac.jp/reim/
福井高専 福井県社会基盤メンテナンス教育プロジェクト:https://www.fukui-nct.ac.jp/imep/
香川高専社会基盤メンテナンス教育センター:https://www.kagawa-nct.ac.jp/imec/
4) 一般財団法人高専インフラメンテナンス人材育成推進機構:https://www.kosen-reim.or.jp/

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