新しい時代のインフラ・マネジメント考

新しい時代のインフラ・マネジメント考
2024.08.16

⑤何のための点検か?

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4.今後の展開

 インフラのメンテナンスと、国土強靭化、防災は別に議論されているが、本来は一体もしくは一部である。そういう考え方が無いと災害に対しては無防備、脆弱な構造物となる。したがって、「防災を意識したインフラマネジメント」で「災害にも強いインフラ」の整備・運用・維持管理について検討していかねばならない。

 計画段階、設計段階からの配慮が重要である。現在の維持管理の思想は、この部分に目をつぶり、そもそもが健全であったと言う仮定の下に点検を実施している。例えば、ここで、「ひび割れ」に関して、いつできたどういう原因のひび割れなのか? と言うことが軽視されている。どんなひび割れでも「老朽化による・・・・」「塩害」「ASR」と片付けられているが、実際には、配筋不足や他の理由も結構ある。「最小鉄筋量」と言う考え方も最近は考えられないのか?配筋は、設計計算だけでは決まらない。お分かりだろうか、様々な配慮が必要である。見えなくなってしまうモノなのでなおさらである。点検結果で「経年劣化(老朽化)によるひび割れ」と言われるものが実は、鉄筋量不足だと言うモノもある。

 配筋では特に阪神大震災以降の設計だが、スターラップ不足のモノもある。なぜか理解されていなかったからである。なぜなのか?「理解不足」だからである。わかったつもりで設計し、実はわかっていなかった。施工段階で気づくべきだが気付かなかった。と言うことだろう。鉄筋は、なぜ・どこに?どのように?必要なのか構造物の基本がわかれば、おのずとわかるはずである。それを新設に示したのが標準図集であった。マニュアル好きの方々がそれを捨てたのは、驚くべき暴挙である。まあ、結局は設計者の技量が違う方向に向かっているのだろう。設計もよく理解できていないのにインフラ・マネジメントを語るのはおかしな話である。

 特に、見逃しや理解不足が懸念されるのは、コンクリート橋よりも鋼橋。支承や伸縮継ぎ手などの付属物に見逃し委が多い。本当に、見逃しなのか? 見逃しと言うのはかなり、かばった言い方で実は理解できていないのではないか?

 インフラ・マネジメントがどういう方向へ向かうのか?最近非常に心配である。理想論を述べる方々が多い中で実際に何が目的でどうすればよいのか?考えていく必要がある。様々ン取り組みがなされてはいるがどうもずれていると感じるのは私だけだろうか?特に自治体では、「なるべく簡易に・・・」という形容詞を付けないと無理である。そして、「なるべく安価に」である。安価にするのは発注者側の理解と努力も必要である。

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5.まとめ

 最近、身内や知り合いが、亡くなり、つくづく考えると、自分自信、いつまで生きるのか? わからない。時間はあまりないと言うことである。なので、伝えるべきことを伝えたい。

 インフラに関して、総合的にマネジメントが必要だと言う取り組みは多く行われてはいるが、どうも、結局、細かい話題になってしまうと言う感じを受ける。そして語る方々は、自分の得意な一部分を語り、それに賛同する人を集めて居る。これはこれで、価値はある。しかし、もっと大局的視点をもたないと、片手落ちである。

 日本の社会基盤は約990兆円の資本ストックがあり、現今の豊かな経済社会を構成している。しかしながら、これらの社会資本は、老朽化が進み、維持管理・更新費が急激に増加しているのが現状。1990年代には新設費が80%近くであり、残りが維持管理・更新費だったが、現今の総投資額、サービス水準を基本とすると、2030年度には維持管理・更新費が70%に増加するものと推定される。この社会資本がこれで、十分かと言うと必ずしもそうではない。だから、新しく作るものと管理するものが混在し、より難解な話になっていく。今の議論で何が欠けているか?であるが、財政の話と人財の話、総合的マネジメントである。

 特に財政は、十分かどうかで、その後の話が全然変わってくる。全国どこも一律ではないし、インフラの数も違う。豊かな街、貧しい街で、大きく状況が変わる。私が10年前に「トリアージ」と最初に行ったのは、限りある財政をできるだけダウンサイジングして、負担を軽減させた方が良いという議論をしたかったからであるが、議論にはならず、否定されて終わっている。最近また注目されているようだ。方向性が正しければよいが、そうでなければ徒手空拳で終わるだろう。インフラが存在する限り、固定費は発生しつずける。これが、理解されていない。これをどう考えるか?なのだが。まあ、行政側もこの辺の説明をきちんとしない。

 人財に関しては、人を育てると言うのは簡単ではない。相手があることなので、何をどうすべきなのかは、かなり難しい。基礎的知識は大学で学ぶべきものと思う。構造系の技術者が最低限、何が必要か?と言うことを十分に考えてほしい。感じることは、力学が良く理解できていない人たちが居る。社会人になった時の、どこでどう学ぶかは本人次第である。ME制度などもあるが、本当にそれでどこまでできるのかは、私は否定的である。自分で、計画から設計、施工、運用、維持管理を実際に経験しないとなかなか難しいのではないだろうか? しかし、そういう組織はまずない。自分でたどっていくしかない。そして役割分担があるのに、無理やりその枠を超えてやろうとしていることも大きな問題である。それぞれの立場でやるべきことをやればよい。マネジメントと言うことは仕事の分担も考慮することである。

 私は、優秀ではなく、数多くの失敗もしてきた。順調な社会人人生は送れてはいない。そのおかげで、様々な経験ができた。意外と私がやってきたテーマは、その時々で、先進的なことが多い。設計標準化、建設コスト、省力化、自動化、鋼橋積算大改訂、阪神大震災対応、木橋技術基準、木橋技術協会の立ち上げ、道路構造令保全部会、PPP/PFI、日本風景街道、・・・・等など。これらは、一時期、世の注目を浴びたが、やっていると邪魔が入る。その繰り返しであった。それはそれで、面白い人生だが、干された時代も何度か経験している。干されると、反発心と、挑戦心がわいてくる。人生には、干されるのも必要だと思う。しかし、性格として、他人が顔を突っ込んでくると、興味が薄れていく。そして、私が手を引くと、大体がその後、尻つぼみになっている。他人の物を盗んでまでやろうと言う人たちは、それはそれで構わないが最後まで全うしてほしい。そういう人たちに巻き込まれると、ろくな結果にならない。
まあそういうことで、世の中が良く見えてきた。経験していないはずの方々が、さも、物知り顔でいろんなことを言いだす。それを真に受けて信じてしまった人たちは大変である。大きな損失となるが、自己判断なので仕方がない。「頼むから、自分の利益のために、世の中をミスリードだけはしないでね!」と言いたい。多くの方々は、肩書や権威に弱いので、ミスリードされていく。(次回は9月16日に掲載予定です)

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