高専発、インフラメンテナンス人材育成・KOSEN-REIM(高専レイム)の挑戦

高専発、インフラメンテナンス人材育成・KOSEN-REIM(高専レイム)の挑戦
2024.09.01

第1回 KOSEN-REIMが行うインフラメンテナンスのリカレント教育

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短支間の橋おまかせください CORE技術研究所 私たちがもとめるもの それは豊かな未来を支える確かな技術です。

~実施している人材育成講習会の紹介~

 舞鶴高専のiMecおよび文科省事業により2019年~2023年の5年間で構築した人材育成システムについて紹介します。講習会は事前学習のeラーニングと対面の講習会を1セットとしています。事前学習のeラーニングは対面講習会の約1ヵ月前から受講していただき、eラーニングの修了証を提出することで対面講習会への参加ができる仕組みにしています。


【図-1 KOSEN-REIM事業で実施している橋梁メンテナンスのステップアップ型講習会】


 橋梁メンテナンスについて、図-1のようなステップアップ型の講習を採用しています。基礎編以上はすべての受講者に必須の講座となっており、応用編を受講し試験に合格すると、国土交通省登録の「橋梁点検技術者」、診断編に合格すると、同じく「橋梁診断技術者」の資格が取得できます。

 特徴的なのは、橋梁診断技術者になるためには、図-1に示す4つの専門特修講座をすべて受講しなければならないことです。これは、橋梁診断を適切に行うには、橋梁に関わる施工や補修補強の知識を得なければならないと考えているからです。応用編に合格してから、橋梁診断技術者になるために専門特修講座を受講するのが基本的なコースですが、特定の講座の内容に興味があれば、応用編受講前でも「つまみ食い」的に受講することも可能です。
 今年度の5高専における各講座の開講スケジュールを表-1に示します。橋梁診断技術者育成課程は舞鶴高専のみでの開講となります。診断編までを1年で修得することも可能ですが、多くの受講生は2~3年かけて専門特修講座から診断編までをじっくり学んでいます。あくまでも知識が自分の血肉となり、橋梁診断のために役に立つようになることが目的です。

【表-1 令和6年度のe+iMec講習会開催日程】


 4つの専門特修講座と診断編から成る「橋梁診断技術者育成課程」について紹介します。

 診断編は、橋梁点検に加えて、橋梁アセットマネジメントの能力が必要となるため、「橋梁診断技術者」の認定には、応用編を合格していることに加えて、以下の4つの専門特修講座の受講を必須とし、診断編の受講(法体系、橋梁工学、技術基準の変遷、橋梁診断演習、アセットマネジメント演習など)と所定の到達度確認試験を合格することを求めています。

 橋梁長寿命化対策では、RC橋、PC橋、鋼橋、桁端部、床版、舗装・防水層についての補修・補強技術をeラーニングで学修した上で、対面講座によりそれぞれの事例紹介と補修・補強の演習、グループワークを実施します。

 構造物の詳細調査では、鋼構造物の疲労損傷に対する詳細調査手法とコンクリートの詳細調査手法の知識の獲得、及び対面講習会では先ほどの各詳細調査手法を実際に体験します。ここでは、詳細調査を実施するスキルの獲得ではなく、事案に応じた詳細調査を発注し、その成果を受領して橋梁診断に活かせる能力を獲得することを主眼としています。2日間で体験できる詳細調査は、鋼とコンクリート合わせて11種類ありこれは国内随一であると言われています。

 施工技術と施工管理では、鋼橋とRC橋、PC橋の設計、製作、施工計画、施工管理について事前学習した上で、対面講座では鋼橋の材料・設計の変遷、溶接、高力ボルト、防食技術についての演習、コンクリートの初期欠陥、フレッシュ性状、コンクリート橋の実施工については動画教材を活用した講座となっています。橋梁診断を実施するためには、橋梁がどのように設計・施工されているのかを知っておく必要があり、この講座はそれらを網羅しつつ非常にコンパクトにまとめています。

 建設ICTでは、建設ICTの基礎知識、橋梁メンテナンス分野の新技術、データ活用型橋梁メンテナンス、AIプログラミングの基礎知識などを事前学習と対面講座で実施します。建設技術者の常識として知っておくべきDX関連の知識の学修と活用できる橋梁メンテナンスに係る新技術、BIM/CIM技術などの体験、AIプログラミングについては、プログラマーの育成ではなく、AIプログラムの開発の企画や活用を行う上で必要となる知識の獲得と演習(手書き数字の識別プログラムの作成と実行)を実施しています。

【写真-2 長寿命化対策の様子、写真はコンクリート表面の含水率によるシラン系撥水剤の浸透厚の違いを体験するため、表面含水率を計測しているところ。】



【写真-3 構造物の詳細調査の様子、写真は磁気探傷試験により溶接部の疲労クラックを観察しているところ。】

【写真-4 施工技術と施工管理の様子、写真は鋼構造物の溶接技術の演習のうち開先深さ、開先角度の計測を行っているところ。】

【写真-5 建設ICTの様子、写真は長岡高専の井林先生開発によるタブレット端末による橋梁点検を試行しているところ。】


 講習会の受講申込は、実施する各高専で受け付けています。連絡先はKOSEN-REIM財団のホームページをご参照ください。
 https://www.kosen-reim.or.jp/

 次回は、橋梁点検技術者育成課程や橋梁メンテナンス以外の講習会、受講者層や取り組みを支援する体制について、引き続き玉田が紹介いたします。

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