高専発、インフラメンテナンス人材育成・KOSEN-REIM(高専レイム)の挑戦
KOSEN-REIM事業が第8回インフラメンテナンス大賞にて、国土交通大臣賞(メンテナンスを支える活動部門)を受賞しました!
今年度のインフラメンテナンス大賞にて、国土交通大臣賞(メンテナンスを支える活動部門)を受賞しました。2019年度からの5年間に積み上げてきたリカレント教育と実務家教員育成を両輪とするインフラメンテナンス技術者育成システムの構築とその社会実装が評価されたのではないかと自賛しています。この事業の実施には、本当にたくさんの方々にご尽力いただきました。その根底には、地方のインフラメンテナンスへの危機感があります。地方の自治体職員や民間技術者に本教育システムを活用いただき、未来の世代に素敵なインフラを残していきたいと考えています。
首相官邸での表彰式(REIMのリーダー嶋田先生)
首相官邸での記念撮影(二度と来ることはないだろう、たぶん)
KOSEN-REIMとは
もともとは、文部科学省「持続的な産学共同人材育成システム構築事業」(2019~2023)の中核拠点の取組として採択され、舞鶴高専を中心に福島高専、長岡高専、福井高専、香川高専の5高専が取り組んだ事業の名称を「KOSEN-REIM」といいます。正式名称は「KOSEN型産学共同インフラメンテナンス人材育成システムの構築」(KOSEN-Recurrent Education of Infrastructure Maintenance)です。
KOSEN-REIMでは、「REIM産学連携コンソーシアム」を立ち上げ、産官学15機関と5地域の連携協議会が参画し、全メンバーが所属する合同会議と3つの部会を置きました。各部会では、橋梁メンテナンス技術者及び実務家教員を育成する新規教育プログラムの開発・実証・検証の他、事業期間終了後のインフラメンテナンス人材育成システムの持続的運営とリカレント教育拠点の全国展開を支援する一般財団法人の設立へ向けた検討を行いました。その成果の一つとして「一般財団法人高専インフラメンテナンス人材育成推進機構」(KOSEN-REIM財団)を設立しました。
以上の活動を総称して「KOSEN-REIM事業」と呼んでいます。名前が重複してややこしいのですが、高専という教育の場をインフラメンテナンス人材の育成にも解放して地域社会の持続性を担保すると同時にインフラに係る人材を広く募ることで「地元のインフラは地元で守る」をモットーとして活動している総称だと考えてもらえればと思います。
KOSEN-REIM事業のロゴ
「KOSEN型産学共同インフラメンテナンス人材育成システムの構築」のHP
「一般財団法人高専インフラメンテナンス人材育成推進機構」のHP
インフラメンテナンス大賞応募のコツ
我々は、頑張ってきたのだから、インフラメンテナンス大賞に応募しよう! ということで応募することにしました。インフラメンテナンス大賞は、ドローンやAI、データサイエンスを活用した新技術などの研究や技術開発など素晴らしいキラキラした活動でなくても応募できます。
今後皆さんが、インフラメンテナンス大賞に応募する際の参考になればと思い、今回の応募の概要について紹介していこうと思います。
応募様式は主に1~3まであります。応募様式1(取組概要)での記載ポイントは、「応募する取組名」に自分たちの強調したい語句を入れつつ、審査員に伝わる取組名を考案する必要があります。名は体を表すという通り、素敵な名前をつけましょう。また、「応募部門」には、ア.メンテナンス実施現場における工夫部門、イ.メンテナンスを支える活動部門、ウ.技術開発部門の3部門がありますので、取組内容に応じた部門を選択します。
取組のPRとして次の4項目の記述があります。「取組の概要」では、どのような体制で何をしたのか、その結果どうなったのかを簡潔に記載します。「具体的な優位」では、PRポイントを明確に示す、ここが他には無い、一番注目してほしいのはココ!という内容を記載します。「活動状況」では、具体的な活動内容を数値で示し、その成果について記載します。「図・写真」では、キャプションを付けた図や写真を3つまで載せることができます。以上の取組概要では、誰がどんなことをやったのか、その具体的成果は何なのかを的確に示すことが大切だと思います。
応募様式2(取組詳細)では「背景・目的」「着眼点」「取組姿勢」「効果」「外部効果」についての記載が求められます。「背景・目的」では、取組の源泉となっている問題点や社会の動向を示すことで、取組の目的を浮き彫りにします。そして、目的が達成された後の未来予想図を示せると良いかなと思います。応募様式2は文字による記述となります。
「着眼点」では、新規性・革新性・独創性についてPRするように指示されています。ということは、文中にこの3つのキーワードを埋め込んでおく必要があります。新規性(新しく事をすること)、革新性(旧来の制度・方法を改めて新しくすること)、独創性(独自の新しい着想)の解釈は様々ですが、なんとかこのキーワードに関連させた説明文を作成します。
「取組姿勢」では、積極性・継続性を念頭におきながら、取組姿勢や具体的な内容、今後の計画などの継続性に関係する記載が必要となります。応募内容と応募分野の整合性も確認しながら記載内容を考えます。
「効果」では、生産性・効率性なのか地域貢献度なのかをチェックした上で、取組による効果について、いずれの場合も、具体的かつ詳細な記述でPRすることになります。具体的な数値による説明や具体的事象における効果が発揮された事例などを記載していきます。
「外部効果」では、メンテナンス分野における社会への波及効果や影響についての記述をしてきます。ここでも具体的な数値を挙げながら説明していきます。
応募様式2には、各項目の記入に際してのアドバイスが豊富に記載されていますので、そのアドバイスを読み解きながら記載内容を考えていくことと、具体的な説明を求められますので、できるだけ数値を拾い集めておくことが必要だと思います。「検討会を重ねて頑張りました」ではなく、「〇名のメンバーによる検討会を〇回実施した」という感じです。
応募様式3では取組詳細(その他)では、最大2ページの中に仕様、カタログ、図面、写真等の情報を添付できます。それぞれキャプションを付けます。我々の場合は、取組全体の概念図を示し、応募様式2に記載した内容が視覚的に伝わる写真や図を貼り付けました。
必須ではありませんが、取組を紹介する2分間の動画の提出が可能となっています。2分間の動画で審査員に何を伝えるか、を熟慮することで応募様式2、3をブラッシュアップできるので、是非とも動画の作成に取組んでほしいと思います。
インフラメンテナンス大賞応募の意義
人は困難な状況においてこそ、それを乗り越えるために知恵と工夫で乗り切ろうとします。日本全国の自治体の多くでインフラメンテナンスに係るそのような取り組みをされていると思います。さらに一手間増えるのですが、インフラメンテナンス大賞に応募することで、その知恵と工夫の再認識と達成感を認識することができますし、受賞すれば仲間と喜びを分かち合うことができます。もしかすると、他の自治体が模倣してくれるかもしれません。そういう意義がインフラメンテナンス大賞への応募にはあると思います。そんなに大した事はしていない、と思っていても、他者の視点からみれば素晴らしい取組に見えることもあります。皆さんも是非、周りを見渡してインフラメンテナンスに係る良い取り組みを拾い上げ、応募してみることをお勧めします。
インフラメンテナンス大賞におけるKOSEN-REIM事業の公表資料
インフラメンテナンス大賞 応募様式3(その2)
インフラメンテナンス大賞 応募様式3(その2)
(次回は3月1日に掲載予定です)