超緻密高強度繊維補強コンクリートを用いた橋梁の補修・補強

超緻密高強度繊維補強コンクリートを用いた橋梁の補修・補強
2025.04.01

第3回 ドイツの橋梁コンサルタントとして

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UHPFRC
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超緻密高強度繊維補強コンクリート『J-THIFCOM』 私たちは、循環式ブラスト・ショットピーニングで予防保全型メンテナンスを推進します。 亜鉛アルミ エポキシ複合焼付被膜 防錆処理サントルクボルト

3.補修・補強材料としての超緻密高強度繊維補強コンクリート

 これまでUHPFRC材料を床版上面増し厚材料として適用した事例を数多く取り上げてきたが、ここでは、それ以外の適用について紹介したい。その好例として、構造物保全ジャーナル2023.10.1号に示したアメリカ連邦道路局の技術資料“橋梁補修・補強のためのUHPCの設計・施工指針2022(FHWA-HRT-22-065)”に着目してみよう。米国ではUHPFRCをUltra-High Performance Concrete(UHPC)と呼び、鋼橋桁端部の劣化対策として注目されている。図-10のような桁端部の腐食対策として、錆を取り除いた後、場所打ちUHPCは劣化部の補修・補強材料として、図-11のような方法で適用されている。


図-10 腐食劣化した鋼桁端部


図-11 腐食部の除去①、スタッドの取付け②、型枠を付けてのUHPC充填と完了写真③


 UHPCは高耐久性であるので、補修後の桁端部は腐食の懸念も払しょくされ、また端部の桁は耐荷性が増すとともに維持管理が容易になる。また、補修期間・コストも比較的少なくて済む。この方法は、コネクトカット州交通局とコネクトカット大学の共同研究によって開発された。コネクトカット州では、その後も鋼橋桁端部へのUHPCの適用が継続されている。図-12は別の橋への適用であり、ここでは同様の方法で42の桁端部が補強された。これらの桁端部の寸法は、わずかづつ異なっており、鋼板補強の場合には、板厚さや高さなど前もって詳細な準備が必要であったが、UHPC材だと現場での対応が容易で、時間の節約にもつながった。

図-12 端鋼桁のUHPC補修・補強


 UHPCは、テキサス州の高速道路鋼桁支点部の補修。補強材としても適用されている(図-13a, b)。1996年に建設されたヒューストン・シップチャネル橋の主桁端部および端横桁の腐食が顕著であることから、対策が求められ、施工の容易さ・経済性からUHPCによる補修・補強が決定された。図-13bで見るように、桁端格点部の剛性を高め、耐久性・耐荷性が向上した(2020年)。

図-13a,b シップチャネル橋・鋼桁支点部のUHPC補修・補強


 

 腐食劣化の激しい端横桁および鋼支承の補修・補強としては、私も滋賀・日吉大社権現橋の対策として、J-テイフコムの採用を提案し採択され、この橋の耐久性・耐荷性は2022年に大きく改善した(図-14)。

図-14 日吉権現橋の端横桁補修・補強


 

 米国に多いプレキャストPC版桁を橋軸方向に並べた道路橋では、しばしば縦目地材の劣化が問題となる。この対策としてフロリダ交通局は、UHPCによる強靭な補修・補強を進めている。図15a上部斜線部15.2㎝幅をはつり出し、そこにUHPCを充填することで、橋の耐久性・走行性を高めている。

 

図-15a プレキャスト桁・縦目地の充填               図-15b UHPCの縦目地への充填


 別の適用例として、ひび割れ損傷の顕著なRC橋台・橋脚のUHPCによる補修・補強も考えられる。カナダ・ケベック州の鉄道橋では、劣化した橋脚をウオータジェットWJで鉄筋位置まではつり出し、UHPCで補修・補強した例がある(図-16a,b)。この橋脚の例では、その後に型枠を組み、そこにUHPCを流し込んだ。断面の大きさは、元のままとしたが、耐久性・耐荷性は大きく改善された。さらに、今後増えると考えられるのは、橋の耐震性向上に向けてのUHPCの適用であろう。これまで、耐震性を高めるため、RC補強やFRP補強が用いられてきたが、UHPCの利用のメリットは、増厚断面の薄さであり、基礎構造物への影響を最小に抑えることができる点にある。カナダ・ブリテイッシュコロンビア州のミッション橋橋脚では、1973年架設の橋脚の耐震性を向上させるため、2014年に図17a,bに見るようなジャケット対策が実施された。旧断面との一体化は、アンカーバーによっている。なお、スイスのUHPFRCの橋脚補強では、旧断面の目荒らしをすることによって付着性を確保し、アンカーバーを使用していない。なお、フランスでは、最近吹き付けによるUHPFRC施工が開発されたそうである。

図-16a,b カナダ・ケベック州の鉄道橋の橋脚、補修・補強


図-17a カナダ・ブリテイッシュコロンビア州のミッション橋橋脚基部の耐震補強


図-17b 耐震ジャケットで補強されたミッション橋


 最後に、わが国独自に開発された主桁端部に取り付ける耐震デバイスとしての鋼製ブラケットへの適用を再度、紹介する。従来はコンクリート主桁に貫通穴をあけて、両側から固定していたが、主桁端部は鉄筋配置が蜜であり、また図面通りでない配筋が多く、デバイスの確実な固定は困難を極めた。一方、コンクリートへの付着性能および耐久性に優れたUHPFRCJ-テイフコムを充填剤に用いた取付け工法(図-18)は、施工の簡便さも相まって、全国の高速道、地方道橋梁への適用が順調に伸びている。以下に、耐震デバイス模式図および実橋梁への適用例を示す。


図-18 J-テイフコム充填による耐震デバイス模式図


図-19a,b 新耐震デバイスの適用例


 その他、J-テイフコムは、劣化した支承台座の補修にも使用されている(図-20a,b)。

図-20a,b 劣化した支承台座へのUHPFRCの適用

陥没対策に最適 充填工法の切り札

4. あとがき

 筆者は本連載のタイトルを、これまで“超緻密高強度繊維補強コンクリート”としてきたが、まえがきに代えて、読者に筆者の体験を多く載せることにしている。そこで、本連載ではタイトルを“ドイツの橋梁コンサルタントとして”に替えた。筆者は、20歳でリュックサック一つで日本を飛び出し、出会った人々の親切に支えられながら、ドイツの工科大学に入学し、Dipl.-Ingのタイトルを得た。このタイトルは、欧州ではProfessional Engineer (PE)に相当し、入学時学生の3割ほどしか手にできない。ただ近年は、工科大3年末の試験でBachelor Engineerが得られ、5-6年でMaster Engineerが得られるようになるとともに、Dipl.-Ingは無くなっている。3年でBachelorが得られる理由は、高校が1年長く、高校卒業時には19歳になっているからである。その分、大学での教養課程は、非常に少ない。

 本連載で筆者が勤務した設計事務所は、Fritz Leonhardt教授と、Wolfhardt Andrae氏が1939年に開設された事務所で、橋梁・建築部門で数多くの特許を有し、世界中の橋梁、建築物を設計している。特に有名なのは、ミュンヘンオリンピック吊屋根、ドイツ国会議事堂、パスコ・ケネヴィック斜張橋などである。

 なお、昨年9月に発生したドレスデン・カローラ橋に関しては、事故調査の主管であるドレスデン工科大・Marx教授の見解を中心に示した。

 超緻密高強度繊維補強コンクリートに関しては、米国連邦道路局の技術資料を中心に取り上げた。床版補修・補強のみでなく、いろいろな用途にこの新しい材料UHPC(欧州ではUHPFRC)が使用されていることを知っていただきたい。

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