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2025.05.29

日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会が第25回技術発表会を開催
現場課題に即した技術報告を発表

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 日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会(会長 槌谷幹義氏)は5月16日、東京・千代田区のアルカディア市ケ谷にて技術発表大会を開催し、日本塗装土木施工管理技士会との共催で約140名が参加した。

 冒頭の挨拶で槌谷会長は、地球温暖化や少子高齢化が喫緊の重要課題であると述べ、これらについてより深い議論が必要だと強調した。会長は「建設業は製造業と異なり完全な機械化は難しいが、新たな発想と技術革新により担い手不足を補うことができるのではないか」と語り、本大会を通じて社会への貢献を目指す意向を示した。


140名が参加した会場の様子


 技術報告「技術報告 素地調整の規格と品質管理」(発表者:池田龍哉氏・池田工業、代表取締役 写真左)では、ブラストは塗装品質や耐久性に大きく寄与するにもかかわらず、施工直後にしか品質管理ができず、時間に追われながら運用されているのが現状と指摘。ブラスト施工面の表面洗浄度は定性的に判定されるもので、十分なスキルが必要とされる判定方法にもかかわらず適切な教育がないまま運用されており、耐久性を著しく低下させる塗装の不具合が顕在化することが懸念されるとの問題意識から、素地調整の規格(ISO 8501−1)に関する現場運用時の注意点や品質管理のポイントなどについて学術的な検討結果を踏まえて報告した。

 技術報告「鋼構造物への適用に向けた粉体塗料に関する検討」(発表者:山中翔氏・鉄道総合技術研究所、材料技術研究部 防振材料 副主任研究員 写真右)では、鋼構造物の維持管理において腐食は安全性に関わる重大な変状の一つであり、防食性の向上には一般に用いられる溶剤型塗料以外の塗料構成についても検討する必要があることから、汎用的に使用される熱硬化性タイプの粉末状塗料(粉体塗料)に着目したと経緯を説明。鋼橋への適用に向けて最適化した粉体塗料の塗装仕様について屋外暴露試験から防食性を評価した結果とともに、鋼橋を模擬した試験体を対象として粉体塗料を用いた塗装仕様の施工性を確認し、屋外に暴露した際の長期間の防食性を評価した結果を紹介した。

 技術報告 「重度腐食した耐候性鋼材の素地調整の課題と 画期的な素地調整工法(AWT 工法)について」(発表者:西谷朋晃氏・西日本高速道路、技術本部 技術環境部 構造技術課 写真左)では、従来工法を採用して補修工事を実施した耐候性鋼橋の施工結果を踏まえ、重度腐食した耐候性鋼材の素地調整の課題を概説。AWT工法で補修した耐候性鋼橋の施工結果から、従来工法では困難であった表面付着塩分量の規格値を容易に達成した一方、施工に際して水処理などの諸課題が確認されたため、引き続き耐候性鋼橋の補修工事を継続実施し、AWT工法の施工実績を増やすことで同工法の高度化を目指すとした。これと合わせて素地調整の新たな品質管理手法の確立に向けて戻りさびと付着塩分量の相関性について検討していくとの考えを示した。

 特別講演では、 岩城 一郎教授(日本大学 工学部 工学研究所長 土木工学科 写真右)が「インフラメンテナンス大変革(老朽化の危機を救う建設 DX)」を題し、4月に発刊された著書の内容を中心に限られた財源下で集中的なメンテナンス、人口減少・少子高齢化時代でのメンテナンス、複雑な地形・厳しい自然環境でのメンテナンスを余儀なくされる日本の特殊性を鑑み、SIP第3期「スマートインフラマネジメントシステムの構築」の研究成果を基軸として独自のメンテナンス技術の体系化がなされれば諸外国への技術提供が可能となり、国際競争力のある新たな看板として発展されることが期待され、その有力な技術提供の1つに橋梁や鋼構造物の塗装が位置付けられることを期待していると述べた。

 

 

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