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2025.06.23

土木学会 令和6年度土木学会賞授与式
田中賞作品部門ではジャイン・コーカレー橋などが受賞

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 土木学会は5月19日、令和6年度土木学会賞20部門、功績賞、技術賞、田中賞など117件(応募数213 件)を発表し、6月13日東京・ホテルメトロポリタンエドモントで授与式が行われた。

 功績賞は、島谷幸宏氏(熊本県立大学特別教授)、田中茂義氏(大成建設株式会社、代表取締役会長)、西村和夫氏(東京都立大学名誉教授)、細川恭史氏(一般財団法人海域環境研究機構技術顧問)、山本修司氏(一般財団法人沿岸技術研究センター参与)の5名が受賞した。

 

(写真ほか資料は全て土木学会提供)


 土木技術の発展に顕著な貢献をなし、社会の発展に寄与したと認められるインフラの計画、設計、施工または運用やメンテナンス等の画期的な個別技術に贈られる技術賞・Ⅰグループでは、「砂礫地盤でのシールドの急曲線とJR近接施工(AI活用で生産性向上)」(姫路市上下水道局、日本下水道事業団近畿総合事務所、清水・森長・宇鷹特定建設共同企業体)、「ECI方式とBIM/CIMの活用による大幅な工期短縮とコスト縮減の達成(設楽ダム瀬戸設楽線トンネル工事)」(国土交通省中部地方整備局設楽ダム工事事務所、株式会社エイト日本技術開発、セントラルコンサルタント株式会社、清水建設株式会社)など、16件が表彰された。

 



 

「砂礫地盤でのシールドの急曲線とJR近接施工(AI活用で生産性向上)」


「ECI方式とBIM/CIMの活用による大幅な工期短縮とコスト縮減の達成(設楽ダム瀬戸設楽線トンネル工事)」


 

 土木技術の発展に顕著な貢献をなし、社会の発展に寄与したと認められる画期的なプロジェクト(新設プロジェクトのみならず更新やリノベーションプロジェクト等も含む)に贈られる技術賞・Ⅱグループでは、「山陽自動車道尼子山トンネル覆工応急復旧工事」(西日本高速道路株式会社関西支社、鹿島建設株式会社)、「アサハン第3水力発電所工事(Lot I 土木工事)(インドネシア北スマトラの電力安定供給に寄与する水力発電所新設工事)」(PT.PLN(Persero)、日本工営株式会社、清水建設・Adhikarya共同企業体)など、13件が表彰された。

 



 

「山陽自動車道尼子山トンネル覆工応急復旧工事」


「アサハン第3水力発電所工事(Lot I 土木工事)(インドネシア北スマトラの電力安定供給に寄与する水力発電所新設工事)」


 土木学会論文賞では、「コッター式継手を有する道路橋PCaPC床版の疲労耐久性評価」[土木学会論文集 Vol.80,No.3,23-00172,2024.](執筆者:渡邊 輝康,野口 利雄,平野 晃臣,服部 翼,槇 駿介,本荘 淸司,松井 繁之)(敬称略)など7編が選定された。


コッター継手の施工例(井手迫瑞樹撮影)


 田中賞は、橋梁およびこれに類する構造物の分野において、優れた業績や技術的成果、特色ある作品を顕彰するものである。対象は、新設や改築(既設構造物の一部または全体を活かした改修などによる機能向上・維持)された構造物で、計画、設計、製作・施工、維持管理において顕著な工夫や配慮が認められるものとする。構造物に適用された特殊技術や革新的技術も作品として評価対象に含まれる。本年度は、業績部門4件、論文部門2件、作品部門(新設)3件、作品部門(既設)2件、技術部門2件が表彰された

 


 田中賞の業績部門では、成井信氏(株式会社藤建技術設計センター)が、長大橋の設計施工技術の開発と地方自治体の橋の維持管理手法の発展に貢献した業績により選定された。春日昭夫氏(三井住友建設株式会社 エグゼクティブ・フェロー)は、PC橋における新しい構造形式の設計・施工技術の開発とその国際展開が高く評価された。睦好宏史氏(埼玉大学名誉教授)は、プレストレストコンクリート橋の発展および耐久性向上への貢献により、藤原稔氏(元建設省土木研究所橋梁研究室)は、道路橋に関する技術指導、基準改訂、技術書の刊行などの功績が認められ、それぞれ表彰された。


 論文部門では、「鋼橋ソールプレート溶接部の疲労き裂の予防保全対策」(土木学会論文集, Vol.80, No.5, pp.1-18, 23-00234, 2024)(丹羽雄一郎氏/西日本旅客鉄道株式会社、舘石和雄氏、判治剛氏、清水優氏/名古屋大学)、「鋼桁パネル隅角部の挙動に着目したせん断力を受ける鋼I桁の機能面からの限界状態の検討」(土木学会論文集, Vol.79, No.10, pp.1-15, 2023)(小野健太氏、澤田守氏/国立研究開発法人土木研究所、宮下剛氏/名古屋工業大学、玉越隆史氏/国土技術政策総合研究所)が表彰された。


 作品部門(新設)では、以下3橋が表彰された。


 「ジャイン・コーカレー橋」は、ミャンマー連邦工共和国建設省橋梁局が発注した橋梁で、ミャンマー連邦共和国カレン州コーカレー郡区に架かる橋長380mのPC3径間連続波形鋼板ウエブエクストラドーズド橋で下部工はRC壁式橋脚である。耐候性鋼板を用いた波形鋼板ウェブ、並列1面吊りエクストラド-ズド橋、内・外ストラットを併用した新しい構造形式の採用などの技術的特徴を有しており、それらが評価された。設計はセントラルコンサルタント株式会社、株式会社エイト日本技術開発、株式会社日本構造橋梁研究所、株式会社片平エンジニアリング・インターナショナル、大日本ダイヤコンサルタント株式会社、TOP Engineering International、施工は株式会社安藤ハザマ・ピーエス・コンストラクション株式会社JVが担当した。


参考


ジャイン・コーカレー橋」


 「出島大橋」は、女川町、宮城県土木部道路課、宮城県東部土木事務所が発注し、宮城県牡鹿郡女川町竹浦・出島地内に架けられた橋長364mの鋼中路式アーチ橋である。上部構造は鋼床版を採用した鋼中路式アーチ橋、下部構造は逆T式橋台および壁式橋脚で構成されている。設計は上部構造をJFEエンジニアリング株式会社、下部構造を大日本ダイヤコンサルタント株式会社が担当し、施工は上部構造をJFEエンジニアリング株式会社、下部構造を株式会社橋本店および東日本コンクリート株式会社が担当した。


出島大橋」


 「双海橋(II期線)」は、西日本高速道路株式会社四国支社が発注し、愛媛県伊予市双海町上灘に架けられた橋長232.3mのPC4径間連続バランスドアーチ橋である。下部構造はRC柱式橋脚および逆T式橋台で構成されている。設計は基本設計を株式会社エイト日本技術開発、詳細設計を鹿島建設株式会社・株式会社富士ピー・エス特定建設工事共同企業体が担当し、施工も同共同企業体が担当した。


双海橋(II期線)」


 作品部門(既設)では、以下2橋が表彰された。


 「東名多摩川橋大規模更新」は、中日本高速道路株式会社東京支社が発注し、所在地は東京都世田谷区砧公園から神奈川県川崎市宮前区土橋に至る区間(左岸:東京都世田谷区喜多見一丁目1番地先、右岸:神奈川県川崎市多摩区堰一丁目21番地先)で、橋長495.0mの橋梁である。構造形式は、上部構造が改築前:鋼3径間連続4主合成鈑桁橋(上下線)×3連・場所打ちRC床版、改築後:鋼3径間連続8主合成鈑桁橋(上下線一体)×3連・プレキャストPC床版。下部構造は、改築前が上り線・下り線ともにRC橋脚×8基、RC橋台×2基、改築後はRC橋脚(梁拡幅・RC巻立補強)×8基、RC橋台(縁端拡幅)×2基となっている。設計は株式会社大林組・大林道路株式会社による特定建設工事共同企業体および株式会社CPC、施工は同共同企業体が担当した。


東名多摩川橋大規模更新」


 「喜連瓜破橋大規模更新」は、阪神高速道路株式会社が発注し、大阪市平野区喜連西〜瓜破西付近に位置する橋梁で、橋長は154.0m。上部構造は、既設がPC3径間連続有ヒンジラーメン箱桁橋、新設が鋼3径間連続鋼床版箱桁橋。下部構造は張出式橋脚(鋼・コンクリート複合橋脚)である。設計および施工は、大成・富士ピーエス・MMB異工種建設工事共同企業体が担当した。


喜連瓜破橋大規模更新」


 技術部門では、以下2つの技術が表彰された。


 「BP支承の耐震補強技術」は、首都高速道路株式会社、一般財団法人首都高速道路技術センター、日本鋳造株式会社が開発。代表的な適用構造物は、(修)構造物改良工事2-8である。


BP支承の耐震補強技術」


 「後方回転・自走式手延機解体装置の開発」は、株式会社横河ブリッジによるもので、代表的な適用構造物は、橋りょう整備事業県道羽島稲沢線新濃尾大橋上部工事である。


後方回転・自走式手延機解体装置の開発」


 技術開発賞は、9編が表彰されたが、高速道路の大規模更新の施工が増えている状況を反映し、「高速施工を可能にする床版更新システム(スマート床版更新(SDR)システム®)の開発」(山中 宏之(鹿島建設(株)、新井 崇裕(鹿島建設(株))、三室 恵史(鹿島建設(株))、渕先 弘一(鹿島建設(株))、一宮 利通(鹿島建設(株)))、「高強度繊維補強セメント系複合材料(VFC)を用いた道路橋床版の打替え技術」(渡邊 有寿(鹿島建設(株))、柳井 修司(鹿島建設(株))、一宮 利通(鹿島建設(株))、牧田 通(中日本高速道路(株))、若林 大(中日本高速道路(株))、村中 誠(中日本高速道路(株)))、「高速道路リニューアル工事における新方式の床版取替機と床版更新技術の開発」(森田 秀人(大成建設(株))、林 雄志(大成建設(株))、古川 耕平(大成建設(株))、新宅 建夫(大成建設(株))、白井 俊明(大成建設(株))、武田 均(大成建設(株)))、「超速硬型の超高性能繊維補強セメント系複合材料(スティフクリート®)を用いた床版上面増厚工法の開発」(富井 孝喜((株)大林組)、青木 峻二((株)大林組)、佐々木 一成((株)大林組)、本間 順(大林道路(株))、玉滝 浩司(UBE三菱セメント(株)))など4編を床版取替、床版補修が占めた。

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