NEWSNEWS List

2025.10.03

PC建協 第15回業務報告会を開催
維持管理・ICT活用・脱炭素の最新動向を共有

Share
X Facebook LINE

 プレストレスト・コンクリート建設業協会(堤忠彦会長、以下PC建協)は7月17日、東京都千代田区・ホテルグランドアーク半蔵門で第15回業務報告会を開催した。160人以上が参加する盛況なものとなった。


会場の様子


 開会の挨拶は急遽欠席となった堤会長に代わり森拓也副会長(左写真)が行った。森副会長は「業務報告会はPC建協が進めている継続的な取り組みや、PC建協が直面している重要課題への対応、さらにPC業界の発展に向けた活動について、会員の皆様へ情報提供・共有するとともに、協会外の方々への情報発信の場として活用している」と述べた。また、建設業における最大の課題は人材の確保であることを強調し、「より魅力的な業界となるため、真摯に技術の発展に取り組むことが重要である。この報告会を専門技術を磨く場として活用していただき、災害に強い国づくりに貢献することを期待している」と挨拶した。


 次に来賓として沓掛敏夫氏(国土交通省道路局長)(右写真)が登壇し、「国土強靭化を進めていくためにはPC技術は欠かせない。今後の技術発展に大変期待している」と述べた。また、建設業界の担い手不足への対応は急務であり、少子高齢化は避けられない事実であると指摘。「I-Construction2.0」による生産性向上の取り組みを進めていることに触れ、「業界内での浸透は進んでいるものの、積極的に取り組む企業とそうでない企業との間に差が広がってきている。現在ならまだ間に合うので、ぜひ積極的に技術導入を進めてほしい」と呼びかけた。さらに「今年度、8年ぶりに道路橋示方書を改訂する予定であり、性能機能の充実、耐久性の性能評価、能登半島地震を踏まえた復旧性向上などを盛り込む。業界の皆様と連携し、より良いインフラづくりを進めていきたい」と締め括った。


 業務報告会では、「PC技術相談室の現状と対応状況」を河村直彦氏(技術委員会 技術部会 前部会長)(左写真左)、栗原勇樹氏(保全補修委員会 保全補修部会 副部会長)(左写真右)が報告。PC技術相談室の目的や概要、運用フロー、担当部会の構成、質問方法などを解説した。相談への回答にはおおむね2週間程度を要し、個別案件には対応せず、原則として一般論で回答する仕組みであると説明。また、よくある質問や相談の傾向と対応について紹介し、「活動を通じてPCのファンを増やし、健全なPC構造物を増やし、手戻りとなる案件を減らすことに寄与したい」と述べた。


 続いて「既設PC橋の複合劣化に対する予防保全型メンテナンスに関する共同研究(中間報告)」では、山口光俊氏(技術委員会 同共同研究委員会 副委員長)(右写真)が、土木研究所CAESER・土木研究所iMaRRC・金沢工業大学・東京大学との共同研究について報告した。近年、コンクリート橋において多様な損傷が顕在化しており、塩害に加えてアルカリ骨材反応(ASR)による複合劣化が見られるが、適切な対応がなされず補修後に再劣化するケースも散見される。そこで、複合劣化を受けたPC橋に対して危険箇所を効率よく調査する技術、適切な評価手法、補修技術の確立を目的とした共同研究が進められている。研究内容は、①塩分調査技術の検討(WG1・調査)、②塩分評価手法の検討(WG2・診断)、③補修技術の検討(WG3・補修)の3項目で、実橋調査を主体に進められている。


 次に「PC建協会員各社のICT活用促進事例紹介」では、小野塚豊昭氏(技術委員会 品質向上部会 委員)(左写真)が発表。国交省が推進する「i-Construction」を受け、会員各社のICT活用事例を募集した結果、28事例が集まり、その中から5事例を紹介した。条件は①生産性向上に寄与していること、②すでに発表済みの事例であった。


 さらに「『プレストレストコンクリート構造物の補修の手引き〔外ケーブル工法 実例図集〕2025年3月』の発刊」について、香田真生氏(保全補修委員会 保全補修部会 委員)(右写真)が改訂内容を紹介。また、今年12月には「PC構造物の維持保全」が改訂され、「PCのさらなる予防保全に向けて」というタイトルで発刊予定であると発表した。


 「グラウト・品質パトロールの活動状況」では、葛西弘典氏(施工安全委員会 施工部会 委員)(左写真)が報告。PC建協の活動テーマの一つ「生産支援」の一環として、会員各現場での品質確保や向上を目的に実施されているもので、①グラウト・品質パトロールの良好事項(暑中対策、充填向上対策ほか)、②グラウトパトロールの指摘事項、③品質パトロールの良好事項、④品質パトロールの指摘事項を報告した。また、グラウト注入教育動画の紹介も行われた。


 特別講演では「PC橋のカーボンニュートラルへの取り組みについて」と題し、春日昭夫氏(三井住友建設 エグゼクティブ・フェロー)(右写真)が講演。カーボンニュートラルに取り組む必要性、インフラ低炭素化の方策、さらには担い手不足への対応について論じ、最後に「会員各社がCO2排出量削減の貢献度を把握するためのベースラインを示すことが重要である」と締め括った。


 最後に井手口哲朗氏(技術委員会 委員長)(左写真)が「今回の報告会では改めてPC建協の活動は多様な分野で引き続いて着実な成果をあげていると感じた」と講評した。特別講演に関しては「講演を聞いて、ますます我々がやらなくてはならないことはたくさんあると感じた。カーボンニュートラルの分野に関しては国内ではまだまだこれからだと思うが、PC建協としても力を入れていければ良いと思う」と結んだ。


各支部の活動状況を示したポスター展示

pageTop