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土木学会 令和7年度全国大会を開催
テーマは「気候変動時代の土木イノベーション〜カーボンニュートラルとレジリエンスで創る持続可能な社会〜」
土木学会は9月8日から12日まで「令和7年度全国大会」を開催した。大会テーマは「気候変動時代の土木イノベーション〜カーボンニュートラルと地域でつくる持続可能な社会〜」。
8日・9日の研究討論会は、土木学会内に設置されている各種委員会の内容から24題をオンラインで実施し、延べ3,617名が参加した。10日から12日の対面開催は熊本市の熊本城ホールおよび熊本大学黒髪キャンパスを会場とし、年次学術講演会が行われた。発表件数は過去最多の4,814題にのぼり、そのうち1,434題は今年初めて導入されたポスターセッションによるもの。熊本での現地開催は24年ぶりとなる。
11日には総括記者会見が行われ、池内幸司会長、全国大会実行委員会の垣下禎裕委員長、星野裕司部会長、椋木俊文幹事長らが登壇し、大会の概要や意義について説明した。
総括記者会見の様子
はじめに垣下委員長は大会のテーマや概要を説明。「気候変動が進む現代において、災害へのレジリエンス強化は大きな課題であり、また温室効果ガス排出の削減、すなわちカーボンニュートラルの取り組みを進めることも重要である。両者を両立させることが土木における革新であり、この大会が次世代に安全・安心で豊かな社会を築くための知恵を共有する場となることを期待している」と述べた。
続く大会報告では、星野部会長が10日に行われた基調講演、特別講演会、全体討論会の成果を報告。これらの催しはアンサンブル・シヴィルの演奏で幕を開けた。
基調講演では池内会長(右写真)が「カーボンニュートラルでレジリエントな社会を目指して」と題し、気候変動への適応やレジリエントな取り組み、さらにカーボンニュートラルに関する学会全体の活動を紹介し、その課題点を指摘した。
特別講演会では日比野克彦氏(東京藝術大学学長・熊本市現代美術館館長 左写真)が「アートと土木」と題して登壇。「ライフラインとしてのアート」という活動や地域芸術祭の取り組みを紹介し、「地域の魅力を発見し、日常生活を豊かにするとともに、災害に強いまちをつくるという目標において土木と高い親和性がある」と述べた。
その後の全体討論会は「九州から考える土木イノベーションとカーボンニュートラル」をテーマに、産学官および高校生を交えた多角的な議論が展開された。コーディネーターは星野部会長、コメンテーターは池内会長が務め、パネリストには中嶋崇史氏(球磨村森電力 代表取締役)、穴井俊輔氏(穴井木材工場・Foreque 代表取締役)、松本亨氏(北九州市立大学環境技術研究所 教授)、垣下禎裕氏(国土交通省九州地方整備局 局長)、さらにユース水フォーラムくまもとから2名の高校生が参加した。星野部会長は「カーボンニュートラルは土木分野だけでは実現が難しい課題だが、多様な立場のパネリストが集まったこの討論会は、池内会長の講演で語られた社会課題をどのように“自分ごと化”するかを共有できる場となった」と述べた。
全体討論会は「九州から考える土木イノベーションとカーボンニュートラル」
椋木幹事長からは、国際特別講演会やパネル展示、見学会、映画会の報告があった。国際特別講演会は学会国際センターが主催し、アジア諸国を中心とした研究者が参加するパネルディスカッションを行い、延べ358名が参加。土木映像委員会制作の貴重な映像は11日・12日の2日間にわたり熊本大学で上映された。パネル展示は熊本城ホール、サンロード新市街、下通3番街で10日から開始され、「レジリエンス」「カーボンニュートラル」「土木の魅力」の3テーマで全124枚のパネルを展示。11日時点で1,545名が来場した。そのほか、一般参加が可能な見学会や「ぶらり熊本土木手帳」の配布などを通じて土木の魅力を発信した。
国際特別講演会「世界と人・技術をつなぐ架け橋としての日本の土木技術者−真の国際化に向けて今なすべきこと」
大会の意義・成果について、池内会長は「日比野氏の講演は土木と親和性が高く、新たな視点を与えていただけた」と感想を述べた。全体討論会では「中嶋氏と穴井氏の事例からは、地域課題と向き合いながら経済活動につなげる方向性を示唆していただいた」と評価。さらに「ユース水フォーラムくまもとの高校生は、農業体験や水文化調査を通じて自らの抱負を力強く語っていた」とし、高校生の積極的な参加を喜んだ。
また、パネル展示でも高校生の参加が見られたことに触れ「次世代につなぐ大会になった」と総括。年次学術講演会、ポスターセッションを通じて「幅広い層・年代の参加が実現し、エポックメーキングな大会となった」と締めくくった。
年次学術講演会の発表件数は過去最多の4,814題にのぼった
今年初の試みとなったポスターセッションの様子