NEWSNEWS List
IHIインフラシステム、鋼橋保守・補修のデジタル化を推進
bestat「3D.Core」を活用し、スマホ撮影から高精度3Dモデルを生成
IHIインフラシステム(大阪府堺市・井上学社長)は、鋼橋の保守・補修業務のデジタル化と効率化を目的に、bestat(東京都文京区・松田尚子社長)が提供する3Dデータ処理クラウドサービス「3D.Core」の活用を開始した。「3D.Core」は、スマートフォンや360度カメラ、ドローンなどで撮影した画像や映像をもとに、AIが自動で高精度の3Dモデルを生成するクラウドシステムであり、従来4〜5日を要していた当て板補修や足場計画などのデータ準備期間を数時間に短縮できる。
鋼橋の補修計画では、現地での詳細な採寸や点群測量などの工程が不可欠で、多くの工数と熟練技術を要してきた。同時に、鋼橋補修には関係⾃治体や地域住⺠、発注主、施⼯業者など多様なステークホルダーとの調整も必要で、それぞれに合わせた異なる説明資料(3D データ)を個別に作成することも⼯数のかかる作業である。⼀⽅、このような⼟⽊分野の専⾨家は減少し、作業員の⼈材確保も困難なのが現状だ。「3D.Core」を用いれば、現場で撮影した画像データをアップロードするだけでAIが自動処理を行い、翌朝には設計や補修塗装計画、足場計画に必要な3Dデータを閲覧・活用できる。高性能PCを用意せずとも、一般的なオフィス環境で操作可能な点も大きな利点である。
また、受注前の調査段階から簡便に3Dデータを生成できるため、提案の質を高めつつ、作業負荷を軽減できる。生成データは3D CADやVRアプリケーションと連携可能で、仮想空間での施工性確認や干渉チェック、説明資料の作成にも活用できる。これにより、発注者や自治体、地域住民など多様な関係者との情報共有や合意形成を効率化でき、現場理解の促進にも寄与する。
「3D.Core」で⽣成した鋼橋の桁端部(サンプル)にて、細部を計測している様⼦(関東某所にてbestat撮影)
鋼橋の保守・補修作業前の検討ポイント例(⼀部画像は写真)
IHIインフラシステム 橋梁技術本部デジタル改革部の松橋弘幸部長は、「従来から写真やドローンによる3D化を社内・外部で行ってきたが、『3D.Core』の導入で社内や現場のエンジニアの大幅な負担軽減とコスト削減につながると期待している」とコメント。さらに、「スマートフォンなどの手軽なツールで高精度な三次元化が可能になり、属人化しがちだった解析作業をbestat社の技術で一貫して完結できる点が魅力。基本計画を容易に立案できることで、設計や施工段階での手戻りを減らし、業務効率のさらなる向上に寄与すると考えている」と述べた。今後は、現場の状況をそのままデジタルに再現する「デジタルツイン」の実現を目指し、VRやメタバースなど新たなプラットフォームへの展開にも意欲を示している。同部ICT推進第2グループの河上祐作課長代理も、「実際に使用してみて非常に使いやすいと感じた。人が入りにくい狭隘部や複雑な構造部でも現場の状況が把握しやすくなり、発注者や社内での情報共有も活発になった。コミュニケーションツールのひとつとしても活躍している」とコメントしている。
「3D.Core」を提供するbestatの松田尚子社長は、「点群や画像、動画をアップロードするだけで誰でも簡単に3Dデータを活用できるのが特徴。AIの活用で、現場業務のデジタル化・効率化を支援したい」とコメント。松田氏は、日本のインフラ老朽化と担い手不足の現状を踏まえ、「高度な土木技術を駆使しながら安全性向上に取り組む専門家の方々に敬意を抱いている。「3D.Core」によって現場でストレスなく3Dデータを扱える環境を提供し、鋼橋保守・補修の迅速化・円滑化に貢献したい」と述べた。