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2024.06.30

「市町村が管理する橋梁の維持管理ハンドブック」講習会を開催
100人超が参加 健全度ランクⅡを部材毎に3段階に細分化 アセット的価値も加点して維持管理優先順位を決める

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 一般財団法人災害科学研究所 社会基盤維持管理研究会(会長:東山浩士 近畿大学教授、右写真))は、6月19日、「道路橋整備に関する最新の話題と市町村における維持管理」講習会を開催した。同講習会は、同研究会が、一般社団法人近畿建設協会と共同で出版した「市町村が管理する橋梁の維持管理ハンドブック~劣化・損傷、対策事例と対策優先順位策定手法~」を用いた講習会。講習会には会場とウエブ合わせて130人超が参加した。

 同講習会の冒頭では、松井繁之名誉会長(大阪大学名誉教授)があいさつに立った。松井名誉会長は、「平成29年に本を作りました(『道路管理者のための中小規模橋梁の維持管理ハンドブック』)。これは中小支間橋梁の維持管理に主眼を置いたもので、一般的な市町村の橋梁を対象にしたものでした。それに対して、今回は市町村が管理している『独特な』橋梁も調査し、それをまとめたものを今回写真や図説も入れたテキストとしてまとめました」と述べた。
 また、定期点検要領が3巡目に入ることにも触れ、「最初に出版した本は、一巡目の中ごろに出版したものであり、まだ精査すべき点がありましたが、現在は2巡目も終えている状況にあります。そのデータの蓄積をもとに、ランクⅡをⅡa、Ⅱb、Ⅱcとさらに三段階に区分し、点数をつけて、維持管理の優先順位をさらに明確化するようにしました」と述べた。


松井名誉会長


 同ハンドブックの最大の特徴は、松井名誉理事長の言の通り、「判定区分Ⅱをさらに3段階に3分割した」ことである。それは橋梁全体ではなく、主部材(主桁、横桁、床版、下部構造、支承部)、その他部材U(伸縮装置、排水装置、舗装)、その他部材L(縦桁、高欄・防護柵、地覆、付属施設、落橋防止装置、そのほか)など部材単位に判定を区分し、さらに部材事に重みづけをして、点数を変え、その加算によって健全度ランクⅡの橋梁をⅢに近いものか、Ⅰに近いものか、それぞれ判断し、維持管理のやり方を変えていくもの。但し、混乱を招かないように健全度ランクⅡが健全度ランクⅢを超えることはない加点方法としている。加点は健全度だけでなく、その橋梁の橋梁諸元やアセット的な重要度も加味して、点数を決め、最終的に健全度Ⅱa(Ⅱの中でも比較的軽微)、Ⅱb(中程度)、Ⅱc(Ⅲ予備軍で、優先的に補修を行う必要がある構造物)に区分することを提案している。これらの加点方法、加点すべき項目はかなり練られており、市町村としても間違えようがなく点数をつけて優先順位を決めやすいよう配慮されている。さらに、部材単位の細分化の判定手法をより明確にするため、判定区分Ⅱの細分化について、判定理由、解説に写真を加えた事例集を作成している。

 もう一つの特徴は『独特な』橋梁への対応である。これは道路橋示方書に則って造られている橋梁の中の特殊な構造を有した橋梁――では必ずしもない。高速道路などを造る際に使用した仮設橋をそのまま使っている事例、特殊な経緯(ニュータウンなどを作る際に、デベロッパーが橋を製作し、そのまま自治体に寄贈したような橋(例えば奈良の鶴舞橋などが該当するであろう))で、様々な点で問題を有する橋、石橋や木橋(ないし木床版や木支承を有する橋梁)、小規模吊橋等が該当する。これらの『独特な』橋梁についての構造や損傷状況、対応集などの事例集をまとめており、市町村にとっては非常に参考にできる内容となっている。

 また、同講習会では、国土交通省近畿地方整備局企画部長の小島優氏が『第三次国土形成計画を踏まえた新たな関西広域地方計画について』というテーマ、NEXCO総研橋梁研究室主任研究員の服部雅史氏が『高速道路における最近の話題』というテーマでそれぞれ特別講演を行った。


(左)小島氏、(右)服部氏


 服部氏の特別講演では主に大規模更新事業における技術的課題について、プレキャストPC床版の疲労耐久性の確認試験、鋼床版のUリブ・デッキ溶接部の維持管理について言及、前者については、試験法442についての課題などについて言及し、後者については、様々な亀裂の測定方法や、UHPFRCの実橋への適用、鋼床版Uリブの開断面化両側隅肉溶接による対策方法、ピーニング処理による疲労対策方法について述べた。(井手迫瑞樹)

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