NEWSNEWS List

2024.07.19

PC建協 第14回PC建協業務報告会を開催
121人が参加 大規模更新や保全が中心

Share
X Facebook LINE
 PC建協は18日、東京・グランドアーク半蔵門で第14回PC建協業務報告会を開催した。報告会には会員各社などから121人が参加する盛況なものとなった。(井手迫瑞樹)

横締めPC鋼材の破断がPC床版桁にどのような影響をもたらすか

 技術委員会 コンクリート床版橋の保全に関する共同研究委員会の井隼俊也委員長(右写真)は、「プレテンションPC床版橋の横締めPC鋼材破断に対する研究」を報告した。

 同研究はホロースラブやスラブ桁などプレテンション方式の横締めPC鋼材の破断・突出事例を念頭に置いたもので、課題として「標準化された構造であり、同種変状は、他橋梁でも生じうる」、「横締めPC鋼材のグラウト充填などの非破壊検査が提案されているものの適用範囲が明確ではない」、「外観上変状と横締めPC鋼材の破断や突出の相関性が確認されていない」、「PC横締め破断に対する、耐荷力評価方法の知見が共有されていない」、「PC鋼材の破断・突出に対する維持管理方法が共有されていない」ことを挙げた。

 PC鋼棒の破断メカニズムは、水の侵入により横締めPC鋼棒が腐食してやがて破断に至るとした。その破断による荷重分配を担っている横桁の機能低下、荷重分配性状悪化による断面力の変動を調べるため、昭和50年に制定した標準設計(支間20m、幅員8.2m)、横桁(支点横桁2箇所+中間横桁4箇所)を配置したモデル橋梁を用いて格子解析(横締め破断⇒横桁剛性を無視)を行った。また、全ての横締めPC鋼材が喪失して荷重分配機能の消失を想定した落橋に対する耐荷力評価、横締めPC鋼材の破断・突出時の対策事例の収集などを行った。

 その結果、横締めPC鋼材の破断により荷重分配性状は変動するが、荷重分配機能が低下してもモデルケースでは限界状態1の制限値を超過しないことが分かった。また荷重分配機能が全喪失しても、落橋に至るような耐荷力不足はほとんど生じないことが分かった。

 ただ、横締めPC鋼材の破断・突出が1本でも確認された場合、同一橋梁の他の横締めPC鋼材も破断や突出が生じるリスクが高くなることから、桁も外観確認・応急の突出対策までは、通行止めや衝撃緩和などの規制の実施が考えられ、対策実施後も監視の継続が望ましい、とした。

 

H29道示に基づいてPCaPC床版を試設計

 技術委員会設計小委員会の佐藤徹副委員長は、平成29道示に基づいたプレキャストPC床版の試設計について報告した。試設計にあたっては①検討幅員、②床版支間長と製作上の制約、③床版支間方向の設計、④床版支間直角方向の設計、⑤継手部の設計――を課題としてみなした。
 今後の課題として、現在JISで検討されている幅員構成は、プレキャスト床版の使用は自動車専用道路が多く、検討幅員と実情で乖離している現状があることから、高速道路やバイパス道路など自動車専用道路に適合した標準設計が求められる、とした。

 また、合成構造への適用について、現状において設計方針や設計手法が確立されているとは言えないが、合成桁のへの対応も考える必要がある、とした。

 適用支間の拡大への対応としては、H29道示Ⅱ11.2.3において適用支間長8.0mへの対応が求められる一方、それに伴って版厚が増えるため、その低減も求められるとした。その上で、現在の500tに緊張装置では対応に限界があるとし、PC鋼材の3段配置や700~800tの緊張装置の導入の必要性を指摘した。

 実際に床版厚が大きく増えた2ケースについてPC鋼材を増やした試設計を行った結果、PC鋼材を3段配置し、緊張装置の能力を上げた床版では版厚を40~60mm下げることが可能となった。

 

PC鋼材の損傷を防ぐために水分センサを用いてモニタリング

 同委員会の左藤有次 品質向上部会長は、「新設PC橋のグラウトホースおよび打継部における水分浸透モニタリング」について報告した。同研究では、グラウトホース伝い水に起因したPC鋼材の腐食が問題視されていることから、水分に着目し、伝い水を対象とした新設PC橋でのモニタリングを試行したもの。

 モニタリングに用いる水分センサは、印加した電圧の残留値からコンクリート中の水分量を推定する埋込み型のセンサを用いて、想定される水分供給経路となるグラウトホース部と端部定着あと埋め部に設置した。同センサはコンクリートの水和に伴う水分量の経時変化の計測で用いられており、外部から浸入した水の検出に使用されたことはないことから、まずはその実験的検証を実施した。

 検証の結果、グラウトマニュアルやグラウト指針で推奨されているあと処理を行うことで、“水張り無し”と同等の遮水性を確認し、水分センサが外部からの浸水検知が行えることを確認した。

 同センサを用いた水分浸透モニタリングは、中部地方整備局が所管する国道1号笹原山中バイパスのエビノ木2号橋、同3号橋を用いて5年間の長期にわたって実施した。両橋とも2室箱桁の縦横断勾配を有する橋梁であり、橋面水が集まる橋面高の低い位置にセンサを設置した。その結果、両橋ともで、現行のグラウトホースあと処理の有効性を確認し、コンクリート打継部での浸入水がないことも確認した。

 その上で、「計測時は伝い水が生じない位置へもセンサを配置(補正用センサ)しておくことで、異常値を確認された時の判断が速やかに行うことができると思われる」(左東氏)とした。

 施工安全委員会の八木洋介 週休2日実施委員会幹事長は「週休2日実現への取組みについて」、尾畑暢一同委員会施工部会副部会長が「「PCグラウト&プレグラウトPC木津愛施工マニュアル2024改訂版」の発刊について」それぞれ報告した。
また、保全補修委員会からは北野勇一保全補修部会副部会長が「「プレストレストコンクリート構造物の補修の手引き(外ケーブル工法・外ケーブル補強工法)」および「PC技術を用いた構造物の補修・補強事例集」の発刊について」、同委員の小野塚豊昭氏が「新工法・新技術 橋の点検管理の取組みについて」、それぞれ報告した、

 また、特別講演としてネクスコ東日本エンジニアリング顧問の水口和之氏(右写真)が「高速道路を支えてきた橋梁技術~過去を振り返りつつ、今後を考える~」というテーマで、JH時代から現在に至る橋梁構造物の変遷と今後の課題について論じた。

pageTop