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2025.01.28

PC建協 2024年度の会員受注額は通期で約3,500億円を見込む
4年ぶりに4,000億円を割る見通し

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 PC建協(堤忠彦会長、右写真)は1月16日、グランドアーク半蔵門において、記者会見および新年賀詞交換会を開催した。新年賀詞交歓会には約530人が参加する盛況なものとなった。(井手迫瑞樹)

北海道新幹線の発注が一段落 鉄道分野の急減が影響
大規模リニューアル事業は堅調


 上期のPC建協会員受注額は、対前年比90%の1,724億円で、通期でも約3,500億円で令和2年度以来、4年ぶりに4,000億円を割る見通し。その理由としては、北海道新幹線の発注がおおむね完了したことを受け、鉄道分野の受注が急減した影響が大きい。上期については中央官庁が対前年比174%の346億円と顕著な増加を示したものの、鉄道会社は対前年比23%の106億円と急激した。一方で地方自治体は対前年比95%の269億円、高速道路会社は対前年比105%の973億円と前年並みを確保した。
工種別の受注額は、新設が1,066億円(対前年比94%)、補修補強は658億円(同85%)となっている。通期においては、新設は前年度より減少、補修補強(大規模リニューアル事業含む)は同程度を予測しているということだ。

 来年度以降の見通しについては、鉄道分野については来期以降も大きな増加は見込めない一方で、NEXCO案件を中心に高速道路分野ではリニューアル事業などを中心に1千数百億レベルの堅調な発注を見込んでいるということだ。

 

半年間で360時間を超えた労働者もわずかながら確認

 時間外労働の上限規制についても取組みを進めている。PC建協所属会社のうち、運営委員会所属12社を対象にした5,698人(半年間の延べ人数は34,187人)のうち、半年間で時間外労働が180時間を超えた人数は全体の16.4%にあたる937人に達し、さらには360時間を超えた人数も16人いることが分かった。

 PC建協では、上限規制に抵触する職員の所属長に指導票を発行し報告を求める。あるいは労働時間の見える化(グラフ化)を行い、社内会議などで残業時間の多い部署・個人を報告するなどの意識の向上、啓蒙を図ること。また、就労者に対して勤務状況や残業時間に関するアラートメールを出すなどの就労システムの見直しを行う。ICT/DXをさらに推進するなどの取り組みを行うことで、働き方改革をさらに推し進めていく方針だ。

 

完全週休2日の確保をさらに推進

 国土交通省は4週8休以上の休日取得率が100%に

 働き方改革の推進については、令和5年度完成のPC工事について国土交通省(82工事を調査)、地方自治体(同126工事)、NEXCO各社(同30工事)に分類し、休日取得状況を含む総労働時間の削減に関する実態調査を行った。その結果、国土交通省においては4週8休以上の休日取得率が100%に達しているのに対し、地方自治体は87%、NEXCO各社に至っては53%と低い結果が浮き彫りとなった。さらに完全週休2日(土日休)の実施率は国土交通省および沖縄総合事務局で44%、地方自治体で51%、NEXCOに至っては10%といずれも低い状況であった。加えて、完全週休2日に加えて祝日については、国土交通省で10%、地方自治体では7%とわずかしか休めておらず、NEXCOは0%であった。

 この調査を根拠に、同協会は国土交通省の各整備局や沖縄総合事務局、NEXCO各社との協議に臨んだ。その結果、①発注者指定型の完全週休2日(土日+祝日)工事の発注推進を要望し、令和6年の土木工事共通仕様書等から「週休二日は土日を休日とする4週8休以上の現場閉所」の言葉が盛り込まれた。同協会では地方自治体やNEXCOなどの発注機関へも完全週休2日(土日+祝日)工事の発注へ取組みの継続的な周知を要望している。

 

セーフティーリーダー制度を工場作業員にも対象拡大

プレキャスト化をさらに推進

 安全への取組みについては、セーフティーリーダー制度について、新たに令和6年の第2四半期からPC工場で働く作業員についても対象として導入した。「工場における小規模な事故が散見されており、プレキャスト化によるVFM(バリューフォーマネー)を推進しているにもかかわらず、工場における事故で作業が止まるなどがあれば、その利点を阻害してしまう」(同協会)ことに大きな危機感を持っているためだ。

 また、現場などにおいては、近年増加の一途をたどる外国人労働者との言葉の壁の緩和を図るため、同協会の会員が閲覧できるフォルダーに外国語看板・母国語で作成した記入書類などをアクセスして見ることのできるように整備を開始した。

 事故そのものは重大災害は減少している一方で、躓く、挟まれるなどの小規模な事故が多くなっている傾向にある。これは熟練労働者の引退の一方で、経験の浅い作業員が増加していることが要因と捉えており、安全意識の向上や安全活動の強化により、そうした事故を少しでも減らしていく努力を続けていく。

 生産性向上への取組みについては、引き続きプレキャスト化推進の提案を行っている。さらにそれを助けるため、プレキャスト部材の標準化を提案している。支間長や斜角の標準化がその骨子で、標準化により製作段階での繰り返し作業によって更なる生産性向上につなげる。型枠転用も可能になり、コスト低減にもつなげられる。

 

6,000億円規模を想定し、今後も体制を整えていく

 PC技術の継承のためには、新設橋梁の建設を通じて培った技術力が重要

 新年賀詞交換会では、冒頭において、年末に亡くなられた足立敏之参院議員に対して黙とうを行った。

 その後、堤会長は以下のようにあいさつした。

 「令和6年度補正予算においては、過去3年を上回る公共事業費の確保、並びに令和7年度政府予算案に置きましても、前年度と同規模の公共事業費を計上していただきましたこと、厚く御礼を申し上げます。昨年は元日の能登半島地震、9月の豪雨災害、さらには、今冬の全国規模での最大級の大雪と、様々な自然災害が各地で発生し甚大な被害を齎した1年でありました。近年は毎年、大規模な自然災害が各地で発生し、さらにそれらは多発化、激甚化の傾向を示しており、非常に憂慮すべき状況にあります。当協会におきましても、能登半島地震の際には、北陸地方整備局様との災害協定に基づき、緊急復旧業務の要請を受け、協会員が復旧工事を対応させていただきました。今後も必要が生じた際に備え、当協会本部支部が連携し、迅速な対応ができるよう、体制をよりいっそう強固なものとし、災害発生後もPC橋の点検や応急補修、また、緊急復旧工事など、災害復旧業務を通じても、社会への貢献を果たしていきたいと思っています」

 「昨年12月に閣議決定されました、令和7年度政府予算案における国土交通省予算決定概要の中で、国民の安全安心の確保、持続的な経済成長の実現、地方創成2.0に資する個性を生かした地域づくり等、分散型国づくりを柱としたさまざまな課題に取り組むことが記されました。その中でも当協会といたしましては、国土強靭化実施中期計画策定に向けた検討の加速化、および早期の策定、高規格道路未整備区間の整備や、暫定2車線区間の4車線化、ならびに高規格道路と代替機能を発揮する直轄国道とのダブルネットワーク化の推進に大いに期待をいたしているところであります」。

当協会としましては、i-construction2.0への対応の一環としまして、プレキャスト技術やICTの活用による生産性向上に取り組みますと共に、昨年4月から適用されました時間外労働の上限規制への適正な対応や完全週休2日制の実現を目指して、働き方改革をさらに進め、技術者の処遇改善を含めた将来の担い手の確保をより一層推進してまいります。このような中、今年度のPC分野の会員総受注額は、高速道路の大規模更新工事を含め、3,500億円程度となる見込みであります。ここ数年は安定的に事業量を確保していただいていると認識をいたしております。しかしながら私共はピーク時でありました6,000億円規模を想定し、今後も体制を整えていきたいと考えておりますので、引き続きPC事業量の安定的、持続的な確保、そしてさらなる拡大に期待をいたしたいと思います。加えまして、PC技術の継承のためには、新設橋梁の建設を通じて培った技術力が重要です。ご発注機関の皆様には、ぜひ、新設橋梁の計画、ご発注にもご配慮をいただきたくお願いを申し上げます。私たちもしっかりと、ご期待にお応えできるよう、さらなるPC技術の研鑽に取り組んでいくと共に、発注者の皆様にPC技術の特徴と長所をご理解いただけるよう努めてまいりたいと考えてまいります」。

本年も引き続き、ビジョン2023に則った様々な活動を着実に進めてまいります。そしてPC業界がこれまで以上に活気にあふれた魅力ある業界となってそこで働く若者に夢を与え、そして入職を控える若者に選ばれる業界となるよう努めてまいりますので、皆様には一層のご支援、ご協力をお願い申し上げます。

 結びになりますが、この1年がPC建協会員企業をはじめ、本日お集りの皆様方にとりまして、希望に満ちた発展の年になるようご祈念申し上げまして、私のあいさつとさせていただきます。本日は誠にありがとうございます」。

 

 賀詞交歓会には古川康国土交通副大臣などが出席して、祝辞を述べた。さらに一般社団法人関東地域づくり協会の深澤 淳志理事長が乾杯の発声を行い、盛大に開催された。


祝辞を述べる古川康国土交通副大臣 / 深澤淳志一般社団法人関東地域づくり協会理事長が乾杯の発声を行った

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