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2024.05.10

IHIグループ 橋梁などインフラ構造物の維持管理品質向上と効率化を図るツールを開発
「スマホ点検士」と「AIcon診断」

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 IHIとIHIインフラシステム、IHIインフラ建設は、共同で橋梁をはじめとしたインフラ構造物の点検や診断作業をサポートするふたつのツール「スマホ点検士」と「AIcon診断」を開発し、このほどサービスを開始した。既存橋梁が老朽化する中、その長寿命化のためにも、維持管理の最上流に位置する点検・診断が正確でなければ、修繕計画そのものが画餅に帰す。一方で、少子高齢化による担い手不足は着実に進むため、点検・診断作業の効率化は必須である。その困難な両立を図るため、点検作業をスマホ1台で行える「スマホ点検士」、過去の点検・判断をAIに学習させ、概略的なAI判断を出力したうえで、専門家チェックの元、損傷状況や劣化要因を専門家がチェックし、推奨工法などをアウトプットする「AIcon診断サービス」を開発したものだ。(井手迫瑞樹)

 

道路橋の定期点検業務に関わる一連の作業をスマホで一括

 IHIグループは、以前から橋梁向けの維持管理システムとして『BMSS』~橋梁維持管理支援システム~を有している。BMSSは一括データベース、支援ツールとして直営点検支援、IRDS(補修工法選定サポートツール)、概算工費算出支援、BMSS長寿命化支援などのツールを有していたが、今回の2つのツールはそれらの機能強化ツールとして開発されたもの。ただ、BMSS の利用有無は問わず、サービスは対応するという。

 「スマホ点検士」は、その名の通り、道路橋の定期点検業務に関わる一連の作業を、 スマートフォン(現場での点検作業)とPC(事務所での準備・調書作成)を分担・連動させて業務効率化を果たすことができるシステムだ。PCと連動しているため、スマホでタップするだけで画像調整や調書変更ができる。従来の点検作業では現場で撮影、記述を行い、事務所で写真や図を整理し、さらに指定の点検調書に記録するという3工程が必要であったが、スマホ点検士ではスマホ一台で、現場で居ながらにして点検調書の入力までが可能となり、作業効率を大きく向上させることを可能にした。


スマホ点検士の作業フローイメージ


 同システムでは基本的に、国交省・「道路橋定期点検要領(H31.2)」に準拠した点検調書(77条調査様式)を出力することができる。また、この3月末に出された「道路橋定期点検要領(運用標準)」への準拠も今後進めていくという。
道路管理者ごとの独自調書様式の作成へも対応するため、登録したデータは別途csv、jpg形式で一括出力することも可能だ。


「変状種別AI」と「劣化診断AI」で損傷状況を分析し、XAIで説明

 一方「AIcon診断サービス」は、橋梁をはじめとしたコンクリート構造物の損傷写真から、自動的に変状を識別する「変状識別AI」、さらに数種の供用条件を入力するだけでコンクリートの劣化要因を推定する「劣化推定AI」、この2段階のAI判別機能を備えた「AIcon診断」により、その損傷を引き起こした主たる劣化要因を分析することができる。判別可能な劣化要因に種類としては、塩害、中性化、ASR、凍害、疲労、乾燥収縮、初期欠陥の7つで、さらに構造物の環境要因を加味して、判定した劣化要因ごとの推定確率を示すことが可能だ。AIはディープラーニングを使用しているが、X(Explainable)AIを搭載しており、判定した劣化要因ごとの根拠を文章化して示す機能を有している。


XAIイメージ(変状識別AI(上)と劣化識別AI(下))

対策工法選定サービス


 一方で、ディープラーニングに使用している母データは変状識別AIに使用している写真データで約800枚、劣化推定AIに学習させている調書データで約400件ともう少し数が必要に思える。さらに学習に使った調書データの分析自体が、必ずしも熟練した専門家が示したデータではないため、その精度も精査しなければならない。同グループでは、AIに学習させるデータをさらに増やすため、市町村などの地方自治体向けへの試行を促す。また「サービス」として、最終段階では必ず同グループの専門家のチェックをかませて、損傷状況や劣化要因を正確に診断する。

 そして、推定された劣化要因や運用条件にあった適切な対策工法を利用者に提示する受託サービスも同時に開始する。同サービスの報告書を踏まえて、利用者が予算規模や現場条件に応じた概算工費を算定できる「概算工費システム」のアクセス権の提供も併せて行っていく。


概算工費システム

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