NEXCO大規模更新シリーズ⑩ NEXCO東日本新潟支社 北陸道 中之口川橋と小高高架橋の大規模リニューアル
NEXCO東日本新潟支社は、北陸道三条燕IC~巻潟東IC間の中之口川橋上下線及び小高高架橋上下線の一部の床版取替工、その他の部分の床版補修、防水工の施工および壁高欄取替工などを行っている。施工にあたっては、約1.5kmの区間を規制するが、約4万台の交通量を捌く必要があるため、車線数は維持したまま、車線ごとの幅員を3,500mmから3,250mmに縮小すると共に、上下線の離隔が約1,000mmであることを利用して、上下線を一時的につなげることによって、そのスペースを利用して上下線合計4車線を確保し施工する。現在は、床版取替の準備工ともいうべき、上下線の隣接する主桁を横桁で繋ぎ、さらにその上に縦桁、覆工板を設置し、舗装を敷いて一時的に一体化する工事を進めている。その現場をお届けする。(井手迫瑞樹)

施工位置図

現場外観および工事概要(NEXCO東日本提供資料より抜粋、以下注釈なきは同)
鉄筋近傍塩化物イオン量は損傷部の床版上面で6.44kg/m3、同じく損傷部の下面で4.01kg/m3
鉄筋近傍塩化物イオン量損傷部の床版上面で6.44kg/m3、同じく損傷部の下面で4.01kg/m3
中之口川橋では全延長小高高架橋では上り3径間を床版取替
橋梁概要
中之口川橋は、1978年9月21日に供用された橋長208.95m、全幅員11.65mの鋼3径間連続4主非合成版桁@2連の橋梁(上下線とも同じ)である。支間長はいずれも34.525mという均等割りである。既設RC床版厚は220mmであり、床版支間は3,000mmである。小高高架橋も同日供用であり、上下線とも橋長406.365m、全幅員11.65mの鋼3径間連続非合成鈑桁@4連+鋼2径間連続非合成鈑桁の橋梁で、床版支間、床版厚は中之口川橋と同様である。両橋とも昭和47年道示により設計され、供用から47年が経過しようとしている古い橋梁である。大型車混入率は26.9%と高く、雪氷期の凍結防止剤散布量は47.18t/km(令和6年度冬期間散布実績)とかなり多く、構造物の維持管理環境としては厳しい橋梁といえる。

中之口川橋一般図

小高高架橋上部工断面図
事実、鉄筋近傍塩化物イオン量の値は、損傷部の床版上面で6.44kg/m3、同損傷部の下面で4.01kg/m3と発錆限界値を大きく超える量が検出されている。
床版防水は中之口川橋(上下線)で2014年6月、小高高架橋(鋼橋区間、RC中空床版区間)で2010年9月、同橋(C-Box区間)で2014年6月にいずれもGⅠ相当を施工している。但し床版下面については、上面の浮きが生じている箇所に対応した位置において、塩化物イオンを確認しており、エフロレッセンスの析出や、亀甲状のひび割れ、さらにはコンクリートの剥落、鉄筋の露出、腐食による断面欠損が見られる箇所も生じていた。

塗膜の劣化、鋼材の腐食、コンクリートのうきや剥離、鉄筋露出、鉄筋の発錆などが確認できる。
(井手迫瑞樹撮影)
また、主桁部でも小高高架橋で、主に伸縮装置直下のウエブに孔食を伴う腐食損傷が生じている他、主桁の支点上補剛材周辺の下フランジ及びウエブ、垂直補剛材に減肉を伴う腐食が生じており、かつ主桁についてはパラペット側ウエブに孔食が生じているとりわけ床版が損傷している箇所ではないが、小高高架橋のRC中空床版桁と鋼鈑桁の掛違い部であるP1橋脚桁端部の上下線では著しい腐食損傷が生じていた。
塗替えも約35,000m2で施工
こうした損傷状況を踏まえて中之口川橋では全延長の床版取替(A2橋台~AP1橋台間4839.8㎡)、小高高架橋では上り線のAP1橋台~P12橋脚間の3径間の床版取替(755m2)および小高高架橋の床版取替部を除く高性能床版防水工の施工(約8,600m2)と、床版取替部のプレキャストRC壁高欄への取替、既設鋼桁の塗装塗替え(中之口川橋上下線12,331.3m2)+小高高架橋上下線の鋼橋区間22,629.2m2)および腐食および孔食部の補修、伸縮装置の取替を行うことにした。

中之口川橋施工概要図

小高高架橋施工概要図
塗装塗り替え概要

まず暫定的に上下線を一体化 鋼桁の取替部・補修部だけでなく、ホロー桁やカルバート部分も
横桁で上下線を繋いで縦桁・覆工板・プレートを構築し舗装を支える
上下線の一体化
さて、施工フローは下表及び図の通りである。


施工ステップ
当該区間の断面交通量は約39,000台/日であり、床版取替工事にて片側1車線のみを運用した施工方法では渋滞が発生する。その渋滞発生を軽減させる片側2車線を確保した4車線運用での工事を行うために中央分離帯の改良を行い、走行車線を確保することが必要となる。
まず、本線(上下線2車線)を路肩側に車線シフトし、中央分離帯側に仮設防護柵を設置、上下線中央分離帯部のガードレール撤去と、地覆部の 平滑化、そして上下線の舗装の一体化である。
これらは床版補強や床版補修を行う鋼桁部だけでなく、その前後のRC中空床版桁部(延長16.58m)やボックスカルバート部(延長348.23m)も含めて一体化する。

小高高架橋 連続カルバートボックス部一般図

連続カルバートボックス部外観(井手迫瑞樹撮影)
一体化施工を行うため、昨年4月頭の現場施工開始から、冬季施工停止期間(12月1日から翌3月15日)を挟み、今年の11月末(雪氷期間前)までは、上下線中央分離帯部に8m幅の施工ヤードを設け、前述のように上下線の1車線ごとの幅員を250mmずつ狭めて施工を行った。
上下線一体化の詳細な施工フローは、まずガードレールを抜いて、地覆を含めた床版張出し部をはつり、床版高さを合わせた。ウォータージェット(以下、WJ)ではつり、床版高さを合わせ、さらにはつり施工が完了した箇所を追いかける形で、橋の下面では鋼橋部(中之口川橋) 5,800㎜程度、鋼橋部(小高高架橋) 5,500㎜程度、ボックスカルバート部 7,500㎜~7,900㎜程度の程度のピッチで高さ600㎜×長さ3.5m程度の横桁を配置し、橋上から4.9tクローラ―クレーンを用いて高さ600mm程度の縦桁2本を配置していく。

現況の幅員そのままで撤去した開口部。覆工板はこの幅に調整して設置する。(井手迫瑞樹撮影)

はつり施工状況①(井手迫瑞樹撮影)

拡幅部補強図

足場はスパイダーパネルを採用していた。運搬用のレールも敷かれてあった


横桁の設置状況(右写真のみ井手迫瑞樹撮影)

架設前の縦桁(井手迫瑞樹撮影)

縦桁の架設状況

覆工板の設置状況

桁下から見た覆工板の設置状況(井手迫瑞樹撮影)

パネルとそれを支える留め具(L型フック)の拡大図(井手迫瑞樹撮影)
さらにその上には中之口川橋では幅1,000×長さ1,000mm、小高高架橋では幅800㎜×長さ1,000mmの覆工板を配置した。覆工板と縦桁はL型フックとボルトを用いて締結している。覆工板と張出し端部に生じてしまう隙間には、150mm幅のプレートを配置した。覆工板との接続は覆工板と縦桁をボルトと金具にて固定する。
小高高架橋のカルバートボックス部は、鋼桁部と異なりボックス壁面間の離隔が1mほどしかない。そのため横桁は使わず、高さ1,100mm、幅450mmの鋼製ブラケットを6本のアンカーボルトで止めた土台をつくり、その上は橋梁部と同様に、縦桁、覆工版、プレートを配置する。


カルバートボックス部のアンカーボルトおよびブラケット設置状況
WJではつった張出床版部の不陸修正の一部にリフレモルセットSP床版用を採用
伸縮装置部のみMMジョイントを施工
PCM(ポリマーセメントモルタル)で本補修部を断面修復
覆工板およびプレートの配置が完了した後は、まずはつり施工後の張出床版部の不陸を平滑にするため、はつり部全面を断面修復していく。とりわけ床版取替を行わない箇所については、補修用PCM(リフレモルセットSP床版用)を用いて20mmほどの厚さで断面修復する本補修として採用し、その上に、その後床版防水を施していく予定である(地覆部については床版防水をせず、床版取替や補修が完了後地覆を現況復旧する)。

断面修復工の施工状況と完了状況
さらに平滑にした張出床版上に舗装(厚さ75mm)を順次敷設していき、全区間の舗装を敷設した後、伸縮装置部にのみ走行性を確保するため、埋設ジョイント(MMジョイント)を施工していく。埋設ジョイントを用いたのは、主桁の温度伸縮により覆工板が追随し動くため、ジョイントで動きを吸収し舗装のひび割れ防止を図るためである。

舗装部の施工状況

ジョイント部(MMジョイント施工前)



