NEXCO大規模更新シリーズ⑩ NEXCO東日本新潟支社 北陸道 中之口川橋と小高高架橋の大規模リニューアル

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2025.12.19

上下線の離隔が約1,000mmであることを利用して、上下線を一時的につなげる

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大規模更新 床版 NEXCO東日本
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WJは上下線に1台ずつ2台体制で施工

WJは上下線に1台ずつ2台体制で施工

フレキシブルに水を供給できるよう、桁下からの給水口を50m間隔で配置

WJ

 さて、WJの施工に戻る。WJは上下線に1台ずつ2台体制で施工する。WJは通常、桁上に散水車を載せて水を供給するが、本現場ではそのようなスペースがない。しかし、WJに要する水量は1台に付き毎分40l、1時間に1台当たり2.5m3が必要になる。そのためフレキシブルに水を供給できるよう、桁下からの給水口を50m間隔で配置している。さらに濁水処理も最長で300m濁水パイプを繋ぎ、桁下の処理槽にノロや微小なガラを含んだ排水を送っている。さらに、ガラは昼間の施工時には、通過交通量や作業スペース上バキューム車を入れられないことから、交通量や施工機械が減少する夜間に入れてガラを吸い出す工程を組んでいる。なお、WJなどの機械への給油も夜間に行った。


WJ施工前のガードレールおよび地覆を撤去した状況。丸い穴の部分が旧ガードレール支柱設置箇所(井手迫瑞樹撮影)


 施工地は民家に隣接している箇所も多いため、WJの施工は昼間に行っている。地覆の際まではつるため、WJの足回りは安定性の高い無限軌道式とし、機械の安定と桁下への落下事故を防いでいる。施工速度は1分に2~3cm(延長方向)、1日に10m程度で、WJのはつりは(施工可能期間は5月上旬から9月下旬を予定。他工種作業との調整が絡むため)延長1km施工する計画であるが、昨年、今年で500mずつ施工しており、土日の施工は行わないため、約4か月ずつかけてはつりを完了させた。


WJの施工状況②(井手迫瑞樹撮影)


 WJを施工するに当たっては、飛散したコンクリートガラが走行車線側に飛ばないよう、厚い養生カバーおよび養生ネットではつりする箇所を覆いながら施工した。さらにWJに用いているホースから水が漏れて、走行車線側に出ないよう、ホースのジョイント部は3重の養生を施した。

 WJは水圧240MPa程度で施工しているが、打ち抜きを生じないよう、事前に試験打ちで較正してから施工した。ノズル孔は2孔タイプを使用し、斜めにかなり寝させた射出角にして施工していた。また、ガードレールを挿し込んでいた箇所は厚さが薄いことから、同部分のみ裏面に鉄板を当て桁下面への打ち抜き養生を行っている。WJ班ははつり施工に1台4人、バキュームに同4人、桁下からの給水担当が2人、チッパーによる修正はつりが同2人。濁水処理に2人。職長1人の体制で施工した。


施工に用いたWJのノズル(井手迫瑞樹撮影)

WJ施工後の張出部(井手迫瑞樹撮影)

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一部でいわゆる島施工が発生する厳しい工事

間詰め部はスリムクリートを打設、床版取替部は上面をUFCの薄膜層で覆うため防水工が不要

床版の撤去・架設

 さて、次に床版の撤去・架設である。施工は上下線とも半断面ずつであり、走行→追越の順に施工する。そのため、一部でいわゆる島施工が発生する厳しい工事である。

 基本的には、まず予め床版を縦横に切断(橋軸直角は約2.5mごと、橋軸方向は2主桁の中央付近。新設床版設置時において鉄筋の張り出しや施工誤差を考慮し若干余裕をもって切断予定)とし、さらにセンターホールジャッキを用いて床版を剥離させ素早く撤去していく。次いで床版上面はこれも大林組が有する上フランジ上面研掃機械「フランジブラスター」を用いて素早く研掃する。フランジブラスターは、ケレン作業に要する手間を約半分に短縮できると共に、ケレンくずやブラスト材の飛散を防止できる。「フランジブラスター」は自動でスイングするブラスト噴射装置とケレンくずやブラスト材を自動回収するバキューム装置で構成されている。走行車輪を有しており、桁フランジの上を手押しで走行させることによりケレン作業と清掃を同時に行うことができるものだ。手早く桁上の処理を終えた後に、有機ジンクリッチの塗布、シールスポンジの配置を行い、床版を架設していく。さらにスタッドを溶植したのち、スタッド部と床版パネル同士の間詰め部210mmに、同社の有する圧縮強度180N/mm2、引張強度8.8N/mm2のUHPFRC『スリムクリート』を打設していく予定だ。

 スリムクリートの打設に当たってはワーカビリティを確保するため、練り混ぜプラントから現場に運ぶ際も、ホッパーを内蔵した小型バケットを使用し、直前まで攪拌した状態で打設を行う。

 また、打設時の暑中コン対策として、練り混ぜ専用プラントは遮熱シートカーテンで囲い、温度上昇を防ぐほか、打設後の養生も遮熱シートをかぶせる。

 現場打設は下勾配側から行う。UFCの特性(セルフレベリング性)を考慮すると、上から打ちたいと思う所だが、「スリムクリートはワーカビリティ性、充填性に優れているため、むしろ打設するUFC内部に必要以上に空気を巻き込まないよう、下勾配側から打設することで、良好な品質を確保できると考えている」(大林組)ということだ。また、九州道で施工した宝満川橋の床版取替時と同様、透明型枠を使用することで、打設品質を目視しながら施工する計画としている。

 間詰め部の打設は走行側の床版架設→橋軸直角方向(横目地)の打設→追越側の床版架設→橋軸直角方向の打設→橋軸方向(縦目地)の打設という手順で行う。横締めPC鋼材は一切使わない予定だ。先行打設した横目地と縦目地の打ち継ぎ部が弱点とならないように先行打設した横目地端部が鋸歯形状となるように型枠を設置し打ち継ぎ処理を実施する。

 床版防水は前述のように使用しない。というのも、新しいプレキャストPC床版の上面20mm厚はUFCのレイヤーで予め覆っているものを使うからである。上面に緻密なUFC層の膜を形成することで、空気や水、塩分などの浸透を阻止できると判断した。ただし、床版取替を行わない小高高架橋の鋼桁RC床版部は、脆弱部のはつり、断面修復を行った上で、GⅡ相当の高性能床版防水を施工する予定である。

 舗装は基層にFB13(40mm厚)、表層に高機能舗装Ⅱ型(同)を施工する予定だ。

 床版取替と並行する形で、塗装の塗り替えも行っていく。既設塗膜は鉛を含有していることから、塗膜はく離剤を用いて安全に既設塗膜を除去したうえで1種ケレンを施し、塗替えを行っていく。

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高輝度デリネーターをラバーコーンの上部に設置

床版取替を行う最盛期には70~80人が現場に従事する計画

 安全対策

 安全対策は半断面施工で、車線ごとの幅員を狭めながら上下4車線を供用しているため、非常に注意を要する。車線幅員を狭めている1.5kmの規制区間の速度は50km/hに抑制しているが、現場を取材した感じでは、必ずしも守られているとは言い難い。一番怖いのは、ドライバーの視認性が低減する、夜間に生じる可能性の高い、一般車両の施工区域内への誤進入である。それを防ぐため、先端のみ(衝突時の衝撃を和らげるための)注水式でその中間はロードジッパーで用いているコンクリート製の架設防護柵を配置して作業員の安全を守っている。ウィークポイントとなる車両の出入り口は、ラバーコーン配置のみであるが、高輝度デリネーターをラバーコーンの上部に設置することにより、視線誘導を促して、誤進入を防止している。さらに出入り口端部にはクッションドラムを設置し、矢印板も規制区間内に多数配置し、注意を促すことで、現在までそうした進入事故は起きていない状況である。


規制範囲図

交通運用状況

各種安全対策


 施工体制は現在の床版取替前の準備工段階でも、元請側技術者、下請技能者合わせて昼間50人、夜間20人程度の体制を組み施工を進めている、床版取替を行う最盛期には同70~80人が現場に従事する計画としている。

 同大規模更新工事の基本設計は北武コンサルタント。詳細設計及び施工元請は大林組・竹中土木JV。一次下請は現在、大林道路(舗装・ロードジッパーブロック)、NXエンジニアリング(中央分離帯拡幅工)、第一カッター興業(WJ)、ケミカル工事(断面修復工)、坂上建設(足場施工)、ライズアップ(規制および交通監視工)。

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