NEXCO大規模更新シリーズ⑧ NEXCO東日本・東北道石田川橋下り線の床版取替にHydro-Jet RD工法を採用

NEXCO大規模更新シリーズ⑧ NEXCO東日本・東北道石田川橋下り線の床版取替にHydro-Jet RD工法を採用
2025.12.08

鋼合成鈑桁部の桁と既設床版のずれ止めは馬蹄形ジベル

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大規模更新 NEXCO東日本
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 東日本高速道路東北支社北上管理事務所が所管する東北自動車道の石田川橋下り線において、橋梁リニューアル工事が進められている。同橋は橋長87.274mの鋼単純合成鈑桁橋+非合成鈑桁2連の橋梁で、鋼合成鈑桁部の桁と既設床版のずれ止めは馬蹄形ジベルとなっている。上り線側を上下一車線・下り線側を通行止めにした時、下り線の床版を取り替える交通規制下での工事が8/26~11/14までの約80日間しかないことから、橋面上での施工時間を短縮するためHydro-Jet RD工法を採用し、橋面での施工期間を2週間程度短縮していることが特徴だ。同現場を取材した。(井手迫瑞樹)


石田橋側面図(NEXCO東日本提供、以下注釈なきは同)

石田橋の国道部をまたがっている箇所

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WJを用いて桁下で床版と鋼桁間のコンクリートはつりを行い、橋面上の作業を軽減

塩害による損傷が卓越しているが累積疲労、凍害や凍結融解による損傷も無視できない

上鉄筋の近傍で5.1kg/m3の塩化物イオン量が確認

 同は、1977年11月19日に供用後、48年が経過している。設計示方書は昭和48年道路橋示方書に拠る。下り線は鋼単純合成鈑桁部が38m、鋼2径間連続非合成鈑桁部が46m~49m(斜角のため)となっている。直近の点検結果では、路面にポットホールが生じており、その位置とほぼ沿う形で下面にエフロレッセンスが生じていた。また、伸縮装置の損傷も見られている。上鉄筋の近傍で5.1kg/m3の塩化物イオン量が確認され、鉄筋膨張や断面欠損にまで損傷が進行していた箇所も見られた。ただし、床版コンクリートの圧縮強度は24N/mm2と比較的強度が残存しており、中性化はそれほど進行していなかった。


舗装上のポットホール / 伸縮装置の損傷

床版下面の損傷状況


 既設床版厚は220~240mm、主桁は4主で床版支間は3mとなっている。交通量は上下合わせて2万4千台で大型車混入台数は約8,200台、混入率は34%(いずれも令和6年調査)となっている。

 おしなべて、損傷原因としては凍結防止剤による塩害が卓越しているが、大型車混入率の多さと、供用年数を考慮すると累積疲労損傷も無視できない。さらには冬季の温度は0℃付近から-10℃(最低温度は-15℃に達する)を上下する環境下にあるため、凍害や凍結融解による損傷も無視できない。なお、他の補修としては、桁の塗装を1988年に1回塗替え、国道397号との交差部において、剥落防止工を施している。


足場設置前の塗装状況と剥落防止工

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WJを用いて桁下で床版と鋼桁間のコンクリートはつりを行い、橋面上の作業を軽減

フランジをオーバーハングする形で鋼製補強材を配置

 今回、床版更新を行う下り線は、約1,000m2強を取替え、床版防水工を施工する。プレキャストPC床版パネルのサイズは、橋軸方向が1,730mm前後、橋軸直角方向が10,510mmで、パネル同士をつなぐ継手は従来のループ鉄筋を使用した継手を使用する。パネル総数は42枚(合成鈑桁部間詰めコンクリートの幅は340mm程度)である。桁下との道路交差部においては、床版下面にSAMMシートを設置し、剥落を防止する手法をとりいれている。


石田橋下り線の床版取替パネル配置図



プレキャストPC床版


 さて、桁下空間は国道397号などの道路があるため、空頭制限から下フランジと足場の隙間がほとんどなく桁下には先行足場など一般的な足場は組めないため、下フランジに単管を這わせる形で足場を構築した。そのため桁間は移動できず、全てBA1ないしBA2側からの移動となる。今次工事では塗り替えは無く、その点では足場の構築に問題はなかった。但し、WJにより、床版と桁との接合部のコンクリートをはつり、鋼製治具で仮接合するHydro-Jet RD工法を採用するため、水養生用のシートを重ね貼りして桁下へ水が漏れないようにし、直下に配置されている回収タンクに水が導かれるよう設備したうえで、WJを施工した。


桁内部の状況写真と養生シート重貼り状況写真


 Hydro-Jet RD工法最大の長所は、通行止めを行う前の期間において、桁下で床版と鋼桁間のコンクリートはつりができ、その後の桁上での床版撤去工事を容易に行うことができるということだ。今回は合成桁、とりわけジベルが馬蹄形のため、通常のセンターホールジャッキによる施工では、桁に負担がかかりすぎ、さらに桁間のみ先行して切断撤去し、桁上面のコンクリートを水平ワイヤーソーで切断する手法も可能ではあるが、馬蹄形ジベルの撤去に時間を要することが想定された。

 そのため、規制を伴わず、桁下で接合部コンクリート(上フランジから30mm±5mmを目標とした)の高さ部分をスリット状にWJで斫り、上フランジ直上のコの字状の部分(全高50mm)の6割程度と輪型筋の一番根元部分を露出させる。その後、ジベル側にアルミ製の型枠を配置し、上フランジをオーバーハングする形で鋼製補強材を配置しはつり残しているコンクリート残部と鋼製補強材との間に特殊モルタルを打設、疑似的に一体化した。最大はつり高さを35mmとしたのは、事前解析の結果、今回のケースでは、馬蹄形ジベルが15mm以上、床版コンクリート内に残置していないと合成鈑桁としての機能を喪失(水平せん断耐力不足)してしまうためだ


Hydro-Jet RD工法の施工概要図と施工手順図



アルミ製の型枠配置状況 / 
鋼製補強材の配置状況

モルタルを打設して疑似的に一体化した状況写真

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WJ 片押しで施工するため長尺(約700mm)のノズルを開発して施工

鋼製補強材での供用時には変位計やひずみ計を設置して、リアルタイムで監視

 WJは機械式WJを用いている。本橋は上フランジ幅が350mmあり、手間を考慮して片押しで施工するため長尺(約700mm)のノズルを開発して施工した。狙った箇所を確実にはつれるようにするため、従来以上にキャリブレーションを施し、施工した。1日に複数箇所を同時施工できる2班体制を整えて施工に臨んでいる。


本工事で用いた機械式WJ

はつられた桁と既設床版接合部の馬蹄形ジベル露出部


 WJの施工は、設計時点で施工する場所の組み合わせを考慮し、各箇所を必ずしも完全に終わらせるのではなく、据え付けたWJが1日にはつることができる効率性と、それぞれの班の作業員の動線が相手方の作業エリアと干渉しないように安全性を重視した計画とした。

 同工法で最も注意したのは、供用している橋梁に有意な変位が生じないか? ということである。事前にFEM解析を施すと共に、WJ施工時及び、鋼製補強材での供用時には変位計やひずみ計を設置して、リアルタイムで監視しながら施工及び供用した。

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