建設業界の多様性を歩く② ヤマダインフラテクノス
様々な国の人が働く職場 外国人の良さを日本人にも吸収させたい
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ヤマダインフラテクノス株式会社
工事計画室 室長補佐
技術開発部
仲松 ジャニス氏

工事計画室
グローバルエンジニアリーダー
ブイ ヴァン ルック氏

工事部
ハ チョン ヒィェプ氏

工事部
アフマドザイ ニラマチュラ氏

総務部
国際業務担当
グエン タン ダット氏

専務取締役
山田 翔平氏
今、日本は岐路に立っている。人口減による働き手の不足はいよいよ深まっており、とりわけ社会インフラの担い手は年々、その不足感を増している。ヤマダインフラテクノスは、ベトナムに循環式ブラストの施工を学ぶ学校をつくり、合わせて日本語も教えることで、その担い手確保をシステマチックに行えるよう考慮している。また、日本への留学生なども積極的に採用し、ドメスティックな市場でありながら、社内組織の国際化を進め、強靭な組織づくりを果たそうとしている。今回は、その担い手たちを中心とした座談会を行った。(井手迫瑞樹)
報酬で日本人か外国人かで分けて欲しくない 働きぶりや技術の正当な評価を
ベトナム、ペルー、アフガニスタン 様々な国の人々が働く
アフマドザイ氏 アフガニスタンで高速道路機関のディレクターを務めていた
――生い立ちと日本に来た動機から教えてください
ハ チョン ヒィエプさん(以降、ハ) 私はベトナムのハロンというハノイ近郊の町で生まれました。高校を卒業後、すぐに日本に来て、日本語学校で学びながら日本の大学に入り学びました。その後、ベトナムに戻って働き、日本への技能実習生の送り出し機関で働きながら妻と結婚し、また縁あって、1年前からヤマダインフラテクノスで働いています。妻や子供も日本で暮らしています。

社内で働くハ チョン ヒィエプさん
ブイ ヴァン ルックさん(以降、ブイ) ベトナムの大学(土木工学専攻)を卒業後、将来のため、日本に行くのが良いのではないか? と勧められて友達に紹介されて日本に来ました。ベトナムの大学ですか? 中部のネアンという町にあるビン・ユニバーシティーで学びました。工学系で、橋や道路の設計について学びました。ベトナムの橋梁設計基準ですか? 今はAASHTOが多いですね。橋の種類としてはPCがほとんどです。日本で同郷の女性と結婚し、今では子供も生まれています。ヤマダインフラテクノスに入社してからは既に6年半が経ちました。
仲松ジャニスさん(以降、仲松) 私は少しみんなと違っていて、両親がペルーからの出稼ぎ労働者でした。そもそも父方の祖父が日本の沖縄からペルーへ移民した人であり、私はペルー人と日本人両方の血を引いています。さらに私自身はずっと日本で生まれ育っています。ただ、やはり容姿から外国人ということは強く意識されます。
私は愛知工業大学の土木工学科で鈴木森晶教授のもと、鋼橋を中心とした構造工学を学びました。その後、1年ほどPC橋梁メーカーに勤務し、その次に現在のヤマダインフラテクノスに入社しました。現在で10年目になります。
PCから鋼構造に移った理由ですか? やっぱり鋼橋がやりたかった、ということですね。ファブや設計会社に行く選択肢もあったのですが、ちょっと変わったことをやりたい、という思いもありました。ヤマダインフラテクノスはその時、塗装会社から総合的な補修補強会社への脱皮を目指しており、それにチャレンジしたいという思いから入社しました。以降は、首都高速道路とのブラスト施工の共同研究などに従事し、騒音対策や飛散養生、火災事故や健康被害を生じさせないブラスト施工の確立に取り組んでいます。
アフマドザイ ニアマチュラさん(以降、アフマド) 私は、アフガニスタン国籍のパシュトゥン人です。アフガニスタン国籍ではありますが生まれたのはイスラマバード近郊のマンセラであり、パキスタンで生まれ育ちました。その後、故国であるアフガニスタンのナンガラハール大学(Nangarhar_University、ジャララバード市にあるアフガニスタン第二の大学)で土木工学を学び、同国で橋梁設計などエンジニアとして従事していました。さらにはJICAなどにも誘われて仕事をしており、最後には高速道路機関のディレクターとして約450人の職員を統括する責任者でした。その後、状況が厳しくなり、JICAの知り合いに日本に来るように勧められ、その後は名古屋大学の判治先生、岐阜大学の木下先生のもとで博士課程まで学び、3カ月前にヤマダインフラテクノスに入社しました。
グエン ダット タンさん(以降、グエン) 私はベトナム中部のハティン出身です。ベトナムの専門学校でベトナムと日本を結ぶためのビジネスを勉強しました。日本に来てからは4年経ちます。その前も私自身が技能実習生の管理団体で仕事をしていたことから、ヤマダインフラテクノスさんとは、縁があり、入社させていただきました。現在は総務部所属として、日本に来ている外国人技能者の管理責任者として働いています。
――仲松さんはそうだと思いますが、他の皆さんも家族は日本に連れてきているのですか
全員 妻と子供は皆、日本に住んでいます。
ベトナムに日本語と循環式ブラスト工法を施工するための技術を教える学校をつくる
即戦力として働いていただく外国人技能者を育てる
――さて、これは山田翔平専務にお聞きしますが、ヤマダインフラテクノスの外国人技能者育成への取組みと、技能者の今後の受け入れ姿勢についてどのように考えていますか
山田翔平専務(以下、山田) 弊社はベトナムの技術者、技能者とタッグを組みたいと考えています。そのため、単に労働者を日本に連れてくるのではなく、ベトナムに日本語と当社の有する循環式ブラスト工法を施工するための技術を教える学校をつくりました。年間56人が学ぶことができる学校で、既に2年、112人+、3年目の数十人が卒業し、日本でブラスト施工などに従事しています。当社ではその内30人弱を雇用し、後の80人強は、日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会の会員各社が雇用しています。
円安の進行などに伴い、ベトナム人の労働者が日本に来なくなっている傾向があり、巷ではインドネシアだ! ミャンマーだ! と言ったように状況が悪くなれば安易に対象を変えていく傾向にありますが、そんなことでは信頼関係は築けません。
円が相対的に弱くなっている状況はもちろん直視する必要があります。しかし、我々は単純労働者を求めているのではありません。さらに、日本に来てからOJTを施し、育てるのではありません。来日前にベトナムで技能と知識を学んでいただき、来日後に即戦力として働いていただける「仲間」を育てているのです。
現場は工期、コストがあります。ブラスト施工のために来日した技能者に対して、OJTを現場で行う余裕はありません。すると教育を満足に受けていない労働者は雑務を任すほかなくなり、安い給料しか得られなくなります。現状では円安とのダブルパンチです。しかし、弊社ではベトナムに造った学校で語学と、技能・知識を前もって習得することで、即戦力として活躍していただくことができ、高い給料を取得することができます。さらに技能が伸び、語学も上達すればさらに高い給料を望めますし、当社としても、もっと大きい受注を見込めるようになります。単に経済だけでなく、そのほかの取組みも含めたロイヤリティを得ていくことこそが、この担い手不足を解消し、長く技能者と当社を繋いでいく方策であると強く感じています。
日本語は難しい......何度も質問
報酬で日本人か外国人かで分けて欲しくない 働きぶりや技術の正当な評価を
――外国人技能者にとってヤマダインフラテクノスでの働き方や報酬額は満足しているか
ハ 良い環境です。日本人と共に働くとき、ネックになるのはやはり日本語の難しさです。わからない時は繰り返して聞くことになりますが、会社では、そうした時も日本人の同僚が嫌な顔をせず、答えてくれます。これはとても心理的に助かっています。報酬は……まだ勤務してから1年弱なので、何か言える資格はありません。
ブイ 日本に来て6年経ちますが、会社での働き方には満足しています。私は足場図面を書くCADオペレーターを主な業務としていますが、ハさんと同様、何度も聞くことがあります。それでも会社の先輩は根気強く答えてくれます。ただ、それに甘えることなく、日本語を勉強していきたいです。報酬については、不満はありません。
ブイ ヴァン ルックさんは足場図面を書くCADオペレーターを主な業務としている
仲松 会社では働きやすいのですが、どの会社に行っても「外国人」として接されるのはしようがありません。だからこの会社に入ってから、私は外国人としての強みを生かし業務にあたることに決めました。そうすると働きやすく、逆に自信を得ることができました。
外国から来た後輩への助言ですか? みんな自分の母国でやってきたことはすごいと思います。言葉の壁があり、本領を発揮することは容易いことではないと思いますが、かならずブレイクスルーできる時期は来ます。焦ることなく頑張って下さい。
報酬面では、もう少し努力している人を細やかに観察して、評価して上げてもらっても良いのかな、と思います。私は「外国人」の「先輩格」なので、言うことは言いますよ(笑)。
アフマド 私はまだ入って3カ月なので。ただ、自分は故国では多数の人間を管理していたディレクターでもあったので、技術力も含めてそうした能力を生かしていきたいですね。日本語も覚えていきたいです。
グエン 仲松さんと同意見です。仕事ができる人間を評価して欲しいですね。仕事ができるできないという内容に、本来国籍は関係ないはずです。外国人だからこんな額でいいのではないか? としている会社もあるようですが、それは良くないと強く感じています。円が安くなっても頑張っている人はいます。残っている人は、自分の技術が正当に評価され、報われていると感じている人です。そうした評価こそが定着につながるのではないか? と思います。当社ではそれがなされていると思います。

グエン タン ダットさんは外国人技能者の管理責任者として働いている


